死んで欲しい。10 停止

15歳離れた妻とは、再婚だった。
もちろん僕が惚れたわけで、愛していたしその証の子供も授かった。
いつからだろう、歳の離れたバツイチの僕と一緒になってくれて申し訳ないと、何もかも遠慮していたのかもしれない。

 子供が生まれたからは夫婦の営みもめっきりなくなり、一年に数回、ほぼ愛情表現の営みではなく、性処理に近いSEXだった。
家族とはこういうものなんだろう。
夫婦も男女の愛から家族愛に変わり、僕の性欲は自己処理のみ、このまま気力も機能の低下していく、それを老いなんだと受け止めていた。

 再婚してから僕は転職を数回繰り返した、ただの転職ではなく、確実にスケールの大きくなる転職で、自身の人生としては大きなチャレンジであり、覚悟が必要だった。
安定を望む妻はもちろん大反対、そのことでも口論は絶えず、いつしか相談もせず、事後報告でついてこれないならいい。そんな関係性になっていた。
 
 それが原因だったかはわからないが、妻も僕への興味は薄らいでいて、いつしか話せば口論になるため、あまり本心を語らず、家族をそつなくやっていた。仕事以外で自分自身の欲を出すことはもう終わったんだと、自分を無くすことが家族に生きるということだと思っていたんだ。

 新事業ではやることも多く、プレッシャーも大きく、心身ともに弱る時期でもあったが、誰に頼れるものでもなく一人戦っていた。
そんな時に出会った君。君と仕事上の付き合いだった時から、君と話すとなぜかやる気に満ち溢れ、仕事の山も一人で乗り越えられたんだ。
今思えば、ただの好きな子にいい顔したい、褒められたい、子供のような欲で頑張れたのかもしれない。
 それから君とカラダを重ねるたびに、自分の中に生まれてくるパワーと自信は紛れもなく目に見えない「力」だった。

 仕事場で徹夜なんてことはザラだった。特に妻に問い詰められることもなく、家庭での僕のイメージはいわゆる仕事人間だったんだ。

 実際、仕事人間は本当だったけれど、君に出会ってからは正直、家庭への気持ちや時間は徐々に疎かになっていった。でも妻は興味がない、そう思って特にバレない対策のようなことはしていなかったのだ。
いわゆる、たかを括っていたんだ。

いつものように残業をしながら、君とONLINEで繋げて仕事をしていた。

 突然妻が残業中の僕のところにやってきた。
 「気づいていないとでも思ってるの?」

君とのONLINEを慌てて切った。
突然一方的に切った後の君の心境を想像すると居た堪れなかった。
申し訳ない。
苦しかったが、夜明けまで君に連絡することはできなかった。

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