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始末屋由来木屋

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#小説

一章──病院を抜けて

一章──病院を抜けて

「はぁ……面倒臭いですねぇ」

 ため息をつけば幸福が逃げるという流言があるが、コンビニ袋片手に病院の廊下を歩く帳は自身から逃げる幸福など残ってはいないだろうと考えていた。
 山城朝日の誘拐事件に帳が始末屋として介入してから数日。
 満足な食事さえとれていなかった朝日は、経過観察も兼ねて石凪(いしなぎ)総合病院に入院していた。依頼人である山城家への報告は巻奈が行い、帳はお見舞いと護衛を兼任する日々

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