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展覧会が始まる|吉岡雅哉個展

吉岡雅哉の展覧会「来し方行く末 SEASON 1 | 2023 AUTUMN」が、11月10日から始まりました。最新作を中心に'10年以降の作品を加えた約30点の構成で、吉岡の描く予測不能な世界を物語的にお届けする、シリーズ個展 第1弾です。

初日はあいにくの雨でしたが、オープンの時間からご来場いただいたり、お仕事帰りにお越しいただいたりして、ありがたかったです。
画集も早速お買い求めいただきました。いずれ作品を買えるように仕事を頑張ると言ってもらえたのが嬉しかったです。

画集は作家署名入り
「思春期」の闘争
「思春期」3部作

思春期と印象派は、なんとも良く合います。
様式的な見やすさと意外性のあるモチーフの組み合わせは、吉岡作品の真骨頂。絵の様式にオリジナリティはないかもしれない、でもだからこそ、見る方もすっと入っていけるのだろうと思います。

展示空間正面の壁には、複数のシリーズ作品が混在して並んでいます。
「庭いじり」と「お月見」の連続は、昼と夜の場面が繰り返され、そこに描かれている行為の果てしなさを増幅しています。「西海岸」は色彩の豊かさとシリーズ別に見える作風の幅を拡げています。

「お月見」
「庭いじり」
「西海岸」

初日からの数日で、海外で評価されて欲しいという声を複数頂いたことが印象に残っています。国内シーンにおける位置を確立するための活動があるとすると、その積み上げよりは、既存のシーンから外れた道を行く方向が我々の進む道ではないかと、作家と話をしていたことと重なりました。その道筋は、異なるメディアで展開すること(画集制作はその一貫)ではないだろうかと思っていたのだけど、そうか、異なる文化圏へ進出していくことも、既存のシーンから外れた道を行くことになるのかもしれないと。そんな気付きがありました。
「1→10ではなくて、1→0」「我々は、大工と😎(タモリ)である」が作家との合言葉になりました。(😎ってなんだー😎)

まずは展示をぐるっと流し見していたら、終着点に男の子の衝撃的なシーンを発見し、「え、もしかして他の作品にも何か描かれてる?」となってもう一度、今度は細部に目を凝らしながら作品を見てくれた方がいました。
幼少期の象徴的な体験がイメージ化したようなこちらの作品。過去に遡ってから、現在の方向へと再び戻りながら見ていくという、どこか映像的な流れは、個展タイトルを「来し方行く末」としたことに重なるように思いました。

いつも展示のことを気にかけてくださるお客さんが、吉岡の「お月見」作品に合う曲をセレクトしてくださり、会場で聴いてみました。

「お月見」

その中の一つは、アルバート・アイラーの"Summertime"。

アイラ―のサックスがなんともはまっていて、思わずニヤッとしてしまいました。
絵と音楽を重ねて鑑賞しているからか、サックスの官能性がより際立って聞こえました。緩急のあるアヴァンギャルドなソロに対して、なるほどこれはつまり、その最中の時間と音なのか、とさえ思いました。

吉岡は、自身の絵ではまず舞台を描き、その後で人を配置すると話していました。
こうして作品と音楽を共に体験すると、アーティストやミュージシャンがステージ上でどんなパフォーマンスを見せてくれるのかと、ワクワクしている自分がいることに気付きます。そう思わせてくれることが、自分の好きな音楽やアートに共通する感覚なんだなということを改めて自覚しました。

画集を購入してくださった方が、大衆酒場でビールを片手に画集を開いている様子をSNSに投稿してくださり、最高だなあと思いました🍺
画集には、作品のイメージと合わせるようにして吉岡の文章を掲載しています。描き終わった後での本人の考察だったり、日々のなかでのふとしたこと、記憶についてだったり、味わい深い文章が続きます。ときどき繰り返されるフレーズもあって、まるでブルースの歌詞のような悲哀を感じたりします。
文章は決して個々の作品の説明として書かれたわけではないので、画集制作の際は画像と文章の距離感、頁を開くと目線が先にイメージへ向くようなレイアウトを意識しました。

3日目最後にいらっしゃったお二人は、1階のカフェ目的で来られた方のようだったので、私はちょっとドキドキしましたが、お二人で楽しそうに作品について語り合いながら、帰り際に画集を買ってくださいました。
少しお話ししたところ、男性の方のお仕事は大工とのことで驚きました。吉岡も代々続く大工の親方なのです。

そうして終了した初日からの三日間でした。
そんな頃に、向かいのYUKUIDO工房から吉野寿さんのライブが微かに聞こえ、ギャラリーで一人沁みながら、今日のうちにと書いた次第です。


展覧会は19日まで開催しています。ぜひお気軽にお立ち寄りください。

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