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金とき
2020年10月29日 16:18
天井は墨のように黒く、どこまでも続いていた。だから、壁は存在しなかった。さらには、床も、地面も"ない"のだった。下を見れば漆黒の闇が溢れ、僕は虚空に"はりつけに"されている。真上の天井には弱々しい白い電球があって、僕をぼんやりと照らしていた。 正確には僕だけではなかった。首だけを動かして周りを見ると、遠い黒いもやの中に同じような体勢の「人間」を見て取れる。もっと遠くは闇に紛れてよく見えないが