2021年11月3日

2021年10月最後の日曜日、EUは夏時間から冬時間へと切り替わった。3月末の夏時間への移行も含めると1時間のゲインとロスをこれまでに何度、繰り返してきたか分からない。冬時間に変わった今回は1日が1時間長く、ゆっくり過ごせた。

夏時間になるときはその逆であり、慣れるのに時間がかかる。睡眠不足の人が増え交通事故などが増加し、牛の乳量も大幅に減る。健康に悪いことは医学的に指摘されており、欧州議会は欧州委員会の提案を踏まえ2019年に廃止を決議した。廃止は21年を予定していた。

だが、今年も時間の切り替えが春と秋に行われた。一体どういうことなのか?

実は、夏時間と冬時間のどちらを通年で適用する「標準時間」に設定するかをめぐり加盟国間の意見がまとまらないのである。どちらを採用するかの決定を各加盟国に委ねると域内のタイムゾーンが複雑になることから、時間帯を域内全域で統一する方針なのだが、東西に広いEUでその実現は難しい。もし冬時間を標準時間にすると、ポーランドの首都ワルシャワでは夏の夜明けが午前3時となる。日が昇れば目が覚めやすくなるため、多くの市民が睡眠不足に陥りそうだ。一方、夏時間を標準時間にすると、スペインでは冬季の夜明けが午前10時頃になってしまう。北欧の人であれば問題ないだろうが、南国の人々には大きな負担になるだろう。

問題解決の糸口はなく、加盟国は議論を棚上げにしている。緊急性の高いテーマではないことから、恐らく夏時間と冬時間の切り替えに市民は今後も付き合わざるを得ないだろう。

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