病気とわかってよかったこと

病気になってよかったことなんて一つもない。知らない方がよかった。知らなければそのまま普通に過ごせていたし、病院で時間もお金も使うことはなかったし、薬の副作用で何もできない、日々弱くなっていく、そんなこともなかったはずだ。

しかし、一つだけよかったことがある。突然、死を突きつけられたらどうだろう。例えば、事故により急死したら。感染症で数日で死を迎えたら。何も知らずに意識不明のまま、死んだら。いずれの場合も何もできない。だが、私は自分が病気であることを知らされた。副作用のせいで体が自由に動かせるわけではないから、旅行をしたり、遊びに出かけたりと、自分がしたいことを充分にできるわけではない。それでも、考えることはできる。これまでを振り返ることはできる。誰かに何かを残すことはできる。何かを伝えることはできる。事前予告されたわけだから、何かすることができるのである。

私の病は、抑えられるか抑えられないかの病である。薬が効き続ければ、いわゆる天寿を全うすることもできる。抑えられなければ、次の薬、次の薬と試し、効く薬がなくなれば、覚悟しなければならない。でも、今は薬が効いている。病気を抑えている。時間が長かったかどうかは結果的にしかわからないが、でも時は与えられた。すばらしいことだ。

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