映画「瞳をとじて」
監督:ビクトル・エリセ
ビクトル・エリセの31年ぶり長編映画。みなさん楽しみにしておられたのではないでしょうか、私もです。期待に違わぬ169分でした。生きて映画を見続けた者たちへのご褒美なのじゃろか。
あらすじこちら→「別れのまなざし」という映画の撮影中に主演俳優のフリオ・アレナスが失踪してしまう。状況から自殺と見られたが遺体はなく、、22年が経つ。映画の監督でフリオの親友だったミゲルはこの未解決事件の謎を追うTV番組に出演することに。出演に際して当時の関係者に再会し自身の半生を振り返る。そして番組が公開された後「フリオに似た人物が施設にいる」と連絡が入るのだ!
詳細に書きたい感想はいくらでもあるのです。あのシーンやこのシーンをつらつらと。でもこれから多くのファンが観に行くことでしょうからネタバレしないようにしましょうw
「ミツバチのささやき」の美しい瞳の少女が50年経て再びアン役として出演してるってチラシを読んだ時からワクワクが止まらないですよね。その時点でエリセの過去作品から繋がりを感じるモノがきっとあるだろうと想像してましたが想像以上でした!映画監督が主人公で未完成作品についての事件でもあり、、つまりビクトル・エリセ自身の体験や感情が反映されているなあと。なんなら長編映画を制作できなかった期間までもが脚本の一部になっている。その辺の積み重ねも圧となって心をギュッと掴まれる感覚でした。
巧みなのは未完成映画の中での物語とフリオの物語をシンクロさせて、観客に比べて考えさせること。思えばミツバチのささやきも同じ形でしたね。
虚構の世界と現実の世界は同じなのか、異なるのか。どちらの結末も知りたくなっちゃう。眠くなるヒマなどないのです。
なぜフリオは失踪したのか、父と娘は再会できるのかってミステリー然として展開を作るとまず飽きない。空白の期間に家族や友人はどうなって、どんな感情の変遷があったのかと解りたい欲求を生む。それでもなんでも生き続けた姿から人間本来の逞しさを感じたけど、同時に"時"の残酷さも感じちゃうよなあ。説明が分かりにくくてすいませんが、つまり詰まりに詰まってる169分は至極の時間でした。腰痛以外はw
おじさんの美しい週末でした。そしてエリセ映画に欠かせない"犬"が今作でも最高なのは間違いないっす!もっと魅力が分かるように感想書きたかったけどめっちゃ我慢しました。ご理解ください。
ぜひ31年待ったご褒美を映画館で。