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金とき
2021年4月3日 17:43
月夜の口紅 1/4 冬場は日が暮れるのが早い。住野くんが小さなあくびをして、もう外真っ暗じゃん、と呟いた。交換ノートを閉じて立ち上がる。「そろそろ昇降口閉まるから早く帰りなよ」 嫌がる住野くんを急かす。ボールペンを、かち、かち、かち。「わかったよ、帰ればいいんでしょ。帰るから怒らないでくださいよ」 住野くんは出していた筆箱と裏紙の束を鞄に詰め込んで、きいと音を立てながら椅子を引
2021年3月29日 17:24
月夜の口紅 2/4月夜の口紅 1/4 真っ暗な夜。風もなくて、雲が分厚くて、月は隠れて、じめじめした夜。汗が滲んでいく。 川へ行く道は足が覚えている。風が湿ってきた。セーラー服の襟は風になびいて、リボンがめくれ返って首をなぞる。 あれ、私、鞄はどうしたかな。授業のノートが詰まった学生鞄。今日習ったところを復習しなくちゃいけないのに。玄関に置いてきたんだっけ、それとも、走っている途中