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Amazon pharmacyと薬局業界について考えてみる①

Amazon pharmacyが日本で始まりました。今回は、それにより薬局業界にどの様な影響が起こるかを他業界の事例も踏まえながら個人的に考えていけたらと思います。今回も3部作くらいの予定です。
また、今回はオフトピックの以下のエピソードを起点に考えさせていただいています。

Amazonについて

ざっくりですがAmazonについてになります。

Amazonの歴史

Amazonは、1994年にジェフ・ベゾス氏によって設立されました。*1 当初のビジョンは「無限に大きな陳列棚のある店を作ること」でした。オンライン書店から始まり、現在では世界中の多種多様な商品やサービスを提供する巨大企業へと成長し、そのビジョンを実現していると思えます。*2 また、その成長の背景には、いくつかの重要な戦略と事業展開があります。

Medium. Oct 7, 2022.Ever wonder how prices are always low on amazon?🤔

顧客中心主義

Amazonの最大の強みは「顧客中心主義」です。創業当初から顧客満足度を最優先とし、価格交渉や物流の効率化などを通じて、顧客に対して低価格かつ迅速なサービスを提供してきました。1995年に導入された商品レビュー機能は、顧客が購買の際に参考にできる情報を提供し、購買意欲を高めるための重要な施策でした​​。*3
Amazonの成長を支える重要な要素として、「相互ネットワーク効果」があります。Amazonは、ユーザー体験を向上させることで、顧客と売り手が集まり、商品セレクションが充実するという好循環(相互ネットワーク効果)を生み出しました。さらに、Amazonはもう一つのループを裏で動かし、規模の経済と低コスト構造を活かして低価格を実現しました。この二重のループを駆使し、他社が真似しにくい強力なビジネスモデルを築き上げています。*4

多角化戦略

Amazonは「多角的な事業展開」にも注力しています。主力のeコマース事業に加えて、AWS、Kindle、Amazonプライムなど、多岐にわたる事業を展開しており、これらの事業はAmazonの収益の柱となっています。*1,2 また、ヘルスケア領域への参入やソーシャルコマースへの進出の動きも見られています。*5
Amazonの成功には、「無駄をなくす」効率化の追求が不可欠です。Amazonは、物流ネットワークの最適化やデータの活用によって、コスト削減とサービス品質の向上を実現し、他社との差別化を図ってきました​。*2
以上のように、Amazonは顧客中心主義、相互ネットワーク効果、多角的な事業展開、そして効率化の追求によって、今日の成功を収めていると考えられます。

EC業界におけるAmazonとShopifyの比較

Shopifyとは

Shopifyは、オンラインストアを開設・運営できるeコマースプラットフォームです。2004年にスノーボード販売サイトを運営していたTobi Lutke氏によって創業されました。当時、既存のECプラットフォームが使いにくく高価だったため、彼は自らツールを開発し、それがShopifyの始まりとなりました。現在では、175カ国以上で100万人を超える事業者がShopifyを利用しています。*6
Shopifyの特徴としては、簡易なオンラインストア開設・運営、カスタマイズ性・決済ゲートウェイ・配送オプションなどの豊富な機能、サポート体制などがあります。*7
これらのことから、Shopifyは特に中小規模事業者から人気を集めています。*6

ShopifyとAmazonの比較

ShopifyとAmazonは、どちらもECに関わる企業ですが、ビジネスモデルは大きく異なります。

Shopify: 事業者が 独自のオンラインストアを構築・運営するためのプラットフォーム を提供しています。Shopifyはプラットフォーム提供者として、月額利用料や取引手数料、追加サービスなどを通じて収益を得ています。*8
Amazon: 巨大なオンラインマーケットプレイス を運営し、自社でも商品を販売しています。Amazonは、マーケットプレイスで商品を販売する事業者から手数料を徴収するほか、自社販売による収益も得ています。*9

つまり、Shopifyは事業者が 「自分のお店を持つ」 ことを支援するビジネスモデルであるのに対し、Amazonは事業者が 「Amazonに出店する」 ことを支援するビジネスモデルであると言えます。*6,9
また、ShopifyとAmazonは、ターゲットとする顧客層も異なります。

Shopify: 主に中小規模事業者起業家をターゲットとしています。低価格なプランや、簡単に利用できるツールを提供することで、オンラインストア運営の経験がない事業者でも参入しやすい環境を整えています。*6
Amazon: あらゆる規模の事業者 をターゲットとしていますが、その巨大な顧客基盤から、 大規模事業者 にとって特に魅力的なプラットフォームとなっています。*9

ShopifyとAmazonは、データ活用とカスタマイズに関しても違いがあります。

Shopify:事業者が 自社の顧客データを取得・活用できる ことを強みとしています。事業者は、ShopifyのAPIを利用して、自社の顧客管理システム(CRM)やマーケティングオートメーションツールと連携させることもできます。*9
Amazon:顧客データの宝庫であり、そのデータを活用した 高度なレコメンデーション機能 などを提供しています。また、Amazonは、マーケットプレイスで販売する事業者の販売データを取得し、自社製品開発に利用しているという指摘もあります。*9

プラットフォームとアグリゲーターについて

「プラットフォーム」という言葉は、頻繁に使われますが、その正確な意味や定義については、曖昧であるのが現状です。多くの人がこの言葉を漠然と「良いもの」と捉えがちですが、実際にはその背後に複雑なメカニズムと戦略が隠されています。Thompson氏は、プラットフォームと呼ばれるものには2種類あると指摘しています。*10
プラットフォームは第三者の供給者とエンドユーザーの関係を促進する基盤を提供し、その上でさまざまなビジネスが成り立つ環境を整えます。一方、アグリゲーターは供給者とエンドユーザーの間を仲介し、関係を完全に管理することで、自らのネットワーク効果を最大化します。この違いにより、プラットフォームはエコシステム全体の価値を高める一方、アグリゲーターはユーザー体験を最優先にして支配的な市場地位を築きます。*10

Stratechery.May 23, 2018.The Bill Gates Line

これらの視点から再度、ShopifyとAmazonについて考えてみたいと思います。
Shopifyはプラットフォーム型ビジネスであり、第三者の事業者が独自のオンラインストアを構築し、運営するための基盤を提供します。Shopify自体は消費者と直接的な関係を持たず、事業者が自身で顧客を獲得し、販売を行うことを支援します。*9
一方、Amazonはアグリゲーター型ビジネスの典型例です。Amazonは大量の消費者を引き付け、そのネットワーク効果を活用して第三者の販売者を自社のプラットフォーム上に誘引し、消費者との関係を完全に管理します。これにより、Amazonは市場での支配的地位を維持しつつ、自社商品の販売も積極的に行います。*9
メリットとデメリットについては以下の様に整理できるかと思います。

・プラットフォーム(Shopify)
メリット
:
事業者が独自のブランドや顧客関係を維持できる。
顧客データを自社で管理・活用できるため、独自のマーケティング戦略を展開しやすい。
デメリット:
事業者自身が集客を行う必要があり、マーケティングやブランディングに高いハードルがある。
独自のプラットフォームを維持するための技術的なコストや知識が必要になる​。
アグリゲーター(Amazon)
メリット
:
Amazonの確立した広範な顧客基盤を利用することで、迅速に商品を販売できる。
Amazonの物流ネットワークを利用することで、配送の効率化が可能。
デメリット:
Amazonが販売者から収集したデータを自社商品の開発やマーケティングに利用することで、販売者と競合するリスクがある。
販売者のブランド価値がAmazonのブランドの下に埋もれてしまう可能性がある​。

Stratechery.May 23, 2018.The Bill Gates Lineを参考に作成

以上のように、Shopifyは、プラットフォームのあり方から、Amazonとの棲み分けを実現してきました。ただ、Amazonは、最近ではプラットフォーム化を目指す傾向も出ております。*11 また、facebookなども、マーチャント志向を別角度で持ちながら、リードタイムの短縮からの価値提供の動きも出ております。*12 Shopifyの立ち位置は参考になる部分が多いとともに、今後の棲み分けに関しても注視していく必要がありそうです。

次回は、Amazon pharmacyについて深ぼっていこうとおもいます。

ヘッダー画像:generated by DALL-E
【参考資料】
*1:Medium.Ethan Parker.Jul 13, 2024.The Winning Techniques of Amazon: A Success Road Map
*2:リード・ホフマン,et al.2020/2/14.ブリッツスケーリング
*3:ダイヤモンド・オンライン.田所雅之.2024.2.27.Amazonの事例に見る「オセロの四隅を取る」戦略思考とは?
*4:ダイヤモンド・オンライン.堀田 創,et al.2021.4.15.ベゾスがAmazon創業前にメモ書きした「戦わなくても勝ち続けてしまうループ」の図
*5:HawkInsight.2024-08-15.Amazon と TikTok が提携して e コマース環境を変革
*6:Medium.Albert Wang.Jun 19, 2020.Shopify: A Sustained Success Story
*7:Medium.Criffel Agency.Nov 14, 2018.Shopify — Amazon of E-Commerce
*8:Pitchgrade.Feb 01, 2024.Matthew Ramirez.Shopify: Business Model, SWOT Analysis, and Competitors 2024
*9:Stratechery.April 28, 2020.The Anti-Amazon Alliance
*10:Stratechery.May 23, 2018.The Bill Gates Line
*11:オフトピック.2023年9月8日.【無料公開】アグリゲーターからプラットフォーム化するAmazon戦略 Daily Memo - 9/8/2023
*12:Stratechery. May 26, 2020. Platforms in an Aggregator World


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