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KとSって②Sのこと

先日、荻窪メリーゴーランドのKのことを書いた。
いろいろ滅裂だけど直してない…

あの文章を読んで荻メリの感想を話し合ったり、読んでみたいと言ってもらったり
したので書かないより書いてよかったなと思う。
恐ろしいのは別に文章に落としたところでKや自分のなかのKじみた部分と向き合うことはきっとこれからも続くこと。こわいこわい。
自分のことは③で書こうと思う。

今日はSのことを書く。
前回同様、大体前半からの引用になる。
Kは精神と人生が壊れていくのでわりと状況を知らせる歌が多いと思う。
でもSはずっっっと同じところにいるので、状況はあまり関係ない歌が多く前半も後半も関係ない気がする。

きみが見た夜がわたしのものになる口づけるとは渡しあうこと

この歌を怖いと思うのは何周目かを終えたからであって、べつに「知り合う」という歌としても成立する。
Sという人物を考えたときに、Sはこの瞬間「特別な契約」をして相手を麻痺させる毒かなんか入れてるんじゃないかと思う。
そうして、相手に「Sとオレは運命」病にさせて、果ては刺したり刺されたりするような人間に相手を変えていく。
変わってしまった要因のなかには男性陣の持つ性質もあったはずなので、わたしはKやFを被害者だとは思わない。目が合ったから犬を連れて帰るようなやつも、逃げ出したねこを追いかけるのに上着選ぶやつも元々ろくな奴じゃない。不運だったとは思うけど。

会ってすぐ次に会う約束をしてそれでも足りないような気がした
「足りない」。これがSという人物の核となる性質だと思う。この人は何かが欠けていて、自分でもそれを埋めたいと思っている。
だけどいつもうまくいかない。些細な違和感に耐えられず自分の世界に引き入れた相手を追い出してしまう。
わたしは人間に対して「なぜこういう人物になったのか」という、いわゆる成育歴が気になってしまう。
その人の言動から家族環境や友人関係などを想像する。そこには心理的プロが行う分析とは異なる、私独自の価値観や経験則がのっかる。
Sはふつうに愛着障害だと思う。基本的に不足感を感じている。根本の、両親との関係も気になるところ。ただ、ここで間違ってはいけないのは環境だけが要因ではないということ。
Sは両親(おそらく仮面夫婦、父親との関係は希薄)との相性がよくなかったと予想する。Sは実際かなり育てにくい子だったと思われるが、育てやすい子に擬態はできそうだとも思う。
他者が求めるものにうっすら答えることができるけど、じぶんが本当に何を望んでいるかはよくわかっていないのだと思う。
そしておそらく深い話の出来る友達もいない。
Sが恋愛や男性で自分の不足感を埋めることになるまでに、なにか衝撃的な体験をしたのではないかと思っている。
たとえば幼いときに自分の家ではない家庭の親密さを感じたり、もしかしたら教師と付き合ったり大人になってから不倫して偽の父性を植え付けられたりとか。
とにかく父性が怪しいと思っているが、これくらいしか考えられていない。
関係ないかもしれないけど、Sの親が作中に出てこないことが怖い。
息子の恋人に時間を割いて一緒にピザを食べたり、おかしくなってる息子を心配する親が出てこない。

わたしだけ結末を知っている本のどこまで話してしまえばいいの
火をつけてしまう以前の…p18
ふたりとも黙ってしまう…p20
この星の外に出てしまわないよう…p36

基本的にはしあわせな恋をしているはずの期間でも、Sはいつも「~してしまう」ことを案じている。
1回目に読んだ時から不安つよい人だな~とは思っていた。そして、世の中も自分もコントロールできないことをSは知っているのだと思った。
ほんとうはなにもかもうまくいかないこと、どうせこの人ともいつかダメになること、人間はSが求める深さでつながりあえないことをどこかで知っているか見ているかしていると思う。
知ってるけど諦められないから次を探す。
Sにとっては自分を埋めてくれる人を探すことがライフワークなので、全力で愛しているように見せかけていても、Kとは違って常に予備燃料がある。その底知れないエネルギーと「不要なもの(Kとか)を切る力」「不足への執着」が、最後にSだけが生き残る強さなのだと思う。
その「次」と出会った時の期待感だけがSが生きていられる理由なのかもしれない。
ああ、その期待感がスマホのあたたかさなのかな…

Sに終わりはないと思う。正しくは、Sから終わりにすることはない、かな。
Sよりも強いSが現れて、刺してもらえるといいねと思う。

夜の血に色はないのに血と雨が混ざるのを美しいと思った




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