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藤井二冠はソフト指し?

ここ一年くらいの藤井二冠の強さがとんでもないことになっているみたいですが、前年までありえないと言われていた1局中のソフトとの次善手までを含めた一致率が100%近い対局が先日叡王戦段位別予選藤井ー広瀬戦で現れました.いったい藤井二冠はどこまで行ってしまうのか、楽しみでしょうがないです.

今回は、現在活躍中の藤井二冠と、かつて三浦九段の一件や将棋倶楽部24、将棋ウォーズなどで問題となった「ソフト指し」についてかねてから疑問だったことについて少し私の考えをまとめておこうかと思います.

目次

1.ソフト指しとは
2.ソフト指しをめぐる事件
3.ソフト指しと将棋指しの進歩
4.藤井二冠の対局が示したソフト指し規制の矛盾
5.ソフト指しの規制には新しい基準が必要?
6.ソフト指しされた際の受け止め方
7.最後に

1.ソフト指しとは

ソフト指しとは、将棋ソフトを利用(悪用?)して、「将棋ソフトが示した人間より強い手」を指すことです.

10年くらい前にはすでにアマチュアレベルを超えてしまっていた将棋ソフトを用いるとアマチュア同士の対局ではこのソフト指しが脅威となってしまいます.将棋倶楽部24、将棋ウォーズなどのインターネット将棋サービスでも、これらは利用者の利益に反するものとして規制対象となっています.利用者の多くは似通った実力をもつ人間同士の対局を望んでいるので、実力のバランスを崩壊させる将棋ソフトは確かに利用者の利益を損なうのでしょう.

2.ソフト指しをめぐる事件

インターネット将棋サービスは勝敗自体にはお金が関わらないため大きな問題となりませんが、対局ごとに賞金が発生するプロ棋戦でもソフト指し疑惑が起こってしまいます.

疑惑をかけられた棋士は将棋ソフトの実力がプロ並みになる前からトップクラスで活躍されていた棋士なので、なぜ持ち上がったのか私にはわかりませんでしたが、ともかく、プロ棋戦に参加するプロ同士の対局でソフト指し疑惑が発生したのです.疑惑をかけられた当人、三浦九段の名誉のために強調しておくと、この疑惑は後に否定されています.

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毎日新聞社記事より
https://mainichi.jp/articles/20161228/k00/00m/040/080000c

ここで私が感じた疑問は2つでした.

1つ目が物的証拠があるならともかく、指し手の良し悪しのみで疑惑がかかりそれが主張として成立してしまっているのはなぜ?という疑問で

2つ目は将棋の普及と最善の一手を目指すプロ棋士が最善に近い手を指し続けることが問題となっているのはなぜだ?という疑問でした.

どちらも大きな問題だと思いますが、特に、後者は、プロ棋士の存在自体を揺るがす大問題だと感じました.

3.ソフト指しと将棋指しの進歩

将棋を指す人たちのことを将棋指しといいます.将棋指しはなんだかんだ言って将棋で勝つことが好きなので、精進し成長を目指します.

プロ棋士のほとんどがソフトを使って研究をしていることやドワンゴ社が開催した将棋電王戦で現役将棋名人と将棋ソフトの対局結果が示すように、現在、プロを含めた人間の将棋指し全員より将棋ソフトは優れた能力を示すことに異議を唱える人はいないかと思います.

現代将棋という言葉があるように、現代の将棋は旧来より洗練されているという考え方も一般的であると思います.過去の棋士が優れているかどうかは別の議論として、将棋の戦法や中終盤で現れる技の多くは、過去を学ぶことができる我々にとって時間が経過するほど成長することは疑いなく、また、老いを考慮しなければ、一人の将棋指しが時間を重ねるごとに技術的に成熟していくことに疑いの余地はないかと思います.

4.藤井二冠の対局が示したソフト指し規制の矛盾

藤井二冠ならあるいは…と思わせるほど、今の彼は充実していると思います.そして、先日の叡王戦段位別予選藤井ー広瀬戦で、将棋ソフトの示す最善手と次善手(2番目に良いとされる手)をほぼ100%の一致率で指し続けましたが、彼にソフト指しの疑いがかかることは今のところありません.一応比較しておくと、2章で取り上げたソフト指し疑惑での当時の将棋ソフトとの一致率は80~90%程度であったかと思います.

私は大きな矛盾を感じます.

三浦九段と藤井二冠との待遇の違いに?違います.

私は将棋ソフトとの一致率そのものがソフト指し疑惑の物差しとなっていることに大きな矛盾を感じています

仮に、今回の対局が、将棋倶楽部24や将棋ウォーズで実施されたとすると、藤井二冠が使用していたアカウントは、ソフト指し規制の対象となり、アカウント追放を受けるでしょう.これは、我々将棋指しが目指す成長にマッチした規制なのでしょうか.

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藤井二冠の成長は留まることを知らない(日本将棋連盟より)
https://www.shogi.or.jp/news/2020/08/post_1941.html

5.ソフト指しの規制には新しい基準が必要?

かつて将棋指しが大山全集や羽生全局集で勉強したように、次の世代は藤井二冠の将棋を勉強するでしょう.さらにソフトを活用した勉強法もさらに確立されていくでしょう.その中で、今の規制は本当にその役割を果たせるのでしょうか.

仮に、実力で挑んでいる1人の将棋指しが、ソフト指し規制によりアカウント追放されたら、どう感じるでしょうか.

私は、ソフトと一致率の高さを基準とした規制は問題があると感じます.

ソフト指しの問題とするところの本質は、似通った実力のプレーヤー同士が鎬を削りあうバランスをソフト利用により崩壊させることだと考えています.ソフトと一致率の高い手を指すことそのものではありません.

今後のソフト活用の発展に合わせて、規制方法には新しい基準が必要だと思います.

6.ソフト指しをされた際の受け止め方

最後に余談ですが、ソフト指しをされた際の受け止め方は様々あると思いますが、尊敬を込めて、一つの受け止め方をご紹介したいです.

Youtubeで活躍されるアユム氏(https://www.youtube.com/channel/UC8Wi0RcjvIy5z7V4Eypmzww)です.

かなり古い動画だったので発見できなかったですが、アユム氏が過去に動画で話していたソフト指しをされた際の受け止め方が素晴らしいと思ったので、ここで共有したいと思います.

ソフト指しされても構わない.むしろ強い相手と戦えるのが嬉しい.

この内容を話している動画を探していたら過去にアユム氏がソフト指し疑惑をされていたことを知りました.私がこの件について思うことは2つです.

1.指し手の考え方を共有しながらプレーしており相応の実力があるため、仮に疑いがかかっていたのだとしても、それは、本記事の主題通りだと考えること

2.仮にソフト指しであったとしても、アユム氏が動画で共有する局面ごとの考え方が参考になる事実は変わらないので私は今後も動画を視聴すること

です.

7.最後に

いかがでしたでしょうか.今回は、普段話さないですが、将棋についての私なりの考えを述べてみました.藤井二冠の成長速度の速さと天井が見えない成長度にはいつも驚嘆しています.まあ、どれくらいすごいかがわかるほどの実力はないのですが、本当に素晴らしいことだと思います.

普段は、思ったことを書き留めるメモのような形で投稿をしているので、もしご興味あれば、他記事もご覧いただき、コメントをいただけると嬉しいです.


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