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映画「トリとロキタ」

監督:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ

アフリカからベルギーへ渡った17歳のロキタと12歳のトリは道すがら姉弟と偽り、支え合って暮らす。ビザのないロキタは祖国にいる家族に送金するためにドラッグの売人を手伝い、さらに危険な闇仕事を始めてしまう。

ダルデンヌ先生やってくれちゃった、という感想です。先生が時々選ぶ手法。心にデカい重りをつけられちゃうやつです。誰の何が原因でこんなことになったのかを考えちゃいますね。ロキタ自身か、トリの存在か、家族か、仲介業者か、運び屋をさせたシェフか、ビザを発給しない行政か。たぶん全員なんですよね。誰かがどこかで健全な方向に舵を切ることもできたのに悪い方向に導かれてしまった。ロキタは大きな野望を持っていたわけじゃない。家族と普通に暮らしたい、そのためにビザを手に入れてヘルパーとして働きたいだけなのに。手を届かなくさせてるのは何なんよ。悲しい物語を見せられるだけじゃなくてもどかしさから考えを巡らせる映画。

観客を信じてる演出な気がします。細かい説明はないし音楽もない。その後どうなったかも分からない。映画を見た皆さん各々で想像して考えてみて下さいと。ダルデンヌは常にそう。今作も観客みなさん思うところはそれぞれでしょう。ただ1つ見方を提案したいことがあります。リエージュにいる貧しい移民の悲しい物語で投げっぱなし社会派映画って括られそうだけど、そっちだけではないと思います。トリとロキタに血縁は無いわけです。いわば友人です。家族から離れて孤独で搾取される境遇でも支え合う関係が生まれる。映画全般に悲しい雲がかかってるけど一片の光は2人の思いやる関係ですよね。血や性を超えた友情の可能性を見る映画とも思えました。後味は決して悪いだけではなかった。二人の楽しげな歌声が耳に聞こえたままです。


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