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「在野研究ビギナーズ――勝手にはじめる研究生活」(荒木優太編、明石書房)

読了日: 2023/6/18

 日経書評でみて'ほしいものリスト'に登録していたのだと思う。そして吉川博満氏(「理不尽な進化」;とても興味深い良本でした)の寄稿があったので読んでみました。'在野研究'ということばは知らなかったですが、大いに興味ある分野です。
 普段読む本のなかで著者の肩書や所以はやや気になるところです。本書の企図は知りたい欲求や深堀のための発表などはアカデミズムの特権ではなく、一般に解放されているべきものであり、では如何にさまざまな'在野研究者'は各々の研究を勤しんでいるのかを具体例で示すものです。

 多くの執筆者は、現在の研究者スタンスを'在野'としておいているが、大学院(修士または博士)までの最終学歴をお持ちのようで、在学中にいったんは在朝(いわゆるアカデミズム路線)での研究者を検討したことはあるようです。それくらいの志をもたないと在朝/在野を問わず研究者としての仕事を継続しようとは(あまり)思わないかもしれない…。
 本書は3部構成になっているのですが、1~2部では日本のアカデミズム(主に大学)組織の課題を挙げ、海外との比較、唯一の生業としての研究者(研究業?)の厳しさをあらわしているように感じます。そのうえで、在朝/在野の丁端緒を比較したうえで、在野研究の在り方を紹介しているよう(所感)。
 より興味深く読めたのは第3部で、スタンスのありようは別として、学びの喜び、楽しみを続けたほうがいいという趣旨でした(のように読めました)。お勤め仕事であっても、そこでの学び・経験を喜びと感じられるならばそれもまた自身の人間形成の糧と大いになりうるものだし、いわゆる学問だけが学びではないわけで、斯様な立ち位置で研究者としての生き方を記しているように感じました。
 小生は知りたい欲求から本を読む程度で、研究者としての生業を所望してはいないけれど、そんな人間にも刺激になりうるものでした。

巻末「在野のための推薦本」も参考になりました。


(「理不尽な進化」は増補新版、そして文庫本として出ているのですね…おススメです)

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