合わせ技一本!で上まで届ける ~階段昇降機と段差解消機のコラボ芸
二階での暮らしに慣れている方でも、いつかは脚での階段の昇降が難しくなるときがくる。赤子が成長して歩けるようになるのと、ある意味同じことである。逆回転なだけで。
そこで、1階にベッドを移しましょう、とご提案をするのが、よくある利用者さんへのアプローチである。
でも、こちらの利用者さん、90歳近くになるまで現役で仕事をされていた方でもあり、意志が強い。強すぎるくらいである。なので、近くにトイレが併設されていて便利な、2階寝室での暮らしは絶対に放棄しない方向で、話を進めたいということになった。
そもそも、歩かなければ登れるのだ。ならば文明の利器に頼ろうではないか。ありがたいことに、経済的な余裕もあるそうだし、では自費で階段昇降機をつけましょう、という話になったのだが、ことは簡単ではなかった。
間取りが曲者すぎたのである。
いわゆる鉄砲階段、下段だけ曲がるタイプだから対応できるな、
と思っていたら・・・
階段昇降機には、当たり前だがレールが必要になる。曲がりに対応できるタイプのレールは、どうしても高さと幅が出てしまうので、このケースで右のダイニング側に下ろそうとすると、レールも左側から右方面に曲がって降りていくことになるため、正面の扉は通行不能になる。
その先の部屋の、別の部分に開口部を作り直すことも考えたが、2階を増築したお神楽と呼ばれるえてして不安定な造りのため、たぶん筋交いに当たる。となると構造的におすすめできない。
さてどうしよう。関係者が頭を抱えながらもいろいろ考えた。そして。
あ、完全に下まで降りなければ良いのだ。ということに気づいたのである。
準備工事をこのようにやってみた。これなら設置するのは直線型の階段昇降機でいい。それなら曲がりタイプの半額くらいで済むのでお財布にも優しい。最後の一段は現地にあった、昇降運動用の踏み台を借りてきた。
そして、昇降機の下端部が新しい踊り場部分に着陸し、そこから下の二段は自力もしくは介助移動、という目論見であったが。
階段昇降機の工事も終わり、案の定、この二段は介助でもきつい、移動できないという話になるのであった。まあそうよね。
だ、大丈夫。まだ慌てる時間じゃない。
そこまでの体力がなくなった場合の、二の矢も継いでおいたのだ。
介助者の安定した立ち位置がないなど、問題が多いことは承知。でも、この段差解消機(リフト)を使えば、利用者さんはいちども自力で段差を移動せずに、踊り場で車いすから階段昇降機に乗り移り、二階の寝室に移動ができる。
ちなみにこれ、介護保険の福祉用具貸与で入れられます。月々、負担割合分だけお支払いですね。1割負担なら1000円前後かと。
ちなみに普段は下げたリフトの天板がこの高さにあるので、訪問看護師さんなどの介助者やご家族はこのリフトに乗って、ちょっときつい一段をよっこらしょ、と登り降りする想定である。なので以前つけたオフセットの縦手すりは残しておいた。
なおこのリフト、リーチ【㈱モルテン】という機種なのだが、これの素晴らしい点は電動だけでなく、足踏み式が存在するところなのだ。
使いやすいところに移動できるポンプ部分、上の画像の左側にちらっと見えてますね。そして電源工事も不要だし、何より電動式よりも、月々のご負担もお安く済みますのよ奥様。
なお、この工事が終わってからおおよそ7年、ご利用者さんは慣れた上の階で過ごせたと最近伺いました。
パーフェクトとは程遠い提案ではあるのだけど、みんなで知恵を絞るとなんとかなる落とし所が見えてきたりします。利用者さんが頑固だ!と腹を立てる前に、やわらか頭で考える大切さを学んだ現場でありました。
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