死んで欲しい。11 君

「ゼンブバレタゴメン」

スマホの振動でいつの間にか寝てしまっていた私は
握りしめたままの携帯の画面をみた。
今まで二人の間で使ったことのない、ダイレクトメッセージからだった。

私の体は心臓だけが残ってるのではないかと思うほど
心臓の音だけが鳴り響き、生唾を飲み込んだ。

半角カタカナの一言。
それだけのメッセージでその後いつ来るかわからないメッセージ、連絡を
私はただ待つしかなかった。

昨夜、いつものようにオンラインで楽しく会話していた時、彼が急にやばいっといって、すごい雑音と画面が遮断され異常事態なことはすぐにわかった。

間違いだったと、笑って連絡が来ることを少しだけ期待しながら
私はいつの間にか寝てしまっていた。

 彼との出会いは、あるプロジェクトで紹介され出会った。
最初からとても話しやすく、また言葉足らずな私の意見をまとめてくれて
語彙力の高さに知的さを感じ、好印象だった。
 本当に好印象で、この先彼と私の中で何か起きるなんて少しも思わなかった。とっても親身になって私の意見に耳を傾けてくれ、彼が直接関わることのない案件にも、アドバイスをくれ私はいつしか信頼のおける人、という関係性で仕事上のお付き合いをしていた。

 イチ質問すると10返ってくるような社会事情、世界事情、雑学と話題豊富な彼との会話はいつも時間が足りずに本題までなかなか辿りつかないい。
プライベートな話題の時は、元彼との復縁を望む私に、頑張れとか男心を教えてもらったりと女子トークができる、男の人として完全に心許していました。
なぜなら彼には家庭があり、私のNG事案、不倫、妻子持ちだったので最初から大きなラインが私の中にはあったのだ。

 私たちは世界的パンデミックに襲われ、画面越しでの彼との打ち合わせやお話し、メッセージのやり取りがほとんどだった。そして最初に会って2年が過ぎたある日ようやく対面することになったのだ。

 別件で久しぶりに上京した私は、合間の一日を彼とランチの約束した。
老舗でのお昼御膳を堪能させていただき、いつものように雑談から真面目な話を食事とお話、どちらも器用に満喫してした。その後はなんの迷いもなく、食後のコーヒーを見晴らしのいいラウンジへ行った。

 元彼の復縁の進捗状況の話になった時、全く相手にされなかった私はそのまま報告しながら、自虐ギャグ的なノリで、
「もうモテ期を使い果たした、女としておわってたかもしれない」なんて
笑いなが言った。
「そんなことないよー」と返してくれると思っていたら、彼は、
怒った口調で「そんなことない、許されるなら抱きたい」と言ったのだ。

予想外の返答と、ストレートすぎるセリフに一瞬戸惑ったけど
すぐに 冗談でもうれしいです。と切り返した。
「冗談じゃないよ。」
初めてみた彼の真剣な感じとちょっと低くなった声に、戸惑いを隠せなくなった。
「本気だよ」と言いながら部屋の予約サイトを開いていた。

 私もいい大人、ディナーからのラウンジで飲んでます。だったらこの流れも分からなくないし、ラウンジに行った時点でお互いYESなんだろうと想定内の大人の事情であろう。

 しかしあの日はお昼だし、コーヒーだし、急すぎるし、直球すぎるし、想定外すぎてただただ、彼の横で彼の入力している画面を一緒にみていた。

 スマホの予約に手こずっていた彼が一瞬可愛く思えてしまった。
その瞬間 「嫌ならもちろんしない」
と言われ、「嫌では・・・ない・・」と答えた私。
最初の・・・で彼は確定ボタン押していた。
そして、彼は残りのコーヒーを一気に飲み干した。
私もあわてて残りの冷めたコーヒーを飲み干した。







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