令和6年能登半島地震1月8日11:00現在被害状況等について をよむ

令和6年1 月1 日16 時10 分石川県能登地方で発生した地震

https://www.bousai.go.jp/updates/r60101notojishin/r60101notojishin/pdf/r60101notojishin_06.pdf

はじめに

被災された方々へお見舞いを申し上げます。コロナ禍を超えて、SNSをはじめとしたインターネット上の情報に頼る人々が増えるようになりました。これは便利になったと同時に、誤った情報に振り回される可能性も示しています。

この記事は、私自身が平成28年熊本地震に被災し、その後できる範囲で被災地支援を続けている経験をふまえて、内閣府防災の情報を読みやすくしたものです。

情報の読み取りと解釈、つまり情報リテラシーを語るのは容易ですが、実際に使いこなすのは難しいものです。

被災地の地理的位置と人口

帝国書院  https://www.teikokushoin.co.jp/statistics/prefecture/detail/17/

主な被災地はこの地図の上部にある水色ないし薄青の市町です。ニュースでは、珠洲(すず)市、輪島市、能登町、穴水町、七尾市あたりが頻繁に扱われています。

震度7を記録したのが志賀町、震度6はが珠洲市・輪島市・穴水町・七尾市です。ですので、おおむね震度が特に強かった場所で被害が大きく、その場所をニュースが扱っていると考えてよいでしょう。

では、人口分布はどうなっているのでしょうか。こちらは内閣府がアップロードしている非常災害対策本部の情報には掲載されていないので、石川県の統計情報で補います。

令和5年12月1日現在、能登地区の人口は以下の通りです。
総数 166,257人(男 79,265人 女 86,992人)
世帯総数 69,805世帯
石川県の総人口が1,108,792人ですので、能登地方の人口は石川県全体の約15%ということになります。

つぎに、能登地方の年齢別人口です。こちらも石川県が公表している統計をみると、最新の情報が2022年(令和4年)1月1日のデータです。

2年前のデータだと少し古い気がするので、2025年の推計値を使います。出典は内閣府の地域経済分析システムRESASの「人口マップ」>「人口構成」です。このデータの出典は、総務省「人口推計」「国勢調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」です。

このままだとわかりにくいので、冒頭に示した内閣府防災の震度5強以上の自治体のリストに割り振ります。

おおよその数字ですが、震度6弱以上の自治体のうち、能登地方の人口は1/3で、その大半の自治体の高齢化率は30%以上という超高齢化自治体ということがわかります。

もちろん、能登半島地震の発災がお正月ということもあり、帰省者も多くいらしたでしょうが、政府や県は正確な数字を持っているので、それをもとに応急・復旧措置をすすめているのだと思います。

ちなみに、能登(半島)地方とは、石川県河北郡以北の12市町及び富山県氷見市の13市町(石川県地域は、七尾市、輪島市、珠洲市、羽咋市、かほく市、津幡町、内灘町、志賀町、宝達志水町、中能登町、穴水町、能登町)を指します。

もともと振興計画が策定されていたので、地震後の復興計画は、この振興計画にかぶせる形で策定されるのかなと思いました(熊本地震後の熊本市の復興計画と同様)。

被災者と避難所

石川県は能登方面への不要不急の外出を控えてほしいと訴えています。


石川県公式ウェブサイト


石川県が提示しているように、「人命救助、物資支援の優先のため」です。冒頭にあげた内閣府の情報12-13ページに「ライフラインの状況」として道路被害の情報が掲載されています。具体的には、

  1.  高速道路 1 路線3 区間で通行止め

  2.  直轄国道 1 路線1 区間で通行止め

  3.  補助国道 3 路線29 区間で通行止め

です。都市住民の方には理解しにくいかもしれませんが、中山間部の道路は整備が十分ではなく、幹線道路で交通事故が発生すると即交通渋滞になることが多いのです。つまり、先にあげたように、人口規模15万人程度の地域の主要幹線道路の多くが通行止めになっていることは、能登地方への道路は慢性的な渋滞になっていることを意味します。この渋滞のなかに、各避難所への支援物資を積んだトラックや復旧作業を行う自衛隊の車両が多く含まれているのです。

したがって、石川県は「能登方面への不要不急の外出を控えてほしい」と訴えなければならないのです。

また、義援物資についても、熊本地震以降、プッシュ型支援を行っているので、一般的に個人の方が持ち込む必要はありません。被災地の状況を聞き取らず、必要と思われる物資を被災地に送り続けています。

熊本地震のときには、当初情報共有が不十分で、物資の多い避難所と物資が足りない避難所の偏りがありました。しかし、後半になると、熊本市の場合、避難所に入っている行政職員の持つタブレットで物資の備蓄等に関する情報を共有していました。彼らが物資のばらつきを調整してくれていました。

ちなみに、避難者のなかには、行政職員への不満を口にする方もおられましたが、避難所運営の主体は住民です。行政職員は避難所運営のバックアップです。そして、バックアップしている行政職員も被災者であることが多いのです。

https://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/pdf/1604hinanjo_guideline.pdf

そのうえで、2024年1月9日現在の開設避難所情報です。珠洲市の避難者は5,454人となっていました。珠洲市民の推計値が11,329人なので、住民の約半数が避難所に身を寄せていることがわかります。

また、避難所開設情報のみで、避難世帯と避難者数をアップロードしていない自治体もあります。避難所運営者にその余裕がないのでしょう。

避難者総数について正確な数字はわかりませんが、1月4日の日テレNEWSでは3万4,000人と報道していました。

こうした状況をふまえ、1月9日、岸田首相は2次避難を指示したそうです。病気の方やお年寄り、妊婦など特に配慮が必要な方を最優先に他の地域(旅館やホテル)への避難を促進するとのことでした。

まとめ

このようにみてきたところ、発災から現在までの政府および石川県の対応は迅速かつ適切なものだと考えられます。もちろん、公的支援が行き届かず、現在も厳しい避難生活を送っておられる被災者もおられることでしょう。被災による精神的なショック等もあるとは思いますが、公的機関にアクセスして受けられる支援はすべて受け入れることをお勧めします。「まだ大丈夫」のうちに、受けられるだけの支援を受け入れ、元気になってから生活を再建するのも悪くないかもしれません。あなたが思うより世の中は悪いものではないと思います。

さいごに、弁護士の永野海先生の支援情報瓦版の転載します。




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