新たな船出!個性派集団クロアチア代表


#サッカーの忘れられないシーン

1996年欧州選手権。イングランドで行われたこの大会は優勝国が強豪のドイツ代表。決勝はネドヴェドを擁する「ダークホース」チェコ代表と白熱した試合が繰り広げられ、ビアホフのゴールデンゴールでドイツが優勝を決めた大会。ドイツ代表を好む私にとってこの上ない大会でした。

優勝したドイツ代表とともに強く印象に残ったのがクロアチア代表。クロアチア代表はユーゴスラビア紛争後、初の国際大会であり数多くのタレントを抱えるチームで大会前から注目を浴びる存在ではありました。FWにはW杯で日本代表からゴールを奪ったシュケル、セリエAで確かな実績を持つボクシッチ、同じくセリエAで屈指のゲームメーカーのボバン、他にプロシネツキ、アサノビッチ、ヤルニなど優勝も夢ではないメンバー構成でした。

ただ、予選には1992年前回大会の優勝国「ダニッシュダイナマイト」ことデンマーク代表と同組にあり、ラウドルップ兄弟やプレミアリーグNo.1キーパーのシュマイケルを擁する同チーム、またセリエAのファンタジスタ、ルイコスタの強豪ポルトガルとも同組でクロアチア代表にとっては決して楽観視できない状況でした。

クロアチア代表にとっての予選初戦はトルコ代表戦。絶対的なエースのFWハカン・シュキュルを擁する個人技レベルの高い対戦相手ではあるものの、ウラオビッチのゴールでスコア1-0で勝利。幸先の良いスタートを切りました。予選グループはポルトガル代表とデンマーク代表が引き分けで勝ち点1を分け合い、かつポルトガル代表はその後のトルコ代表戦に勝利し、一歩リードした状況で負けられないデンマーク代表戦を迎えます。

ポルトガル代表はルイコスタ、フィーゴ、パウロソーザとポルトガルリーグ屈指のストライカーのドミンゲスによる強力な攻撃力を持ったチームであり、そのチームを最小失点で抑えたデンマーク代表は同じ攻撃力が特徴のクロアチア代表に対しても接戦になる予想でした。

クロアチア代表はタレント力がある中盤のゲームメイク、前線での個人技でデンマークゴールを脅かすも前半はスコアレスドロー。後半に入り、PKを得て、先制点を獲得。その後はカウンター攻撃に戦術を切り替え、ボバンが追加点を奪う。さらにゲーム終了直前にシュケルの芸術的なループシュートによるゴール!名手シュマイケルをあざ笑うかのようなスーパーゴールでクロアチア代表は3-0のスコアで前回王者を撃破しました。

クロアチア代表は予選2位通過でトーナメント1回戦でドイツ代表と激突し、1-2のスコアで敗れました。ただ大会中で完成度の高かった優勝国ドイツ代表を最も苦しめたのはクロアチア代表に間違いありません。

独立後に迎えた初の国際大会でのベスト8は、その後現在に至る活躍を暗示するものであり、多彩なタレントを輩出し続けるクロアチア代表のナショナリズムを強く感じた私の忘れられないサッカーの記憶です。


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