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深夜の独り言 32

一人で散歩をするのが好きです。誰かと歩くのもすごく楽しいけれど、一人もまた、違う楽しさがあるなぁと感じます。時間を忘れて寄り道をして、新しい店に出会ったり、綺麗な景色を見つけたり。心の中にたくさんの言葉が溢れては、溺れる。一人だからできる時間。

後期の履修を考え始めたら、なんと六限までみっちりの日があることが判明してしまって、塾のバイトが週に一度しか入れなくなりました。これでは貯金ができないので、新しいバイトを探し始めました。ケーキ屋さんに応募をして、面接の日程をいただいたところです。

ケーキ屋さん!なんて楽しそうな。なんて可愛らしい。実際がどうかはまだ知りませんが、小さい頃の夢にあがりそうな職種ですよね。モンブランを眺めながら仕事がしたい。

でも、初めての経験です。履歴書を書いていて、志望理由のところで、まあつまり、困ってしまったのです。なんて書いたらいいんだろう。

私は甘いものが大好きです。美味しいものを食べることがいちばんの幸せだと感じているし、甘いものがあれば嫌なことも忘れられるし、心が落ち着く。でも、甘いものが好きだから、なんて、ありきたりなつまらない理由で、採用してもらえるのでしょうか。

思えば、今まで面接は得意中の得意で、志望理由なんて欄いっぱいに書き尽くせるくらい思いついていたのです。それは、「夢」があるからでした。

高校受験の面接。教師になりたいので、教育実習の制度が充実した貴校がぴったりだと思いました。塾のバイトの面接。教師になるために、教えること、そして子どもたちとの関わり方を学び実践したいと思いました。自信満々に語りました。だって大人は「夢」を語る子どもが大好きでしょう。本当のことしか言ってないし、絶対受かると自信があった。

これまでの人生、教師にまっしぐらだったんです。そのための進路。そのためのバイト。一本道のど真ん中を堂々と歩いてきました。脇目もふらずに、胸を張って。

でも、私が今挑戦するのはケーキ屋さんです。教師なんて関係ありません。接客のスキルは身につくでしょうが、それ以外は大して役に立ちそうもありません。逆に、私が今までしてきたこともこの仕事に活かせそうにありません。完全な寄り道です。正直、びびりたおしてます。

実は友だちがパン屋のバイトを紹介してくれると言っていて、紹介なら楽でいいなと揺らいだのですが、やめました。一度全く新しい環境に身を投げてみたかったのと、やっぱりモンブランが諦められなかったからです。

まめまめしきものはまさなかりなむ。役に立たないものこそおもしろい。この寄り道で、私は、どんな景色を見られるのでしょうか。どんな新しいことが待っているのでしょうか。怖いけれど、楽しみです。まず、ケーキ屋さん、受かるといいな。


寄り道する夜に、



深夜の独り言。

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