見出し画像

【シブヤノコレカラ#1】落書き消去からインクルーシブアートへ

森田ゆきが社会課題と向き合い、渋谷の街ではどんな解決方法が考えられるか、ゲストと共にトークする「シブヤノコレカラ」。月に2回、土曜の朝にインスタライブで配信しています。第1回目のテーマは「落書き消去からインクルーシブアートへ」。東京都議会議員 龍円あいりさんをゲストにお招きしました。

落書き消去が事業化!


消去前
アートワーク完成

森田:落書き消去は、もともとはオリンピックをきっかけに街をきれいにしようということで、2021年から3年計画で始まった事業です。

私は2019年5月に区議会議員になったのですが、その前から落書き消去の団体の立ち上げに携わっていました。議員になって最初の一般質問でも落書きについて質問させていただき、事業化できたのは大きな一歩だと思っています。

司会:確かに渋谷は落書きが多いイメージがありますが、どれくらい消されているんですか?

森田:2022年10月末の時点、2年間で535件、面積にして5669平米の落書きを消したという報告がありました。

司会:すごい量ですね。

森田:落書きは街に同化してしまうと気づきにくいのですが、意識すると実はたくさんあります。消すには労力も費用も掛かるので、とてもボランティアでできるようなことではないんです。予算がついたことは大きな成果ですね。

龍円あいりさんのインクルーシブ社会への思い


司会:ここでゲストの龍円あいりさんに来ていただきました。

森田:あいりさんは、渋谷区選出の都議会議員として活動をされています。都と渋谷区の連携予算で政策を実現するような場合もあり、一緒にいろいろと連携して活動しているパートナーのような方です。あいりさん、自己紹介をお願いします。

龍円議員(以下、龍円):まず議員になったきっかけをお話したいのですが、私にはダウン症の息子がいます。アメリカで出産して帰国した際に、スペシャルニーズの子どもたちに対する対応が、日本の福祉や教育の分野で30年40年遅れていることに気づきました。親として、よりインクルーシブな社会を次の世代に残したいと考えたのが議員になったきっかけです。

今回のテーマのインクルーシブアートについても、定期的に息子とワークショップに参加していて、アートとインクルーシブの親和性を感じ、政策に取り入れたいと考えていました。

一方で、森田さんからアートには落書きされにくくする力があるということも伺っていました。この2つが繋がって、都営バスの営業所の壁にインクルーシブアートで壁画を描こうというプロジェクトが始まったのです。対象となった壁には、200mにも渡る落書きがありました。

壁にアートを描く取り組みは他にもありますが、インクルーシブアートという形では全国初なのではと思います。

行政と民間の壁を越えたインクルーシブなプロジェクト


完成披露にて区長をはじめ来賓によるテープカットを開催

司会:プロジェクトはどのように進められたのですか?

森田:このプロジェクトに限らず、落書きを消すときには、どこの予算で消すかというのが重要になってきます。落書きのある場所が誰の土地なのかということなどを調べた上で、アプローチを考える必要があるんですね。今回の壁の場合、住所は渋谷区なのですが、土地は都のものでした。なので、渋谷区の予算で落書きを消すことはできません。その辺りをあいりさんに相談しながらやった1年でした。

司会:プロジェクトを進める上で、どんな苦労がありましたか?

龍円:対象となった壁は都営バス営業所のものだったので、東京都交通局の管轄でした。ところが、東京都交通局ではアートの支援はしていないので、落書きを消す予算は出せるけど、アートの方の支援までは難しいと。そこで今度は都の生活文化スポーツ局というところに行って、対象となりそうな助成金を探しました。無事助成金をいただけることになったのですが、上限があって100万円足りない。今度は渋谷区に掛け合って、予算を獲得することができました。

さらに、民間から渋谷区障害者団体連合会と一般社団法人CLEAN&ARTにもご協力いただきました。結局、行政の3つの部署を合わせて、5団体が関わるプロジェクトとなりました。おそらくこれは行政主導だとできなかったのではと思います。民間主導だからこそできたのだと思います。

住民の愛着がある壁は落書きされない


障がい者団体

司会:ただアートを描いただけではない、今回のプロジェクトのポイントはなんでしょうか。

龍円:今回のプロジェクトはたくさんの人が関わってつくったアートということに意味があります。落書きされる壁というのは、普段注目されない場所らしいんですね。落書きする人も、誰かが愛着を持っている場所は避けるそうです。ですので、できるだけ多くの多様な人に関わってもらうことを意識しました。外出しにくい子どもには、材料を送ってオンラインで繋いでアートをつくったり、小規模ながらもいろんな形でワークショップも16回開催しました。

普段社会的な活動に参加しにくい方も、自分の作品が壁に展示されることになって、「いつもは福祉のお世話になることが多い立場だけれども、自分が逆に社会に役立つことができて嬉しいんだ」という声をいただいたりもしましたね。たくさんの人の笑顔と繋がりが生まれたことが何よりもよかったと思います。

再発防止に向けて民間と行政で協力体制を

司会:今後もこうした活動は継続していくのでしょうか。

森田:はい、3年事業の予算の中でもやっていきたいと考えています。そのほかにも、たとえば障がい者の作品を仮囲いに描くといった取り組みもあります。これからも民間の方と連携してやっていきたいですね。

司会:ほかに今後の展開はどのように考えていらっしゃいますか?

森田:せっかく消しても、また再犯されて落書きされている場所もあるんですね。たとえば駐車場とかだと、営業中だと消すことができない。そのために、ますます落書きが増えて落書きスポットになってしまう。区の予算ではやりきれないところがあるので、こういったことを民間の方にもご理解いただき、協力体制を築いていきたいと思います。また、今回のような障がいの有無に関わらず参加できるアート活動も後押ししていくつもりです。

議員に直接悩みが届くプラットフォーム「isuues」に参加しています


司会:今後のほかの活動について教えてください。

森田:落書きや社会課題について、議員と区民がダイレクトに繋がることができるプラットフォーム「issues」に参加しています。渋谷の区議会議員では私を含め19名が参加しているので、ぜひ暮らしの悩みなどを投稿してもらえたらと思います。

次回は2月11日(土)朝 8:00から モーニングライブ!
テーマは、ローカルキャリアと経済が循環する仕組みづくり。障害の有無や年齢の問題、あるいは、何らかの事情で仕事がしにくい方も地域で働き、地域経済が循環するローカルキャリアシティの実現についてお話します。

今回のトークライブで話題となったインクルーシブアートの取り組みについては、こちらの記事もご覧ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?