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へんろ放浪記1「手をつないで」

歩き遍路では、歩き進むごとに数々の出会いと忘れられない一期一会に教えられることがあります。そんな出来事を当時の文章のまま掲載します。

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坂出の町から郷照寺にむかう道でのことです。
立ち話をしている奥様達に「こんにちわ」とご挨拶をしました。
そうしてすすんでいると、
「お遍路さん~」と、先程ご挨拶した方に呼びとめられました。
「うちにあったものでこれぐらいだけれどよかったら」
と差し出してくださったバナナと乾パンに感激して
「おなかがすいていたのでとてもうれしいです」
感謝の気持ちをつたえて、そのさきに公園があることをおしえていただき休むことに。
いただいた方(←おかあさん)のご主人が亡くなられたこと。
本当は一緒にお遍路する予定がゆけなかったこと
ご自分は目の病気であまりよく見えないのでもうひとりではお参りができないこと…
せめて私たちにできることはと考えて、
「おかあさんの分のおとうさんのことをお参りしてきます」
一期一会のほんのすれ違いが名残惜しかった。
そうしてしばらく公園で休んでいると、
「お遍路さ~ん!」
お母さんの声がまた聞こえる。
びっくりして声のほうをみると手にお弁当をもったお母さん。
でも…怪我してる(T T)
私たちが座っているのが見えて、行ってしまう前にとあわててお弁当を買って届けたくて走ったら、目がよく見えないのでころんでしまったの、って。
びっくりして、なんだか申し訳なくなって、うけとっていいのか悩んでいると、
「ごめいわくだったかしら?」って今度はかえって気をもませてしまって。
そこでお弁当をひとつはおかあさん、ひとつはまりなちゃん、
半分こにして、今度は御礼にまりなちゃんが手をつないで
お家までエスコートすることに。
歩き疲れたお遍路さんを歩かせたらもうしわけない、
と何度もいっていたけれど、私たちは手をつないで歩きたかったし、
私たちからのお接待はいまはこれぐらいしかできなくて。
荷物番をしながらカメラをむけた。
ふたりのうしろすがたにはおたがいのやさしいきもちが見えた。
このときのお弁当をまりなちゃんはずっとだいじにもっていて
最後の最後になみだいっぱいのまりなちゃんを元気づけて助けてくれるのでした。
目がよくなりますように、目がよくなりますように。
笑顔で見送りながらなんだかなみだがでちゃった出来事
その後のお話。
おかあさんはせつこさんといいました。せつこさんにお手紙をかきました。
まりなちゃんは折り紙をおりましたお手紙は読むのがむずかしいときいていたので
電話番号と写真をそえて。
その後、あのときに撮った写真をかざってくださったことをお電話で聞きました。
挨拶一つでかけがえのない出会いができること
どんな道にもなにかお大師様からのメッセージがあり
ふしぎなお導きがあるんじゃないのかな、と思う。
遍路道や山道以外はショートカットをこの旅ではしないで
全てを大事にあるいていこうとますます思いました。

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