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猫ちゃんの誕生日

向かいのアパートで野良のお母さん猫に黒猫の双子が産まれた事に気付いていた。
片方は大きく片方は小さくカラスが騒ぐ度に胸がざわついた。
7月と思えないほど寒い雨の朝に猫ちゃんはゴミ置き場で小さく固まっていた。
一瞬心臓が止まったかと思う。
慌てて抱え上げると微かに震えている。
慌ててタオルで包み膝に乗せたままパソコンで必死に調べた。
出来る事は乾かして保温する事くらいで動物病院が開くのを今か今かと待ち侘びた。
開院とほぼ同時に駆け込み事情を説明する。
栄養失調な上にノミに集られて失血状態おまけに猫風邪を引いていて鼻が効かないとの事。
その医師は猫ちゃんの首根っこをゴミみたいに摘んでノミ駆除のスプレーを猫ちゃんに振り撒いた。
二度と此処には来ないと心で誓った。
落ち着いて出来る事を聞く。
もし食べられなかったら輸血。
今日が山で食べられなかったら諦めて下さいとの事。
注射をしてもらい仔猫用の高栄養食を買い胸に猫ちゃんを抱えて家路を急ぐ。
小さなお皿にウェットフードを少量出して鼻先に持っていき「食べて。美味しいよ。食べよ。美味しいよ」繰り返し鼻先へ持って行っては声を掛け続けた。
800g無かったが推定2ヶ月で離乳済みなだけよかったと思い膝に抱え撫で続けた。
口の中も舌も真っ白だったのが少しずつ桜色になっている様に見える。
猫ちゃんを保護してから15時間以上過ぎた頃ようやく鼻を少しひこひこさせてウェットフードに食らいついた。
きっと栄養の注射と抗生物質の注射が効いてきたのだろう。
とにかく食べてくれた。
今夜が山だ。
保温と栄養。
いつの間にか眠ってしまい猫ちゃんの「ご飯ー!」の声で目が覚めた。
片手にすっぽり収まるほど小さかった猫ちゃんはぐんぐん大きくなってもう18歳。
猫ちゃんの誕生日は2回ある。
推定5月初旬と保護した7月初旬。
特に何もしない。
猫ちゃんの日常は穏やかに過ぎていく。

2023年6月14日(水) Twitterより

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