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『エルピス』が面白い。TVドラマとしての魅力。


今期観ているドラマは、『silent』と、この『エルピス』の2つです。
『silent』については何回も書いていますが、今回は『エルピス』の魅力について書きたいと思います。



『エルピス‐希望、あるいは災い‐』は、関テレ制作・フジテレビ系列で月曜夜10時から放送されているドラマ。
スキャンダルにより落ちぶれた女子アナと、お坊ちゃま気質の若手ディレクターが、とあることがきっかけで、冤罪事件の解決に奔走する社会派エンターテインメント。
実際に起きた冤罪事件や未解決事件をもとに描かれたフィクションで、少しずつ明るみになっていく真実が、見るものを夢中にさせます。

女子アナの浅川恵那役に長澤まさみさん。ディレクターの岸本拓朗役に真栄田郷敦さん。
2人ともめちゃくちゃハマり役です。

容姿端麗な浅川は、かつては局の看板ニュース番組を担当するエース的存在。
しかし熱愛スキャンダルを報じられるワキの甘さや、精神的な病を抱えるといった闇の部分を、上手く長澤まさみさんが演じられています。

対する岸本は、高学歴(たぶん慶応をイメージしている。確か小学校からの内部進学)でテレビ局就職など、一見高スペックに見えますが、中身は世間知らずのボンボンで、何事にも無気力。過保護な母親に見守られながらも、プライドはいっちょ前。
この温室育ちでちょっとうざい感じの演技が、めちゃくちゃハマっていると思います。
もちろんいい意味で。笑


そんな二人が、ぶつかりながらも難事件に向き合い、真実を追い求めていく姿だけでも十分面白いですし、推理的な要素もあって、取りつかれる視聴者が続出していると思いますが、このドラマの最大の魅力を簡潔に言うと、めちゃくちゃリアルだという事です。

いわゆるテレビ業界の裏側を描いているのですが、アナウンサーの人事、報道畑とバラエティー畑の対立、組織の腐敗、政治との癒着などがやけにリアルに描かれていて、正直、「え?ここまでやっていいの?笑」と思うくらい、テレビがテレビをイジっている感じなのです。

岸本がADとして担当し、浅川がワンコーナーに出演している「フライデーボンボン」という深夜バラエティの作りこみが秀逸。
空気感とか、タレントのノリとか、「うわ~、この感じ見たことあるわ~」「こんなタレントおるわ~」の連続。
この番組自体が、演者もスタッフも含めて、他の部署などで評価が低かった人や、問題を起こした人たちの流れ着く場所になっていて、実際の現場もそうなのかなと想像させてくれます。

テレビ業界が舞台のお話なので、業界の人しか分からない事ばっかりだと思いきや、決してそうでもありません。
下の者の意見が通りにくかったり、身勝手な上の判断に苦しめられたり、そういった日本の組織特有の”事なかれ主義”や、”出る杭は打たれる精神”に、職種や立場を問わず、人々の共感を生んでいるのだと思います。
正しいことは受け入れられない。トップにとっては、それが真実かどうかなんてどうでもいい。
全ては結局、組織を守るため、利権を守るための行動なのです。


このドラマを語る上でのポイントとして外せないのは、強力な制作陣です。

プロデューサーの佐野亜裕美さんは、TBS時代に『渡る世間は鬼ばかり』や『カルテット』を担当され、最近は『大豆田とわ子と三人の元夫』を手掛けられました。

脚本は渡辺あやさん。映画『ジョゼと虎と魚たち』や、朝ドラ『カーネーション』を書かれた方。京都大学がモチーフの、学生側と大学側の対立を描いた映画『ワンダーウォール』(これ面白かったです。Netfrixで見ました)など社会派な作品もいくつか発信されています。

演出は、『モテキ』(長澤まさみ最高。僕は麻生久美子派。)『バクマン。』などの大根仁さんなど。

エンディングの担当は、元テレ東のプロデューサーで、『ハイパーハードボイルドグルメリポート』(世界の発展途上国などを回り、ギャングやストリートチルドレンや売春婦などの食事風景をリポートする番組。Amazonとかでも見れます)を企画された上出遼平さん。

主題歌の担当は、『大豆田~』に引き続きトラックメーカーのSTUTSで、ボーカルにSuchmosのYONCEが起用されています(ちなみに映像と曲は、毎回変わるなどの工夫が施されています)。

めちゃくちゃ豪華すぎます。才能の結集です。
そういった背景を踏まえて観るとよりすごいドラマなんだと思わされます。

特に、佐野さんや上出さんなど、長年テレビを作ってきたテレビマンだからこそ思うメディアのあり方や、報道姿勢に対する疑問などが存分にぶつけられていて、考えさせられる部分がたくさんあります。
「正義のふりして、人の不幸を食い物にしていないか」
「わかりやすく、受けやすくするために印象操作していないか」
僕ら受け手も、そういった考えを持ってニュースに触れていきたいですね。

渡辺さん、上出さんの対談の記事が面白かったので載せておきます。



まあ、少し難しくなってしまいましたが、そんなことを考えなくても充分楽しめるドラマです。ハラハラする展開もあり、痛快なシーンもありと、最後まで目が離せません。

カメレオン俳優、鈴木亮平さんの演技も最高です。報道部のお偉いさん役なのですが、ビジュアルから雰囲気から全てにおいて絶妙です。
チーフプロデューサー・村井さん役の岡部たかしさんもすごすぎます。
大門副総理はもう、ねぇ。。あの人でしかないですもんね。笑


次回はついに最終回。どんな結末を迎えるのか。
なんかわからないですけど、どんなラストでも納得できる感じがあります。
とりあえず、楽しみ!



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