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【戯れ~オフベージュの疼き1~】

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カタンタタン、カタンタタン。
長い長い帰り道。時計に操られて押し込まれた人々が運ばれる音。
長椅子に行儀よく詰めて座り、ぶら下がった吊革を律儀に握り、
黙ったまま運ばれる長い長い帰り道。

カタンタタン、カタンタタン。
決められた角度に首を少し前に倒して、片手に持つ小さな液晶画面に
意識と意志を委ねる。ゲームをする人、動画を見る人、ニュース記事を
閲覧する人。彼等の個性を表すのはその電子媒体を飾るカバーくらい。

カタンタタン、カタンタタン。
仕事で不慣れな乗り換えを余儀なくされた私は初めて思った。
――嗚呼、なんて、つまらない。
——嗚呼、なんて、いま自由なの。

吐息のほうが多くて、少しの揺れで他人の足を踏みそうに狭い空間で、
身体のどこが誰に触れても責められない――いいえ、自由な空間。
そんなふうに思ってしまう私は、きっとおかしい。

おかしい。清楚ではない。女性らしくない。
オフベージュのフレアロングスカートを纏う女性から程遠い感覚。
おかしい。美しくない。男性に好ましく思われない。

それでも……。それでも、私は自分の液晶に視線を落としきれない。
新着通知マークがずらりと並ぶメッセージアプリ画面の、どこか一か所。
触れれば、誰かと会話が始まって、この「おかしい」から解放されるのに。「今日も上司に叱られちゃった」と半泣きのスタンプや絵文字で表情を、
そう、いつもどおりの私を作ってしまえば――――

――――そこで思考が途切れて、咄嗟に息を飲んだ。

運転手のブレーキが生んだ慣性に逆らえず皆一緒に斜めへ傾いたから。
私も踏みとどまれなくて、傍の男性の腕に身体を押し付けてしまった。
……そう、押し付けてしまった。薄いブラウスの中でふぬりと形を変えて。

違うの、違うの。服に響かないソフトカップを選んでいるだけなの。
違うの、違うの。男の人に迷惑をかけてしまって申し訳ないの。
違うの、違うの。当たってしまったの。押し付けていないの。

だから、何もされていないのに膝をきつく閉じようとするのは……。

▲――腕の下は当然のように手があるはずだから?
■――身体の強張りを相手に伝えて、早く離れたいと焦っているから?

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これが白紙の値札。いつでも、もちろん0円でも構わないわ。ワタシの紡ぎに触れたあなたの価値観を知ることができたら、それで満足よ。大切なのは、戯れを愉しむこと。もしいただいたら、紡ぐ為の電気代と紙代と……そうね、珈琲代かしら。