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友の湯チャレンジ

日本で一番熱いサウナ

俺が体験した限り、日本で一番熱いサウナは江戸川区にある銭湯「友の湯」だ。
詳しくはサウナイキタイを見て欲しい。見たらわかるが、戦った人々の阿鼻叫喚の怨嗟の記録が並んでいる。

「軟水凶暴スチームサウナ」

「殺人スチーム」

「暴君サウナ室」
…etc


入ってきたのは昨日。
部長から「2分と入れないスチームサウナがある」と友の湯を紹介され、「俺だったら入れるだろう」と、根拠のない自信で向かったのが馬鹿だった。
どうして差がついたのか…慢心、環境の違い。圧倒されて手も足も出なかった。ここ四年ばかりサウナにひたすら精進してきた自分が試合すらさせてもらえないのだ。正直1分も入れたか…..
真っ白なモヤの中で、必死に生き残る道を探し、いままでのサウナ経験を呼び起こしながら、あらゆる手を模索する。そして最後に全身にダメージを受け、絶望だけが残り、温まらない体で水風呂に浸かる屈辱感。
そして帰宅してすぐにこの文章を書いている。
こんなことはサウナ人生で初めてのことだ。だからこそ記録せねばいられない。

部長は語る


「友の湯のサウナは生存確率ゼロですよ。誰も生き残ったものはいません。歴戦のサウナーが立ち向かって、なにもできず、ボロボロになって去っていく恐ろしいサウナです」

「あらゆる負け試合を想定しておいてください。本当に何もさせてもらえません。身体も温まりません。なんなら怪我します」

「サウナ室には桶が置いてあって、扉に挟むことによって室温を下げることができるのです。オーナーも入り方としてこの方法を推奨します。でもこれをやっては友の湯を攻略したことにはなりません。室温が70度より下がっていたら、番代にあげてくれと伝えて、元の温度に戻してから、必ず扉を閉めた状態で入ってください」

「最初は必ず誰かが入る様子を見て下さい。おそらくその人はサ室の扉を開ける時、かがむか、匍匐前進で入るはずです。もし普通に立ったまま扉を開けてしまったら、そこで試合終了です。強烈な熱波の雲海に襲われて、初手から大ダメージを受けてしまいます」

「なかではなるべく呼吸しないでください。2分以上耐えるには息をしてはダメです。それが僕の攻略方法です。口をタオルで塞ぐだけでもダメで、息をすると熱波が肺に入って悶絶しますから..... 攻略方法は人によって違いますが、サウナハットを二重、そう、二重じゃないと耐えられないので、二重にするのは必須です。バスタオルで体を覆うのもアリです。というのもスチームバスなので、蒸気が天井に張り付き、熱湯になってランダムで落ちてきます。これに当たると火傷するので、熱湯の水滴から身を守るものが必要なのです」

草加健康センターでカレー唐揚げを頬張りながら、真面目な顔で丁寧な「友の湯」指導をする部長に狂気を感じつつ、「オーバーな表現をする人だ」と笑っていた自分は、何も知らないカナリアだった。だが、これは一度でも「友の湯」の戦場を体験したことのある人なら、非常に的を得たアドバイスだと分かるはずだ。そう、「友の湯」にはいくつかクリアすべき壁がある。これをすべて攻略しないと2分は絶対に耐えることができないからだ。

一つ目は
二つ目は高温スチーム
三つ目は天井から落ちてくる<熱滴(水滴爆弾とも呼ばれる)>。

俺はamamiの相棒のしんさくくんと軽い気持ちで「友の湯」に臨んでしまった。そして結論から言うと、俺たちは攻略に失敗した。
俺は1回目のトライで左足を火傷し、風呂すらしばらく入れない体になったのである。長年サウナに通い慣れているが、水風呂を火傷の治療に使ったのは後にも先にも「友の湯」だけ。そしてしんさくくんも帰り際に気付けば上唇を火傷していた。
すべては部長の言う通りだった。
細心の注意と神経を使って、真剣に取り組まないといけない施設だったのだ。

「サウナ界の<SASUKE>」

一つだけハッキリと分かったことがある。
友の湯の「友」は「悪友」だ。
普通の友達じゃない。自分が歩むべき道を外させ、堕落させる友人だ。
俺はこのサウナを知った時から、もはや自分がまともなサウナーではなくなってしまった気がする。「ととのう」など、もはやどうでもいい話になってしまったのだ。どちらかといえば友の湯という巨大な壁に魅了され、その壁に挑戦したいと思うようになってしまった。

友の湯のサウナに2分以上入る。

昨日からそれが俺の人生の目標になったのだ。それはまるで前人未到の山に登る登山家のような気持ちだ。『神々の山嶺』に登場する登山家の羽生の気持ちに似ている、というと分かってくれる人がいるかもしれない。困難に立ち向かい、克服したいという人間の原始的な願望がサウナにも存在したのである。

「サウナ界の<SASUKE>」

ふと、俺の頭の中でよぎったのが、テレビの人気スポーツ・エンターテインメントの番組だ。
日本のTOPサウナーの誰が友の湯のサウナを攻略できるだろうか? 
そんなことを考えるだけでワクワクしてしまう。サウナ室がまるで脱出ゲームのようになってしまうなんて、こんな施設は友の湯だけではないか?
もしあなたの周りで扉を閉めた状態で2分以上入れる人がいたら、紹介して欲しい。頭を下げて教えを請いたい。
俺はいつかこのサウナに耐えれるように体を作ってきたい。そしてまた立ち向かう日を楽しみに夢見ている。

最近ではこんなTweetも見た。
恐ろしい…..


数人から「3分以上入れました!」とご連絡をいただきました。が、写真を見て、それが昼帯の時間ということも確認できました。
そこで大切なことをお知らせいたしますが、昼帯の時間は「友の湯」チャレンジに当てはまりません。
「友の湯チャレンジ」に該当するのは、ストーブがしっかり温まった夜間帯(21時以降)と定義します。
ぜひ夜間帯で健闘ください。よろしくお願いいたします。

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