地球温暖化によって熱帯低気圧や大きな竜巻の頻度は下がる

地球温暖化については、一年ほど前に記事を書いたことがあります。今、読み返すと書きたいことがあまりに多すぎて、まとまってない文章だと思います。が、書きたかったのは地球の温暖化が事実として、果たしてそれが人間にとって良いことなのか悪いことなのかは自明ではなく、ましてや温暖化を防ぐと称する二酸化炭素の削減の為に莫大なコストを掛け、成長の源泉である化石燃料による安定したエネルギーを捨てようとするのは常軌を逸しているということでした。

勿論、二酸化炭素削減論者の意見は異なります。彼らに言わせれば、地球温暖化は

A:暑熱や洪水など異常気象による被害が増加
B: サンゴ礁や北極の海氷などのシステムに高いリスク
マラリアなど熱帯の感染症の拡大
C:作物の生産高が地域的に減少する
D:利用可能な水が減少する
E: 広い範囲で生物多様性の損失が起きる
F: 大規模に氷床に消失し海面水位が上昇
G: 多くの種の絶滅リスク、世界の食糧生産が危険にさらされるリスク

WWFジャパン、地球温暖化が進むとどうなる?その影響は?

をもたらすとされています。ここで気を付けたいのは、これらのリスクは概ねシミュレーションの結果であって、観測された事実を元にはしていないということです。

この手のシミュレーションは実に当てにならないという話をします。

先に挙げたリスクの中にサンゴ礁の話があります。サンゴについては、2012年に出版されたLimiting global warming to 2 °C is unlikely to save most coral reefsという論文があります。内容はシミュレーションの結果、工業化以前からの温度上昇2℃以内という目標はサンゴ礁にとって緩すぎる、温度上昇はせめて1.5℃以内に抑えないとサンゴ礁に壊滅的な被害が及ぶ可能性があるという内容でした。

しかし、実際には2012年からの水温上昇にも関わらず、グレートバリアリーフは2022年に観測以来最大の成長を見せています。

Figure4: Coral cover for the Great Barrier Reef

世界のその他の地域のサンゴ礁も2010年代の白化現象によりサンゴと共生する藻を入れ替えた後は回復を見せ、地球温暖化はサンゴ礁にとって大きな問題にはなっていません(同上)。何と言ってもサンゴは「水温が1℃上がると恐らく25%程度成長速度が増大する」ものなのです(下の動画より)。

シロクマもそうですが、自然は人間の想像を超えてはるかにうまく環境の変化に対応できることがあります。

二酸化炭素削減論者はありとあらゆる災厄を地球温暖化と結びつけて論じる傾向にあります。そのリストは嵐の被害の増大、干ばつの増加、海の温暖化と海面の上昇、生物種の喪失など長々と続きますが、よくよく読むとそれらは事実に立脚したものではなく、危険性があると述べているだけです。しかも彼らは幾分か視野狭窄に陥っているようで、物事の悪い面しか見ようとしません。

大気中の二酸化炭素の増加には良い面があります。例えば、二酸化炭素の施肥効果です。大気中の二酸化炭素の増加は植物の光合成に良い影響をもたらし、植物の生長を助けます。植物に依存する他の動物にも勿論良い影響をもたらします。食料の増産に寄与し、地球上のほぼ全ての生命がより健康であることに役立ちます。空気中の二酸化炭素の濃度が上がることは、植物が二酸化炭素を取り入れるために気孔を開ける時間を減らすことが出来ることをも意味し、植物は干ばつにより耐えることが出来るようにもなります。これは実験室でも確かめられ、温室栽培では実際に農業技術として活用されています。

それ以外にもあります。温暖化によって熱帯低気圧の頻度は減るということが観測されました。(下のグラフはその下のリンクにある論文からです)

世界の熱帯低気圧の発生頻度

また、竜巻についてもどうやら温暖化は良い影響をもたらしているようです。竜巻の本場はアメリカです。そのアメリカにおける竜巻の発生頻度を記録したグラフを下に示します。

Figure 1: The total number of tornadoes reported in grey and number of F1 or stronger tornadoes reported in red.
NOAA, State of the Science FACT SHEET

灰色の線が軽微な被害から被害報告のないものまで含めたすべての竜巻の数を示したものです。その中で中程度の被害をもたらしたものだけを抜き出したのが赤線になります。

Figure 1. This figure shows the frequency of strong to violent tornadoes (tornadoes registering EF3 or stronger) has been declining since the early 1970s. Sources: Graph by Anthony Watts using official NOAA/Storm Prediction Center data.
出典 CLIMATE AT A GLANCE

さらにその中で重大な被害をもたらした竜巻についてグラフ化したのが上のグラフです。二つのグラフをまとめると竜巻の総報告件数こそ増えているものの、ある程度の被害をもたらすような竜巻の数は横ばい、重大な被害をもたらす大きな竜巻はむしろ減っているということが見て取れます。

竜巻の原因は発達した積乱雲だそうですが、地球温暖化によって冷たい空気がより暖かくなることで、寒気と暖気の温度差が小さくなり、大きな被害をもたらす竜巻が減ったと考えることも出来ます。

熱帯低気圧にせよ、竜巻にせよ、これらの人間にとって良い現象は、二酸化炭素削減論者の陰鬱な予測の長いリストに比べれば些細なことかも知れません。その意味でチェリーピッキングと呼ばれても仕方がない。しかし、怪しげなシミュレーションに支えられた、リスクと称するあやふやな言説に事実でもって対抗できることは、実に素晴らしいことだと思うのです。


補足
日本の二酸化炭素削減論者の一人に江守正多という方がいらっしゃるようです。Youtubeのお勧めに出てきたので動画を拝見しました。動画で、温暖化がもたらす悪影響ということで語っていらっしゃるのですが、これがまた見事なまでに、悪影響が考えられる、可能性があるのオンパレード。何の具体性もありません。二酸化炭素削減論者の論法として典型的なので、紹介したく思います。

あと、動画中、サンゴの白化について、「藻が逃げる」という表現をされていましたが、正しくないです。正しくは、より暖かい温度に適した藻に入れ替える、です。

補足2
グレートバリアリーフについては2024年版のデータが公開されました。サンゴは順調に生長しているようで、観測史上最大の面積だそうです。

Figure 1: Coral cover for the entire GBR from 1986 to 2024: Coral cover for the last three years has been at record breaking high levels. Normalised coral cover is the fraction of the sea bed coved by coral.

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