2020/3/31 「グランド・ブダペスト・ホテル」

グランド・ブダペスト・ホテル(2014年公開)
原題:The Grand Budapest Hotel 
監督:ウェス・アンダーソン
脚本:ウェス・アンダーソン


※以下ネタバレ多分してます


むふふふ…面白かったあ… 
なんでしょう、こう終わったあとに残る不思議な余韻がむふふって感じで、こそばゆいというか、なんか大切な秘密を共有してくれたような、そんな不思議な感覚になりました。

多分そんな気持ちになったのは入れ子構造がすごく作用してるんじゃないかなと思います。
ラスト、一気に現代まで戻ってくるのはなんだか夢から醒めたような…そう、それこそ超集中して読書してる時にふと現実に引き戻されるのと同じ感覚でした。
だからその仕掛けに思わず笑っちゃって笑
それまでこれが三重の入れ子(厳密には四重かな)になっているのを忘れてのめり込んでいた自分がいたのが面白かったんですね、多分。でこれは製作者の術中にハマってるんだと思う笑 

きっと私たちはそういうふうに誰かの物語を通して、自分の精神世界を漂ってるんだろうなあと思います。
普段はそんなこと気づかずに沢山の物語に触れてるんだと思うんですが、この作品では現代で、ある女の子が一冊の本を読んでいるという体験を体感することによって、私たちが無意識に行なっている“物語にのめり込んでいく感覚”っていうのを客観的に気づくことができるよう、作られているのではないかと思いました。
特に後から調べて納得だったんですが、
①現代→②若き作者と老いたゼロの会話→③グスタフとゼロの話
という風に、より精神世界に近いというか、記憶の深いところに行くほど画角が狭くなっていくんですよね。画角狭いなーっていうのは若き作者がホテルにいるところから思っていて、てっきりキューブリック的なシンメトリーを意識してのことかと考えていたんですが、もっと深い仕掛けがありました笑 
それで人間の意識で不思議だなあと思うのが、最初はちょっと違和感に感じていた画角も慣れてくると全然気にならなくなるんですよね。で、気にならなくなってのめり込んできたところで、一気に画角の広い現代に戻ってくるので、うわっって、夢から醒めたような感覚に陥る。
人間の無意識的な部分を緻密に計算して作られてるんだなあと思いました。

あとは各階層によって微妙に画面の質というか、世界観の質も変えていってるのかなって感じがします。作品を通して一貫しているのは絵本的な2D的な画面の作りなんですが、②ではそれこそキューブリックのような少し硬質なイメージが強くて、多分ホテルの廃墟感を強調させるためなのかなと。
だから色合いも少し尖ってる感じ。ライラックとかラズベリーみたいな。
でも③になるとより絵本に近い世界観になるんですよね。ホテルの内装、小物、街並み然り。色合いももう少し柔かくなって、人間の記憶によるあやふやさというか、フィクション性を強調しているように思いました。

あ、ここでのフィクションっていうのは意図して作るっていうニュアンスより、人が語ることによって、どうしても生じてしまうフィクション性って感じです。思い出話って絶対に記憶違いがあるじゃないですか、あんな感じ。

特に③では漂うミニチュア感がすごく好きでした✨ こう、ヒッチコックの「裏窓」から見える景色みたいなジオラマ感がもう好き笑 「裏窓」の時は確かスタジオにセットを建てたので、実寸より一回り小さくしないといけなかったからっていうミニチュア感だったと思うんですが、今作のミニチュア感は実寸でどうミニチュアっぽく撮るかって感じだったんじゃないかなあと、街のシーンを観て思います。だからピンボケの差を大っきくしたりしたんじゃないかなあと…確か特撮はその逆をやっていて、模型を模型っぽく見せないように背景と主体のピンボケの差を極力無くすんですよね。まあ、今作でそれをやったかは勝手な妄想なんですけど笑

あとは物語としてはあまり劇的な展開、演出はされないんですが、時折スパイスのように挟まれるブラックな感じがツボでした笑 すごく可愛い世界観なのに猫は窓から投げられちゃうし、指飛ぶし、生首出てくるし笑 でもそのブラックな部分の出現の仕方がティム・バートン作品に似てるから怯えずに観れたかな。
こう可愛さの中のグロさ、グロさの中のブラック・ユーモアみたいな。
それがなかったら多分この映画寝る笑

とにかく不思議な感覚に陥る作品でした。
グスタフが早口過ぎて字幕を追うのが大変だったので、もう一回ぐらい観るともっと沢山のことが発見できそうです。特に鍵の意味とか、あとは少年と林檎の絵が最初から飾られてるかとか、そういう細かいとこ観たい笑

時間があれば観なおして、再考察したいところです。でもまだまだ観るべき映画が沢山あるので、まずはそっちかなあ〜😂
それでは皆様、体に気をつけて楽しい映画LIFEを✨

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