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会いに行く

数週間前。ただでさえ憂鬱な月曜日の朝。
突然届いた、LINEのメッセージ。

友人が、永い眠りについたことを伝えるものだった。

文字を見て、意味がつかめなくて、多分、脳が認識を拒否した。たった数行のメッセージを読み取るのに15分。事務的に指先は動いて、教科書通りの言葉を綴った。「ご冥福をお祈りします。」…いや、そんなことじゃなくて…!!!

"彼女"とは、新卒で入った会社で出会った。母と同い年の大ベテランで、仕事にはとことん厳しかった。たくさん教えてもらって、叱られて、褒めてもらって、時々ケンカもして。同じ事務所で働いたのは5年だったけど、その後も含めてほぼ20年の付き合い。
最近は会うことは少なくなったけど、それでも定期的に連絡は取っていて、いつも笑って「元気でねー」って言い合ってたのに、さ。

連絡をくれたのは、彼女の娘のMちゃんだった。
何度もお家にお邪魔してて、Mちゃんとも仲良くしてもらってたから、忙しい中でまずは一報を送ってくれた。

その後も指先は勝手に動いた。何かできることあったら、私経由で連絡したほうがいい人がいたら対応するから言ってね。一人で抱えないで、周りに頼るんだよ。無理しないでちゃんと休むんだよ。
…自分のほうがMちゃんより幾分歳上(出会ったとき、Mちゃんはまだ高校生だった)なこともあってか、大人ぶった、それっぽい、でも空っぽな言葉ばかりが指先から飛んでいった。

いろいろあって、明日、ようやく彼女は空に昇る。お別れのセレモニーに向かう新幹線の中で、このnoteを書いているのだけど、まだ実感が無いのが正直なところだ。忙しない日々の中で、彼女との時間はいつの間にか非日常になってしまっていた。もうしばらくしたら、きっと思い出という過去に変わってしまうのだろう。

こんなことなら、いろんなことふっ飛ばして会いに行っとけば良かったなぁ。せめて、もうちょい頻繁に連絡取るんだった。話したいこと、聴いてほしいこと、山のように残ってるんだよ?そっちだって同じでしょ?油断してたね、ずっと会えなくても、そんな連絡しなくても、続いていくと思ってた、少なくともまだまだ先のことだと思ってた。

朗らかな、というよりは豪快なあなたの笑い声が、まだ隣に聴こえる気がするのに、ね。
もう、一緒に笑い転げることは叶わないんだね。

それでも。会いに行くよ、今から。
最期にちゃんとあなたの顔が見たいから。
声が届かなくても、温もりがなくても、まだそこにあなたがいるのなら、会いに行く。

あなたがいつも褒めてくれた笑顔は、今日は流石に見せられない気がするけど。そこはどうか許して。
空から見守ってて欲しい、なんて言わないよ。
私は私なりに、これからも日々を生きていく。
いつか、生まれ変わったあなたと、どこかですれ違ったなら面白いね。そんなバカみたいなことを、想いつつ。

今までありがとう。

yohko

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