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【〜戯れ交叉〜アプリコットの影踏み】

戯れ交叉はハイドラさん作『Swinging Chandelier』シリーズに呼応した噺。

『Swinging Chandelier』の登場人物に関する背景や描写等は、全てハイドラさんから了承をいただいていることを宣言して―――さあ、開演。

まずはこちらから  Swinging Chandelier-6:ブライズメイド・上 Swinging Chandelier:7 ブライズメイド・下

 
「マリさん、大人だったなぁ……」

 手首に触れた細くて強い指。
 気にかけてくれる甘くて少し危険な眼差し。
 大人可愛い金色のメタリック腕時計。
 さらっとお酒を頼んでクイッと飲めてしまう。
 ほろ酔いのはずなのに全然酔ってなくてはっきりと私を見て話せる。
 私とあんまり背丈は変わらないのに、私よりずっと背が高く見える。
 すごく……すごく……

 どきっとしたんだ。

「もう少しだけ、一緒にいたかったな」

 どうしたらもっと会話できるかな。
 まずは相手を知ることからだよね?
 今日行った場所やご飯は絶対リサーチしなきゃ。
 ふわふわ受け身でエスコートされっぱなしは、
 オフちゃんみたいでイヤだ。

 アンズは、杏子は、……私は、違うもん。

 もっと追いかけて、もっとチャレンジして、
 もっと、もっと……。

 『三番線、電車が参ります』

 ………………もっと……………。

 
ーー
ーーーー

 旦那は、普通に「おかえりー」って言ってくれた。
 リビングてゲームしながらだったけど、
 手を止めてこっちを見てニカッと笑いながら、
 アクションゲームのハイスコア画面を指さして、
 いつも通りの上機嫌だった。

 そのあとソファでハグしてくれて、
 楽しかった?とか、何食べたの?とか、
 私にできた新しい女友達に興味津々。
 ミコシーとお茶したときとは大違い。
 家が近いならご飯食べに連れてきてもいいよとか、
 日曜日に家に招きたいなら遠慮して外出してるよとか、
 どうしちゃったのってくらい、優しい。
 その後一緒に少しゲームして、お化粧を落とさないとって思って立ち上がったら。

 ーーーードレス姿を独り占めしたい、って。

 なんでだろう。なんでだろう。

 

 なんで、失敗するのにそんなこと言うんだろう。


 痛いのに


 怖いのに


 私に「性感帯が無い」ことを諦めてくれない


 でも、子供はお母さんたちの為に必要だから


 ………………。


 ………………………………あ、いたい、よ。


 …………………。


 …………………………キモチワルイ、よ。
 


「ごめんね、ごめんね、こんなんじゃだめなのに」
 「ごめんね」
  「私が悪いの」
   「ちゃんと、大人にならないと」
    「早く、産めるために、できるように」


 …………………ずるいよ、たすけてよ………………。


 ねえ……………いいとこどりしかしてないんだから



      このいたみを かわってよ




*****************

『スロー……?せ、ええと、その、スローって、投げる?』
『んなわけないでしょ。ゆっくりってこと』
『ああなるほど☆でもゆっくりってどゆこと?』
『ゆっくり濡らして、好きだよって喋れるくらい余裕を味わえるようなかんじ』
『へえ……よく知ってるね??』
『まあ、ね。要するに女性にだってやりたいペースがあるんだから、尊重しあえってこと。刺激と幸福度は必ずしも比例しないし』
『……その、本番前だけでもいい、ってこと……?』
『そういうこと。ちゃんと言いな、そういうこと。たぶん悪気はないんだろうけど、無知は時に罪だし、旦那さんだって我慢されながらなんて嫌でしょ』
『……………うん………。わかった、言ってみる!』

***************



男はそんなんじゃ物足りないって、一蹴されたよ?


        ウソツキ




『空瓶さん から メッセージ:
 来週の打ち合わせはいつもの資料館でいい?


    ねえ、責任、とってよ…………

 夜中に台所で独りで泣いてるの、気づいてよ

 結婚してもずっと変わらないって約束したよ?


『空瓶さん へ メッセージ:
 オッケー♪       


  普通に、王子様が欲しいだけなんだよ?



これが白紙の値札。いつでも、もちろん0円でも構わないわ。ワタシの紡ぎに触れたあなたの価値観を知ることができたら、それで満足よ。大切なのは、戯れを愉しむこと。もしいただいたら、紡ぐ為の電気代と紙代と……そうね、珈琲代かしら。