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ゲンロン大森望SF創作講座第四期:第8回実作感想①

僕、遠野よあけはゲンロン大森望SF創作講座という小説スクールに通っていまして、そこでは毎月50枚程度の作品を提出することになっています。この記事では、そこで提出された作品への感想をつらつらと書いていきます。詳しい情報は下記サイトにて。

「ゲンロン大森望SF創作講座」
https://school.genron.co.jp/sf/

「第8回提出課題一覧」
課題:ファースト・コンタクト(最初の接触)
https://school.genron.co.jp/works/sf/2019/subjects/8/

前回の更新は第3回実作だったのに、文フリとかコミティアで本作ってる間にいつの間にか第8回に……。

僕も下記作品を提出しています。読んで頂けるとうれしいです。

00「十二所じあみ全集」遠野よあけ
https://school.genron.co.jp/works/sf/2019/students/yoakero/3888/
 謎の作家の全集をたまたま見つけた男が語る、奇妙な作家にまつわる物語です。奇書SF。読んで頂けるとうれしいです。原稿用紙40枚程。

 今回、日曜日に実施される受講生有志感想会で扱う作品を先に読みました。作品をちゃんと読めてない部分とかもあるかと思いますが(8作品精読は一日でできないので…)ご容赦を。あまり明晰に書けていない部分も多々あると思いますので、不明点などあれば感想会で訊いていただければと思います。あと今回、物語とか構造よりも、主に文章について書いていますが、時間がなくて全体像をうまく読み込めていないことと、単純に僕が文章に興味があるからです。ご容赦いただけると幸いです。

 以下、各作品の感想です。21作品(自作含む)あるので、記事は二つにわけています。 

というわけで、前半9作品の感想になります。

01「遭遇の路」松山徳子

https://school.genron.co.jp/works/sf/2019/students/tokuko55/3881/

 ミステリっぽい読み味でおもしろく読みました。
 気になったところを幾つか。
 主人公たちが「本機」「前機」と書かれていたのは少しよみにくかったです。字面がにているのと、キャラクターが薄い名前なので。梗概のような人名のほうが読みやすい気はしますが、それを避けるなら、「稼働知能」「停止知能」とか、何かもう少しイメージの強い記号的なネーミングのほうが読んでいる最中楽かなと思いました。まあ僕の例もあまりかっこよくないですが。
 ラストで前機が、人間(?)に出会うところは、知っているものに出会ったのだから、ファーストコンタクトとは少し違うような印象をもちました。普通に考えると、前機の起動実験が地上(あるいは宇宙ステーションとか)で行われたとき、人間に出会っているはずなので。
 

02「Di-mensions」中野伶理

https://school.genron.co.jp/works/sf/2019/students/msx001/3879/

 レイ・ヤムを登場してすぐにググりましたがネットにはいなかった。。笑
 梗概から舞台を過去に変えているのがすごいと思いました。あと文章の端々が、これどうやって書いてるのだろう?と気になりました(具体的には、ブルトンの外套の香りとかどうやって書くのか、とか。単純に僕はこういう文章の書き方がわからないので)。
 SFとしての面白さよりも、ある時代の青春物のような面白さを感じました。芸術、戦争、亡命、高次元から描かれる青春小説、というような。中野さんの小説はSF的な世界の秘密を明かすみたいなのより、こういった、ある人間の人生におけるひとつの記憶を描くのが上手いと感じます。
 ちょっと違和感を覚えたのは、タイトルやルビって英語だと思うのですが、これはドイツ語かフランス語にするべきとは思いました。どっちが最適か僕にはわからないですけど。 




03「きずひとつないせみのぬけがら」稲田一声

https://school.genron.co.jp/works/sf/2019/students/17plus1/3864/

 面白く読みました。そして稲田さんの文章や話って僕はあまり作り方わからないやつなので、実は感想とかを書くのが難しい……。面白かった、としか……(笑)
 でも中学一年で次元の話とか理解できるのはこいつすげえ、と思いました。ちょっとひっかかりました。でもそんな中学生も現実にいるはずですよね。
 あとは「外国のボードゲーム」という言葉の使い方が、やや唐突な印象を受けました。完全に主観なので、ほとんどの人は気にならないだろうし、たぶん作品の瑕疵にはなってないと思います。ただこの言葉は他の文章や話の展開とのつながりがわからなくて「作者が好きなものがでてきた」とか「最近ボードゲームの認知度が上がってきたから自然と出てきた」みたいな印象を感じて、作品外の世界を考えさせてしまう気がしました。かなり重箱の隅で恐縮ですが。僕も自信もって話せるわけじゃないんですけど、例えば幸村家の日本家屋にいるときの描写で「ふたりで遊んだ外国のボードゲームは最高だった」みたいに書くと違うような気がします。日本家屋で外国のボードゲームを遊ぶ情景が浮かんで、取り合わせの妙を感じるので。「ヒロシの持っていた外国のボードゲームが、どれも最高に面白かったからだ。」という一文が、説明観がつよい、みたいな話でもあるとは思うんですが。マジで重箱の隅で恐縮です。

04「宣誓、なかよくなりたい」藤琉

https://school.genron.co.jp/works/sf/2019/students/aphelion/3867/

 沈黙交易というモチーフは面白かったです。知らない言葉で、かつ好奇心を刺激されるやつですね。ただ、素朴に考えると「ファーストコンタクト」って交易以前に発生する気がするので、交易している話だと「ファーストコンタクト」感は薄くなっちゃってる気もしました。
 あとは細かい話ですが、全体的に文章がガチャガチャしている気がしました。具体的には、ニブの視点から話が始まるのに、次の章ではアトリ視点の文章が多い(視点が変わること自体はいいのですが、その切り替えがスムーズでない)、ニブの家族構成を理解するのに時間がかかる(アトリやサルリは、初出では「ニブの父アトリは」みたいな書き方をしたほうが読むときのストレスが減ると思いました)など。
 あと「アリトはサルリたちが野菜を育てる畑を作るべく、森の開墾に従事している。チェーンソーや鉈を使って汗をかくのが仕事だ。」は文の頭に主語が連続して読みにくいのと、「畑」はふつう「野菜を育てる」のでこの修飾は要らないと思うのと、「~べく、~している」って感覚的には意味がわかるのですが辞書的にはいまいちしっくりこない表現なので避けたほうが無難な気がしました。それとこれは僕に林業の知識がないから違和感を覚えるのかもしれませんが、チェーンソーを使ってる現場で鉈って使うのでしょうか?チェーンソーの数が働き手に対して少ないから鉈も使っているのかも、と思いましたが、読んでいてちょっと不思議に思いました。などを考えながら自分ならどう書くか考えてみたところ、「アリトは畑を増やすために森の開墾に従事している。作られた畑の世話はサルリたちが務めている。アリトの仕事は、チェーンソーを使って汗をかくことだ。」みたいな方が、僕としてはすっきりした文章になると感じました(これもそんなによい文章でもないですが…)。

05「雨滴」夢想真

https://school.genron.co.jp/works/sf/2019/students/dreamshin/3872/

 おお!夢想さん、実作初ですよね!ついに!
 冒頭の事故の謎とか、その後の展開とか、読みやすく且つ入っていきやすい感じがしました。作中にでてくる様々な要素の関連性や必然性はちょっとピンとこない(つまり思いついたアイデアを羅列しているように見えてしまう)のはちょっと勿体ない気もしました。でも逆に怪談はこういう手触りのほうがリアリティある気もしてきました。今。冒頭とオチも怪談っぽい雰囲気ですし。
 ファーストコンタクト感はよくわからなかった…


06「トライポフォビア」よよ

https://school.genron.co.jp/works/sf/2019/students/happanoko/3889/

 すみません、あまりよくわからなかったです……何が起こっているのか、うまく頭に入ってこなくて……読み込みが浅いということなので申し訳ないです。
 一行目の文章「起動していた機械音がとうとう停止した。」は少し気になりました。「音が起動した」とは言わないと思うので、意図がなければ避けたほうがよい表現かと思いました。特に一行目なので。「音が停止した」も個人的には変な感覚がしました。音楽プレイヤーを停止した、音が止まった、とかはしっくりくるのですが。でもたぶん辞書的な意味では「音が止まった」と同様に「音が停止した」もいけるのだと思います。おそらく僕の感覚的に「停止した」のニュアンスに「その場から動かない」みたいな空間的なイメージがあるせいで、空間を占有しない「音」に対して使うと違和感を覚えるのだと思います。細かい話で恐縮です。


07「〈死の王・アンブローズ〉雪原の魔界」渡邉清文

https://school.genron.co.jp/works/sf/2019/students/kiyo/3844/

 剣と魔法の世界で描かれるファーストコンタクトって、たぶん読んだことがなかったので興味深く読みました!でも結果としては普通のファンタジーで描かれる異質なものとの闘いの物語との差別化がいまいちわからなかったような気もします。
 ファンタジー世界を描く文章は安定していてすごいなと思いました。僕は苦手です。書き出しは、最初の段落で書かれている情景がかっこいいので、一文目はもう一段かっこよくできたような気がします。

08「こころの耳」揚羽はな

https://school.genron.co.jp/works/sf/2019/students/yamato2199/3899/

 タイトル、なんか、もっと、いい感じにした方がよい気はしました。「ぼくの心には耳がある」「こころの耳をすませば」「左心耳が揺れている」「ふるえる左心耳」とかなんか考えましたが難しいですね。
 するっと読めて、おもしろかったです。気になったところもひっかかったところも特には…。あと、二人の友人の片方が宇宙へ行くために離れ離れになる青春もの、ということで「ウは宇宙船のウ」を思い出しました。

■雑感
ちょっと駆け足で読んでしまったきらいがあり申し訳ないです。
ここまで読んだ感じでは、ファーストコンタクトみの強い作品は少ない印象がありました。もっと『未知との遭遇』とか『メッセージ』みたいな「や、やべー!」みたいな感じのはっちゃけたSFとか読んでみたいという気持ちが個人的にはあるので、残りの実作に期待です。

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