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誰にも言えない秘密

他の人のことは分からないけれど、人は「墓場まで持っていくと決めている秘密」をどの程度抱えているものなんだろう。

私も、誰にも言えない秘密を多少は持っている。いや、普通の人よりもむしろ多いかもしれない。
例えば引きこもっていた事実は、両親も知らない。その当時、両親からは3カ月から半年に1回程度電話がかかってきていたけれど、その時だけ元気にやっている風を装って、電話を切った後布団に戻ったりしていた。

誰かに対する憎しみとか、大きな喪失とか、犯してしまった過ちとか、言えないことは誰だってあると思う。ない人もいるかもしれない。一部の人にはきっとある、と思う。

そういう秘密を、いつか話せる時が来たら。秘密を抱えた人は、いつかどこかのその場面を、空想したことがあるんじゃないだろうか。
恋人は怒り狂い、親は泣き叫び、友人たちは同情の眼差しを向け、さも理解者であるかのように空虚な慰めを投げかける。
あまり良い空想にはならない。そういうものだと思う。

そうやって誰にも言えない秘密を抱えて生きるのは、きっととてもつらいことだ。
かと言って吐き出してしまえばいいなんて安易な提案はできない。秘密を抱えることは苦しいことだけれど、それを吐き出すことはもっと勇気と決意が必要で、それが報われるとは限らないことを、私たちは知っているから。

でも、一部の人はそういう苦しみやつらさを抱えながら生きているんだということを理解し合うことならできる。

「分かるよ」

伝えられるメッセージがあるとすれば、きっとそれだけだ。

話せるのなら話したほうが楽だろうけど、話せないなら話せないまま死んでいくのも悪くない。
それが、あなたがあなたらしくいる、ということだ。
私はそれを、否定したりはしない。

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