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ローザンヌ

チューリッヒからローザンヌまで電車で2時間ちょっとの距離だった。電車は日本の電車なみに静かで振動がなく、空いていればパソコンで作業もできる。値段は片道約110フラン(約18,900円)と、距離との兼ね合いでは高いなと感じたけど、まあスイスなんだから仕方ない。

駅前のホテルを予約していたのだけど、そこにたどり着くまでの坂道のきつさに驚く。スーツケースを持って石畳の坂道を上るのは相当な力がいるのだ。日本だって坂道は至る所にあるけど、町の中心がこんな急斜面にあるというのはどういうわけなのだろう。坂道の多さでは香港といい勝負かもしれない。

ドイツ語圏のチューリッヒに対してローザンヌはフランス語圏である。そのせいか分からないけど、レストランで食べる食事はどれも美味しくて驚く。基本的に日本の外で食事をする際にはあまり味に期待しないほうがよいというのが自分の考え方だけど、ローザンヌでは良いほうに予想が外れた。

到着翌日に適当に入ったブラッスリーではブラータ・チーズ入りのサラダと野菜のラザニアをとったのだけど、どちらも味付けが繊細で大満足であった。特に、中がとろっとした乳白色のブラータ・チーズは本当においしい。

ブラータ・チーズ入りサラダ


値段はざっくりアメリカの50%増しくらいで、もはや日本と比較するのもばかばかしい高さだけど、せっかくなのであまり値段のことを考えずに食べることに専念する。ちなみにこっちで適当に入ったカフェでなんということのないカプチーノを一杯頼むと5フラン(約860円)する。日本円やカナダドルに換算して考えず、こっちではこういうものなんだと納得するしかない。

ローザンヌ大学で引き続き別の論文を発表する。新作を発表する際には色々と気を遣うのだけど、今回は知った顔ばかりなのでリラックスして発表できた。新作なので多くの課題があるけど、それをこれから数年かけて直していくのである。

スイスは国の規模の割に優秀なファイナンスの研究者が沢山いるのはうらやましい。金融が国の基盤の一つなので、その研究を盛んにおこなう基盤が関係者の努力で整えられたのだろう。例えば、自分の分野で最高の権威の一人であるピエール・コリン=デュフレーン教授はローザンヌ工科大の教授である。そのほかの教授陣もそうそうたる顔ぶれでミニ・ハーバード大学といってもいいかもしれない。

そういう教授陣を維持するために必要なのがアメリカ並みの待遇である。スイスの大学の待遇は一般的にさほど良くはないので、この差を埋めるのがUBS、クレディスイス等金融機関の寄付によって成立しているスイス・ファイナンス・インスティテュート(SFI)だ。こちらの先生はこの2か所から給料をもらえるため、優秀な人間がアメリカからどんどん帰ってくる仕組みになっている。もちろんSFIの維持には大変な努力が必要で、5年ごとの契約更改の度に実務家にも役立つ成果がきちっと出せているのか議論になるらしい。大学教授がスポンサーである銀行の行員向けの研修を行ったりして、ある程度お互いにメリットがある仕組みになるよう絶えず努力しているのである。

幸いなことにコリン=デュフレーン教授の時間が取れたので一緒に昼食をとる。知り合いの話によるとコリン=デュフレーン家はフランスでも有数の名門の家系とのことだが、彼は気さくな人柄で話題の引き出しが多くとても楽しかった。昼食はフランスの郷土料理ステーキ・タルタルがメニューにあったので試してみる。生の牛肉を細かく切ってスパイスと和えてあるので韓国のユッケのようなもの(?)だけど、味はとても美味しく結構な量があったにもかかわらず完食できた。

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