見出し画像

【対談】 代々木公園泌尿器科 新井絢子院長 x 森田ゆき 男性はもちろん、女性も訪れやすい泌尿器科 

渋谷区内にも数軒しかない泌尿器科専門医院「代々木公園泌尿器科」。今回は更年期で起こる症状のひとつ、尿トラブルのお話を伺うために代々木公園泌尿器科の新井絢子院長にお話を伺いました。

一言に膀胱炎といっても内容はさまざま

森田:こちらの病院は2022年6月に開院されたと伺いました。泌尿で女性医師だというのは珍しい印象があります。なぜ泌尿器科専門の医院を代々木八幡でオープンしようと思ったのでしょうか?

新井院長:学生時代、実はできるだけ女性の少ない診療科へ行きたかったんです。消化器外科や脳外科も女性が少なかったのですが、泌尿器科に一番興味があったので専門としました。
一言に泌尿器科といってもカバーする領域は幅広く、手術はもちろん、がん治療、良性疾患、移植、救急外傷、透析、放射線治療もありやり甲斐があります。
大きい病院にいた頃は毎日のように手術の執刀をしていましたが、もっと身近な、手術をする病気ではないけれど、困っている症状を診るために開業をしました。尿漏れ、頻尿といった症状や女性の泌尿器科疾患をしっかりとフォローしていきたいと考えています。

森田:泌尿器科へ行くのは恥ずかしいという声も聞いたことがあるのですが、どういった症状で来院するケースが多いのでしょうか?更年期による尿漏れなどで受診される方もいますか?

新井院長:特に多いのは尿漏れと頻尿、あとは残尿感、膀胱炎といった症状の方がメインです。更年期の尿トラブルも診察します。
女性医師ということもあってか女性の患者さんが多く、通常の泌尿器科だと女性の割合が全体の3割ほどですが、当院は6割が女性の患者さんです。年齢層は、小さいお子さんから高齢の方まで幅広くいらっしゃいます。
中には膀胱炎と似た症状で来院し、検査をすると菌は無く、ただ過敏になっている場合もあります。
反対に、検査時に尿の出口を清潔にし、出始めの尿ではなく途中の採尿しないと、汚れも一緒に検査してしまい正しい結果が出ずに膀胱炎と診断されることも。もし膀胱炎を繰り返す場合は何か原因がないか調べた方がいいと思います。
膀胱炎が悪化すると発熱症状が出たり、膀胱から腎臓まで感染が広がり「腎盂腎炎(じんうじんえん)」という病気になってしまう可能性もあるので、治療はしっかり行う必要があります。

森田:10代女性の悩みだと、やはり膀胱炎が多いのでしょうか?

新井院長:そうですね。女性だと膀胱炎が多いです。セックスにともなう膀胱炎というのもあって、繰り返してしまい何度も抗生剤を飲んでいるケースもあります。排尿を我慢しすぎたり、摂取する水分量が少なかったり、原因はさまざまな上に、尿を溜め過ぎないようにする以外に予防法がないので、個々に気をつけるしかありません。
膀胱炎は抗生物質を処方して、それを指示通りに服用して治します。膀胱炎に繰り返し罹る方の中には抗生剤を服用しきらず、残ったものを次に症状が出たときに服用するという方もいるのですが、それは本当にやめた方がいいです。素人判断での服用は薬が効かなくなったりする原因でもあるので、都度受診をしてその症状に合った抗生剤を処方してもらってください。

尿トラブルがあっても快適に過ごすための工夫を

森田:先生のところには性感染症の患者さんは来ますか?

新井院長:はい。当院で診察をしているのは男性の性感染症になります。性感染症はHIVのように血液でわかるものもありますが、膣は婦人科の領域です。女性は下半身に3か所の出口があり泌尿器科、婦人科、外科(消化器外科、肛門科)と、どこのトラブルかわかりにくいですよね。

森田:わたしは、何歳になっても自分らしく生き生きと健康で生きられる社会を目指していて、その中で取り組みたい課題の一つに「更年期」があります。
女性だと骨盤底筋がゆるくなって尿漏れをしやすくなったり、男性の尿漏れも更年期によることがあると聞きます。こういった課題はデリケートな話ですが、ウェルビーングを考えた時、そこもしっかりと向き合って行政で取り組んでいきたいと考えています。
例えば男性がゴルフをしていて、力を入れた時に尿が出てしまうとか、排尿したけれど残尿感が強いといったことも更年期の一つと言われています。対策として70代の男性が生理用のパッドを使用しているという話もあるそうです。そうすると女性のお手洗いでは当たり前の汚物入れが、将来的には男性のお手洗いにもあった方がいいですね。大きな高齢者のおむつのようなものではなく、男性用の漏れ対策の商品の必要性も感じます。そういったサンプルを50代、60代で手に取る機会があるともっと早くから対策できると思うんです。女性は更年期=閉経というイメージですが、尿漏れも大きな変化ですよね。そのあたりの更年期対策を提案したいと思っています。
女性の尿漏れのきっかけはやはり更年期、あとは産後などでしょうか?

新井院長:そうですね、産後からずっと尿漏れはあったけれど、更年期になって初めて通院したという方もいらっしゃいます。体型の変化、ホルモンレベルの変化といった条件は産後も更年期も同じなので。10代、20代の若い子の中にも尿漏れで悩んでいる方もいます。尿トラブルは人と比較しづらいので気づかないことも多いのが難しいところです。
間に合わない、漏れてしまうのは恥ずかしいことだというのが前面にきてしまい、人に言えず隠して、受診ができないというケースもあります。
改善方法があることをみなさんに知ってほしいですが、気になったことがあったら、気軽に泌尿器科で診察を受けてほしいです。
骨盤底筋を鍛える体操の指導などもしているので、そういったものも活用していただけます。

森田:尿漏れパッドなどは市販でも売られていますが、先生はそういうものは薦められているんですか?

新井院長:薦めています。生理用ナプキンで代用はしないでくださいと伝えています。尿と経血は成分や粘度も違っているので、専用の商品を使った方がいいと考えています。サイズ展開もさまざまあり、男性にも女性にもサンプルはお渡ししています。

▲株式会社リブドゥコーポレーションからでている男性用尿漏れパッド。自社サイトで販売されている。

森田:そうすると街中に捨てる場所を用意する必要がありますね。恥ずかしいと思うと捨てられず持ち帰ることになると思うので、日常的に尿漏れパッドを使うことが受け入れられている社会になるといいですよね。今後災害時などにもストックが必要になってくる製品のひとつですよね。

新井院長:特に前立腺肥大症の症状の一部であるケースが多いのが男性の尿漏れです。排尿後に尿道(長さ30cmほど)に残ってしまった尿が出てくるので、コントロールがしにくく、薬での治療が効きにくいという特徴があります。
女性の方が、生理用ナプキンを使用してきているので尿漏れパッドへの抵抗も少なかったり、街中でのトイレの個室数や、スカートなど隠しやすい服装など、対応がしやすいという意味で、男性の尿漏れの方がシビアかもしれません。汚物入れはやはり課題ですね。

森田:今回お話を伺って、泌尿器科を受診するハードルが下がりました。何かあるとまず内科や、女性なら婦人科へ行っていたのですが、今後は尿まわりのことはまず泌尿器科を訪れようと思います。今日はありがとうございました。今後は“Femtech”、“Mentech”(注)についても紹介していく予定なので、また相談させてください。


(注)Femtech・Mentechとは:それぞれFemale(女性)とTechnology(テクノロジー)、Men(男性)Technology(テクノロジー)とをかけあわせた造語。それぞれの性が抱える健康の課題をテクノロジーで解決する商品(製品)やサービスのこと


新井絢子院長 略歴
代々木公園泌尿器科院長/医学博士
日本泌尿器科学会 泌尿器科専門医・指導医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
身体障害者福祉法第15条 指定医(膀胱または直腸機能障害の診断)
難病指定医

代々木公園泌尿器科
https://www.yoyogi-uro.com

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?