エッセイを頬張る
〜『ごはんぐるり』 西加奈子〜
食べ物エッセイが好きです。『ちびちびごくごくお酒のはなし』『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』『365日。』などなど、食に関する本はついつい集めてしまいます。
最近手に取ったのも西加奈子さんの食べ物エッセイ、『ごはんぐるり』。
そもそも彼女の文章が好きなのですが、この本に収められている文章にはこてんぱんにやられてしまいました。
例えば「カイロの卵かけごはん」。
彼女は小1〜小4までエジプトのカイロで暮らしていたそうです。そこは食材はもちろん文化が全く違う世界。現地の生野菜は食中毒になるから食べられないし、お米には石粒や虫などが混じっているため洗う前にピンセットでそれらを取り除くのに数時間を要するなど、前提条件が全く違う環境下。そんな中、彼女のお母様はハンバーグやコロッケなど、日本のみんなと同じ普通のごはんを作ってくれていました。
そして登場する卵かけごはん。生卵なんてまず手に入らないからこそ食べたくなるごはん。どうやってありついたかはこれから読む人のために省きますが、帰国して20年経ってもあれほど美味しいものには出会えていないと仰っています。
たぶん西さんご本人は食べ物に対してそこまでこだわりはないように思います。そこがまたいい。ますます親近感。
なんてことないふうに書いてあるんです。美味しそうだったり楽しそうだったり。それなのに気付くと圧倒されています。実は私、まだこの本全部読み終わっていません。でも思いがたぎってしょうがないから衝動のまま感想文を書いています。毎日数編ずつ電車の中で読んでいるのですが、いつもどこかで泣いてしまう。何度も。
西さんは彼女が感動したことを、そのまま人に伝えようとしていてしかもそれに成功している(たぶん)。「プロだから」で片付けられない、すごい力だと思います。
西さんの文章そのものが美味しいごはんみたいなんですね。体中を巡る血や肉になってみんなを元気にしてくれる食堂のごはん。
さて明日からまた少しずつ読み進めよう。
まだ読んでいないけど大好きだとわかっている文章があるなんて、本好きにとってこれ以上の喜びがあるでしょうか。
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