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海を渡ってくる手すり 〜建材からみる経済の移り変わり



円安傾向が止まらない今日この頃でありますが、アベノミクスで先に食べちゃった分のツケが回ってきたってことなんでしょうね。黒い方の総裁さんが異次元って言ってたのは伊達じゃなかった。一体何次元まであるんでしょうか、怖くもあります。一時期話題になった超ひも理論は11次元でしたっけ。

そして、これまでもコロナ禍やらウッドショックやらで、ポンポンと材料が値上がりしたここ数年だったのですが、このレートで固まってきたところを見ると、また材料の値上げラッシュが来年あたりに来そうな雲行きであります。

というのも、手すりを始めとする建材って、今はほぼ海外工場製なんですよ。最終工程が国内であっても原材料はほぼ輸入。なので今後も為替の影響をがっつり受ける、はず。


うちは、室内の手すりの材料はTOTOさんのを使うことが多いのですが、この原材料はホワイトアッシュという木の集成材、でした。野球のバットや、エレキギターのソリッドボディに使う材料です。
でも、いつか見返すこともあろうと取っておいた2005年からの手すりカタログコレクションを紐解くと、2015年版と2019年版の間のどこかから、材種が書かれなくなっていたので(天然木としか書いてない)、現在の材種は正確には不明であります。同じタモ系の、違う種になったのかな。でも切断している時の感触は変わらないので、強度的には大丈夫かと。


こちら、どこの国から来たか、ラベルに書いてあります。こんな感じで。

現行品はインドネシア製


でも、これまでを振り返ると、2000年代からしばらく、中国製だった時代が長かったのです。それから、いわゆるチャイナショックと言われる混乱で、安定供給が難しくなった時期がありました。調べると、上海株式市場が暴落したりしたのが2015年だったようですが、うちの動いていなかった在庫を漁ってみたら、唯一ありました中国製。

このころ供給が不安定になった記憶が

2017年初頭までは中国製だったんですね。
そのあとが台湾→ベトナム、だったかな?逆だったかも知れない。


このころは台湾製


台湾製だった時期は2年くらいだったように記憶しております。その後、ベトナム製だったときは塗装の質、というか木目の出方が派手になり、使いにくいなあと思っていたのですが(材料の切り替えも考えた)、同じようなクレームが出たのか結構すぐに生産が切り替わり、2021年頃からのインドネシア産は、以前とほぼ同じ色合いに戻って品質もどうやら安定しております。

あらためて生産国の推移をみると、中国での生産から切り替わったタイミングで、材種も替えたのかも知れないですね。


そして、気になるお値段も見てみましょう。カタログを見比べると、税抜希望小売価格の推移は、フラット手すり棒、2mでこんなでした。手元にあるカタログが飛び飛びなので、大雑把な年代分けですが。


     年代       単価          生産国
-------------------------------------------
               ~2005.9  4,500円  中国?
2008.4 ~2015.2  4,700円  中国 
2019.8 ~2022.2  5,000円  台湾
              ーベトナム
              ーインドネシア
2023.6 ~              5,400円    インドネシア

意外に値上がっていないのです


なんと、約20年で20%の値上げで済んでいました。3,4年ほど前にコロナ禍の影響により、需給が逼迫しウッドショックと言われるくらい、木材はどかんと値上がっていたのに意外です。だって、合板なんてそれ以前の2倍の値段なんですよ、今では。


メーカーさんは、品質をキープしながらも、価格競争に負けないように生産拠点を移動し、そのための材料も適宜選びながら必要に応じて変更し、国際経済の荒波をこうやって掻い潜ってきているのであるな、ということが伺い知れる調査結果となりました。本当に頭が下がります。

主に室内の、水濡れしないところで皆様を支えている木の手すり。小奴らもそんな旅をしてきたことに思いを馳せていただけると、手すり材も喜ぶのではないでしょうか。休日運行の小ネタ豆知識でした。

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