ほのくに百貨店跡地-百貨店の跡地が商業施設・公共施設だと、却って地価は下落する
さて、2020年3月、豊橋最後の百貨店『ほのくに百貨店(旧豊橋丸栄)』が閉店しました。現在、その跡地利用はまだ未定となっています。
さて、跡地利用はまだ発表されていないのですが、跡地活用について気になる論文があります。
政策研究大学院大学の柳澤拓道さんが発表された「地方都市における
大規模核店舗撤退・跡地利用の実態と周辺に及ぼす影響―百貨店の撤退を事例として―』という論文で、
2000年代初頭に全国各地から撤退した67の百貨店の跡地について、その後の利用形態別に周辺に及ぼす影響を統計的に考察した論文です。
百貨店の跡地に商業施設を入れると、更地のままより地価が下がる
結論から書きますと、
・大都市においては、跡地に商業施設が入った場合、約 6.2%の地価
上昇効果があった。また住宅施設が入った場合、約 4.1%の地価上昇効果があった。
・中小都市においては、跡地に商業施設が入った場合約 6.3%の地価下落効果があり、公共施設が入った場合約 4.8%の地価下落効果があった。
・公共複合施設が入った場合、中小都市においては有意にマイナスとなった。(中略)むしろ低未利用地時よりも悪化させる傾向にあることが分かっ
た。
つまり、『撤退した百貨店跡地に商業施設を入れても、それによって新陳代謝が起こって周辺地価が持ち直すのは大都市の話』、中小都市(人口50万以下)では、『百貨店の跡地に商業施設や公共施設が入ると却って地価が下落する』という指摘がされています。
シンプルに結論を引用すると
大都市おいては後継用途が決まると更地・空きビルの場合と比べて地価が
改善傾向にあるものの、中小都市においては後継用途が決まると更地・空きビルの場合と比べて地価が下落する傾向にある
興味深いのは、『跡地が更地や空きビルだった時より、商業施設が入ってからの方が地価を下落させる影響が大きくなる』という傾向が、統計的には見られるということです。
これは、論文中で、『跡地利用前の開発期待に比して、実際の跡地利用が、少なくとも周辺の商業地にとっては地価に反映されるような魅力を有していないことを示している』と、指摘されています。
ようするに、建つ前は色々妄想が膨らむけど、いざ、跡地が決まるとがっかりして却って地価が下落すると言う話ですね。
地価が上昇するケース
とはいうものの、『じゃあどうすればいいんだよ』ということで、百貨店の跡地利用として地価が上昇するケースはについてみてみると
更地を市民広場として活用している場合(沼津市、三原市)、市街地再開発事業が検討されている場合(長岡市)、ホテルに用途転換した場合(出雲市)
ということで、市民広場やホテルなど、『商業施設に拘らない用途転換』することで地価が上昇するケースが確認されています。
まとめ
さて、これを踏まえて論文中では手厳しい指摘がされています。
公共施設が入っても統計的には地価はかえって下落する傾向にあることから、中心市街地全体や、都市全体が衰退してしまうというイメージ論で、ヴィジョンや需要のない公共施設の取得(ハコモノ介入)をすることは慎重にならなければならない。暫定利用のときの方がかえって周辺地価が高いという例もあることから、地域の実情に応じて広場としての永続利用も検討する余地がある
まちづくりの現場では、「百貨店がなくなって寂しくなった」「まちの顔がなくなった」といった定性的な印象論から、地方公共団体による床取得などの政策介入をする事例も多い。しかし、本論文の分析結果にも表れているように、多くの施策介入は少なくとも周辺地価を改善することができていない厳しい現状がある。人口減少社会、超高齢化社会を迎えた今こそ、印象論によるまちづくりから脱却し、客観的なエビデンスと将来ヴィジョンに基づく都市経営としてのまちづくりが求められている。
と、あります。私も基本的には賛成です。
ほのくに百貨店の跡地がどのような施設になるのか、希望を持ちながらも見守っていきたいと思います。
今日の話はここまで。
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