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母親の不調㉖ ~どこまで本当のことを知りたいですか2

先生のご配慮で、先生たちが退室されても、その場でしばらく母親と
話ができました。
母親は
「なんで先に二人だけで話をされたの?
私が受けた説明と違うことを言われたの?」
と心配していたので、
「先生に、『抗がん剤が効いてなくて、癌が進行していることを
お母さんに伝えてもよいか』と確認をされたよ」
と説明したら、母親は「そうか」と納得していました。

しばらく話をして、妹と帰りました。
私はもうどうしようどうしようという気持ちでいっぱいで、
エレベーターから半泣き状態でしたが、妹は
「治療法があったからよかったやん。まだ次の抗がん剤が
効くかもしれへんのやから、大丈夫やん」
ととても冷静でした。

妹は、たぶん一般的に見て、少し変わっています。
母親の症状についても、今まで
「そんなのなんとかなるわ」
「薬飲んで寝たら治るから大丈夫」
などいうことを言うので、なんだか茶化されているような気がして、
いつも腹が立っていたのですが、
昨日はその変わっている思考に逆に救われました。

「薬が効いたらいいんやろ。大丈夫やわ、効くわ」
と言う妹に
「効かなかったらどうするの?今月持たないかもしれへんのに」
と私が半泣きでいうと
「それはその時に考えればいいやん。効くかもしれんのに、
いま考えても仕方ない」
という返事でした。
だんだん、確かにそうだな、という気持ちになってきて、
ほんの少しだけ気が楽になりました。

もともと私は、悪い方向へばかり考えてしまうタイプです。
それは、結果が最悪の状態だった時のダメージからガードしようと
する無意識の防御本能のようなものだと思うのですが、
精神的な疲弊が大きく、
どんな結果でも結局はかなりのダメージを受けてしまうのです。
今回、母親の不調によって、
〇日後に検査結果が出る、というようなことがずっと続いているので、
そのたびにいろいろ考えすぎて、精神的にボロボロになっています。
なので、私とは真逆の妹の考え方に、少し救われました。

次の治療法がないこと、急変の可能性があることは、
父親には伝えず、母親と同じ内容を伝えました。
父親は、キャパがとにかく小さいので、一人で抱えきれないと思ったからです
また、精神的に追い詰められて、母親に伝えてしまう可能性もあるので、
言わないほうが良いと妹と相談して決めました。

ただ私の中ではずっと迷いがあります。

今度の薬が効かなければ、次の治療法がなく、長くないかもしれない。
母親にそんな内容を今の時点で伝えることは、かなり酷なことだと思います。
病院で一人で過ごしている間、ずっと不安と心配で過ごさなくてはならないのはあまりにもつらいです。

ただ、万が一、抗がん剤が効かなかった場合、
まだ次の方法があり、治る可能性があると思っている母親に、
次の治療法がない、余命が数日かもしれない。
といきなり死刑宣告をすることとどちらが酷なのでしょうか。

先生の説明時に同席していた看護師さんから
「お母様は、娘さんから見て、すべてを知りたいと思われるタイプの方ですか?」と
尋ねられました。
でも私は答えられませんでした。
母親は
「私はもう覚悟はできているから、大丈夫」とよく言っていますが、
それが真の本心かなんて、私にもわからないのです。
娘に心配をかけないように、強がりを言っているだけかもしれません。
母親の本当の不安や心配など、理解できているわけがありません。

もちろん、本当のことを知りたいという気持ちは母親にあると思います。
ただ、それを抱えきれるかどうかの方が大事なのかなと思い、
今回はすべてを話すという選択はしませんでした。

父親は、母親が帰ってくると信じ込んでいて、
暑い中、母親に頼まれた花畑の世話を毎日しています。
そんな父親に、抗がん剤がだめだった時、いきなり母親の余命が短いことを伝えるのはダメージが大きすぎる気がしますが、
やはりすべてを話すということはできませんでした。




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