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ペアルック

 まず最初に、郵便局へ向かう。比較的新しくできた郵便局で、若いお姉さんと眼鏡のおじさんがにこにこ立っている。私も愛想良くそこを通って、奥のATMで十万円下ろす。直接に財布に詰めて、長財布を膨らませる。また愛想良く受付を通り過ぎて自転車に跨る。それから、自転車を飛ばして隣駅のショッピングモールに入る。

 三階から回るのが私流だ。四階はフードコートだから行かない。最初に行くのは紀伊國屋書店。ここは店頭のハードカバーがいつも面白いのと、奥の方で文庫が大量におすすめされているのでそこから適当に二冊選ぶ。ざっと三千円ほど消費して、店を出る。

 その隣にLoftがあるから寄る。四月始まりのスケジュール帳が出ているので、無地の薄いピンク色のを手に取る。できるだけ小さい方がいいけど、ウィークリーのページがあるやつじゃないと嫌だ。結局毎年同じこれになる。

 コスメコーナーはよく行くけれどほとんど買うことはない。化粧を始めたての頃はいろんなコスメに興味を持っていたけれど、いろんなのを買ったって結局使わないから、リップくらいしか新しく買うことはなくなった。コスメを買う頻度が減ったから、その分良いものを買うようになった。だからロフトで買うのはネイルくらい。ネイルは適当に安いのをたくさん持っている。今日は何も買わなかった。冬のネイルは好きな色がたくさん揃っているから必要ない。

 それから、安い服屋がいくつかある。AmericanHolicとcocaでベルトとネックレスとトートバッグと、それからふわふわした白いセーターをひとつ買う。安いアクセサリーショップと安い服屋なら、服屋のほうが可愛いネックレスが売っている。

 一つ階を降りて、Oriental Trafficに入る。よく、靴は高いのを買いなさいと言われるんだけど、私の足は横が広くて、ここの靴が一番合っている気がする。安いし履きやすくて好きだ。七千円でグレーに金のラインの入ったスエード生地のショートブーツを買う。気分があがるからと言う理由で毎回箱も貰うんだけれど、我が家はそのせいで、私の靴箱で溢れている。

 雑貨屋にも少し寄る。絶対いらないけど、なんとなくお洒落なサングラスを買う。それから小さな水筒と、白地に小花の入ったスマホケースを買って、その場で付け替える。

 いつも寄っていたTOMMY HILFIGERを通り過ぎる。ちょっと、俯く。

 一階に降りて、natural beauty basicでスカートを二着とニットを一枚買う。ブルーのサテンのプリーツのやつと、表面がレースみたいになってる白いタイトのやつ。それから、形の良い深めのVネックの黄色いニット。店員さんが良い人で、何でも似合う似合うと言ってくれるから全部買ってしまった。お隣のgreen rabel relaxingで三万くらいの茶色いチェスターコートを買う。腰の位置が高いワンピースと、ついでにジャケットも買う。

 残りのお金で、FURLAの小さな鞄を買った。もうショッピングバックを持ち切れない。空いているドトールに入って四人席を占領する。NIKEの店が見える。ごついシューズはよく彼が欲しいと言っていたものだった。

 あれ、二万円くらいするんだよね。でもスポーティなペアルックばかりしていた私たちならきっと似合ってた。もう、NIKEのズボンもTOMMY HILFIGERのロゴTも、全部パジャマになってしまった。彼と出会う前の綺麗めファッションをすっかり揃えて、新しい冬を迎えた。どうやら私は彼がいなくても平気みたいだ。

 涙の滲んだ目を擦って、バイトの給料二ヶ月分の買い物を抱えて自転車を走らせた。

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