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足下を掃き清めたその先に

駅へ向かう道すがら、近所のマンションの管理人さんを見かけると、マンションのエントランスを掃除していた。エントランスが終わった後、隣のアパート前もほうきで丁寧に掃きはじめ、更にその隣の民家の前も続けて掃いていた。もう一度言うと、彼はマンションの管理人さんだ。

役割にとらわれず掃除をする彼の姿に「利他の心」を感じた。誰も見ていない、誰も褒めない、それでも彼は二軒先の掃除を黙々とこなす。仕事のあり方を改めて考えさせられる光景だった。

仕事はいつだって誰かの役に立っている。けれど、それは大抵誰かに指示されていたり、お願いされていることの方が多い。対価をいただくことを考えると、自分の任された領域だけこなせばいいと思ったり、決められた時間だけ働けばいいと思って、わざわざそれ以上の配慮をすることもなくなりつつある。

もちろん、それが駄目ということではない。サービス残業を推奨しているわけでもない。なんというか、こう、ちょっとした心配りと言えばいいだろうか。自分に与えられた役割を全うし、余力や空いた時間にあと一つ何かできるかしら?と考えを巡らす。そんな優しさのかけらを掃除する管理人さんから受け取ったのだ。

自分の足下をまずは掃き清める。そして、その先を見つめる。今の自分に任された仕事を行った先に何かできることはあるだろうか?特別な技術や能力などいらない。ほんのわずか他者に心を寄せて手を差し伸べることで、誰かを助けることができる。気づかれなくたって構わない。

ひたむきにほうきを動かし掃除する、そんな管理人さんの姿を見て、自らの歩み方を指南されたように感じる日となった。

名も無き心豊かな人に出会うことで、自分の心も浄化されていく。自らを振り返る時、それは常に他者という存在が目の前にいてくれることで鼓舞されたり、反省したりすることができる。

自分はまだまだ未熟者で足りないところだらけ。その自覚を忘れず、日々学び、鍛錬し続けていこう。


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