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インバウンド市場の注力ターゲット調査2024:日本の観光業界における最新トレンドと課題

今回は株式会社リクルートのじゃらんリサーチセンター(JRC)が実施した「インバウンド市場の注力ターゲット調査2024」の結果が公表されました。この調査は、日本の観光業界におけるインバウンド戦略の最新動向を明らかにする重要な資料となっています。本稿では、調査の概要、主要な結果、そして具体的な取り組み事例について詳しく解説します。


引用元

以下から引用させていただきます!

https://jrc.jalan.net/wp-content/uploads/2023/06/release-inboundtarget.pdf

調査の概要と背景

本調査は、観光庁と日本政府観光局(JNTO)が2023年に策定した訪日マーケティング戦略を踏まえて実施されました。その目的は、全国の自治体やDMO(観光地域づくり法人)が注力するインバウンド市場のターゲットを可視化し、マーケティングリテラシーの向上と組織間連携の促進を図ることです。

調査期間は2023年11月27日から2024年2月29日まで。対象は登録DMO(広域連携DMO、地域連携DMO、地域DMO)および都道府県庁で、インターネットを通じたアンケート方式で実施されました。回答数は177(広域連携DMO:9、地域連携DMO・地域DMO:145、都道府県庁:23)となっています1

アンケート調査の主要結果

1. 注力市場

調査結果によると、インバウンドマーケットにおける注力市場のトップ3は以下の通りでした:

  1. 台湾

  2. オーストラリア

  3. アメリカ

これらの国々は前年の調査結果とほぼ変わらず、日本の観光業界が継続的に重視している市場であることがわかります1

2. インバウンド関連の主要課題

インバウンドに関連して現在感じている課題のトップ3は以下の通りです:

  1. 受け入れ整備(68.9%)

  2. 人手不足(65.5%)

  3. 誘客プロモーション(58.2%)

特筆すべきは、「受け入れ整備」が「人手不足」を上回っていることです。これは、2023年の訪日外客数が2500万人を超え、10月には2019年同月比で100%を超えるなど、インバウンド需要が急速に回復している一方で、地域側の受け入れ体制の構築が追いついていないことを示唆しています1

3. 地方誘客の重要性

調査では、地方部への誘客促進も重要なテーマとして浮かび上がりました。一人当たりの消費額や地方部宿泊数の向上につながる市場別のターゲット設定が注目されています。これは、インバウンド観光の経済効果を日本全体に広げる取り組みの一環と言えるでしょう2

具体的な取り組み事例

調査レポートでは、インバウンド受け入れ整備と人手不足の課題に取り組む具体的な事例も紹介されています。

1. 需要予測を活用したバス運行の最適化(神奈川県箱根町)

箱根登山バスでは、箱根DMOが提供する「HAKONE DMO Touch!」というスマートフォンアプリを活用しています。このアプリは、旅行者のアンケート結果や人流予測データ、交通情報などを提供し、バスの増便判断や運転手のシフト管理に役立てています。具体的には、来訪者が2万人以上と予測される日に8〜9日前から増便を決定するなど、効率的な運行管理を実現しています1

2. 多様な決済手段の導入(東京都有楽町)

ベーカリー「クニャーネの店 有楽町店」では、インバウンド客が全体の3割を占めています。この店舗では、60種類以上の決済手段に対応できる「Airペイ」を導入し、様々な国からの観光客のニーズに対応しています。キャッシュレス決済の普及により、言語の壁を越えてスムーズな取引が可能になっています1

3. 短時間勤務の導入による人材確保(岐阜県高山市)

岐阜県高山市では、宿泊施設の業務を細分化し、「プチ勤務」として地域内外から人材を募集しています。具体的には、以下の2つのアプローチを採用しています:

  1. 地域在住者向けに、フロント業務や料理の盛り付けなどを短時間勤務として切り出し

  2. 地域外の人材向けに、SNSマーケティングやWebデザインなどの専門業務をリモートワークで募集

これらの取り組みにより、主婦やシニア、UIターン者、さらには地域外の専門スキルを持つ人材の採用に成功しています1

結論

「インバウンド市場の注力ターゲット調査2024」は、日本の観光業界が直面する課題と、それに対する革新的な解決策を明らかにしています。特に、受け入れ整備と人手不足という2大課題に対して、テクノロジーの活用や柔軟な雇用形態の導入など、具体的かつ効果的な対策が講じられていることがわかります。

今後は、これらの先進的な取り組みをさらに広げていくとともに、デジタルツールの活用と人的サービスの高付加価値化を両立させることが重要になるでしょう。インバウンド市場の急速な回復に対応しつつ、持続可能な観光産業の発展を目指す日本の取り組みは、世界的にも注目される模範となる可能性を秘めています。

Citations:
1 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002538.000011414.html
2 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002538.000011414.html