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玖躬琉の部屋

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長い独り言や自身の経験を織り交ぜた随筆やエッセイらしきものもこちらで。
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#短編小説

水路(1)

「ねえ、理迦(りか)と蒼(そう)ってさあ、自分が覚えてる一番小さい頃の記憶って何歳?」 私は夫の四十九日を済ませたお寺の帰り道、2人の子供に尋ねた。 「うーん保育園の年少さんくらいかなあ」 「赤ちゃんの時にアレルギーと喘息が酷くて、お父さんがいた同じ大学病院通ったの覚えてないの?」 「全然覚えてないー。」 「『とびひ』になってお尻にも水ぶくれが出来ちゃって、触ると潰れちゃうから抱っこも出来ないし、ずうっと歩いて。5分かからないとこが1時間かかってねえ」 「そうなの

本当にあった○○な話

5月は多い方で10連休!あっという間に月末かあ・・・と思う淀です。 もう「令和」には慣れましたか? 最近季節の巡りがどんどん早くなっているような気がして、北海道では35度を越え、道内で気温差25度以上だって。 異常気象が現実味を増してきて、自分が運よく長生きした時、お外に出られるか・・・取り越し苦労をしそうです。 先日「人生の選択」で登場した娘の住処も無事審査が通り、引っ越し準備中。 私自身は「書いて生きていく」というだだっ広ーい人生選択をし、有料にて配信させていた

人生の選択(2)

■私:中学3年8月 当時中学の担任だったN先生に呼ばれ、私は職員室に行った。 「あのね、あなたに合いそうな学校があるから見て欲しくて」 N先生は英語が担当で、偶然にも昔、私の2番目の姉の担任でもあった。 差し出されたパンフレットは、名古屋にある商業高校だった。 偏差値はそれほど高くないが、今年から「情報処理学科」が新設される共学校で、英語にも力を入れている。なにより魅力だったのが「うちの中学から一人もその学校に進学していない」ということだった。 「工業だと電気科や機械

人生の選択(1)

2019年5月21日 アパートの内見に付き合ってほしいと娘に言われ、不動産屋と共に車に乗り込んだ。 結局、いい物件は見つからず、もう一度不動産屋から探し直すことになった。 ■娘 高校1年の夏 「お母さん、ちょっとこれ見て欲しいんだけど」 夕飯の支度をしていた時、学校から帰ってきた娘は封筒に入ったパンフレットを持ってきた。中には聞きなれない楽器技術専門学校のパンフレットとオープンキャンパスの申し込み案内が入っていた。 手前味噌だが娘は学校の成績もよく、中学の頃塾にも