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ブロックチェーンは実用化レベルに達しているのか?

国光さんのこの投稿がFBのフィードに流れてきたのだが、否定的な意見が存在することに驚いた。

このスクリーンショットは、筆者が関わっているGlopaという会社のプロダクトであるブロックチェーン向けの広告サービスのバックエンドを転用して、Ethereumブロックチェーンのトランザクション全件をリアルタイムに可視化したものである。1分で約830件のトランザクションが発生している。(我が国が誇るMy Crypto Heroesが3位)

正直、このように仕組みで全件がトラックできてしまう時点で既存の情報システム総体と比較すれば、塵のようなものであることは事実である。ただし、例えば、1トランザクション平均で1万円が決済されるとすれば、100億円/日、3,000億円/月、3.65兆円規模を捌ける仕組みとなっていることもまた事実である。

脱線気味だが、象徴的な例を挙げよう。

現在、Ethereum上で取引所を除くアプリケーションで最大のトランザクション金額を得ているものはカジノ関連であるが、このFCKというカジノサービスで賭けられる金額は既に2億円/日を超えている。さらに言えば、トランザクション性能に勝るTRONやEOSの同セグメントアプリはEthereum上のものに対して数倍の流通金額となっており、ワンタイトルで、国内トップのモバイルアプリの売上を優に超えている状況である。

(ちなみにカジノとブロックチェーンとの相性は異常なほど高いのだが、その話は別の機会に譲る)

それでは何故にブロックチェーンが実用化されていないという話が出てくるのか。

シンプルな理由としては、そのトランザクション性能にある。

現状のEthereumの場合、1日100万件程度の処理が限界と思われる。100万件と言えば、大規模データ処理の場合、場合によっては1秒で消尽してしまう処理量である。その観点で言えば、使いものにならないという感想は妥当だろう。

ただしながら、誰も全データをブロックチェーン上に保存しろとは言っていない。決済などの肝になるトランザクションだけを保存するかたちにすれば十分実用になる規模であり、事実、(カジノはともかくとして)My Crypto Heroesはじめ様々なアプリがそれなりの規模のビジネスを実現することで証明しているわけである。

実用化されていない認知の原因は、ブロックチェーン界隈にもある。上記のような一部だけをブロックチェーン上で実装する方法論に対して、ほとんどのブロックチェーン信奉者は露骨に嫌な顔をするのだ。

なぜかと言えば、ともすれば、彼らが金科玉条のごとく掲げる概念に非中央集権改竄不能というものがあり、既存の情報処理の手法を少しでも混ぜ合わせた瞬間にその概念が破綻してしまうからだ。

余談であるが、個人的には、経済合理性の観点でも公共の福祉の観点でも非中央集権や改竄不能という特性は使いどころを間違えれば、無価値どころか有害とすら考えている。

象徴的な事件が発生したが、要は、非中央集権と改竄不能という特質が悪用された場合、技術的な解決手段は存在せず、中央集権の権化である各国や国際的な機関に捜査や解決を委ねるしかないという問題が顕在化したと理解すればいいと思う。

本論に戻そう。ブロックチェーンが実用段階に達していないという意見は、新興ブロックチェーンを推す勢力による、いわゆるポジショントークの色合いも強いとも見ている。

一つには「Ethereumとか既存のブロックチェーンは実用段階に達していないでしょう?だから我々のチェーンを使ってよ」という誘導。

もう一つは、R&Dコスト名目で多額の資金をICO等で集金した手前、R&D段階が簡単に終わっては困るし、実用化されたときに大した価値を産み出さないということが発覚したら困るという保身。

このような傾向は新興ブロックチェーンプロジェクトに関わらず、アプリケーションやサービスレイヤでも一般に見られるICOの弊害と筆者は見ている。

大型化の一途を辿ったICOの主な資金使途は技術開発であり、自ずとその開発の規模や範囲は広がり、開発期間は長期化する性向を持った。トークンエコノミーは車輪の再発明、複雑化、難解化を極め、ビジネスプロセスの全てをブロックチェーンでカバーしようとするものが多数で、社会実装からは遠ざかっていく傾向が見られた。

一方で、ブームの一巡により、トランザクションコストは落ち着きを見せ、シンプルかつ低廉な国際送金手段スマートコントラクトによるエスクロー取引のシームレス化ノンファンジブルトークン公開鍵認証基盤の普及といった、ブロックチェーンの基本的特性のビジネス活用はより現実的になっている。

また、ICOの上記のような問題点(だけではないが)を解消するかたちで、IEOという新しいトークンオファリングの手法も普及しつつある。IEOについては、詳しくは別途説明したいと思うが、信用のある実ビジネスを築いている企業にこそ好適なトークンオファリングの手法である。

やや散漫となったが、結論としては、実用化レベルに至っていない派の方々には、GitHubあたりを覗いて、簡単なdAppの一つも実装してみることをおすすめしたい。

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