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朝のお話です。 明るくて、希望に満ちているはずだけれど、実は暗い夜の続きで、いろんな気持ちが入り混じっているようです。
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2020年11月の記事一覧

記憶の欠片

記憶の欠片

 どくん、どくん、どくん…

 心臓の音がうるさい。それに合わせて全身が震える。頭がずきずきと痛い。

 薄目を開けると目の前は真っ赤に染まっていて、私の意識は遠のいていく。どくん、どくんと、血が流れ出る。指先が、ぴくりと動く。ふっと視界が途切れる。

「サチカ、サチカ」

目が覚めると、私は自分の布団で母に体を揺すられていた。

「ん…」

「早く起きなきゃ、遅刻するわよ」

 夢、だったのか。

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