俳句04:「いつか咲くまで」30句
泡立てる卵に殺意一欠片
拝啓をつける間もなく花は葉に
長閑さとねむたさ混ぜる朝の匙
飛花落花誰も気づかぬ爪の色
花曇りマスカラを塗る誰のため
あの日々と違う香水すれ違う
木の芽時雁字搦めの日々だった
彷徨った如月声もあげず泣く
五月闇わたしを守る傘がない
蝉の声だけが聞こえる暗い部屋
ソーダ水飲み込む言いたいこと全部
塗りたくる苺ジャムまだ怒ってる
向日葵になりたい少し大きめの
この海は誰を救って生かすのか
砂の城攫われるのをただ見てた
キャミソール解ける雑な熱帯夜
若葉風揺れるカーテン微熱体
終バスに残暑と私だけが乗る
梨を剥く愛するという日々のこと
朝顔を枯らした姉が母になる
秋蛍呼吸は浅く道照らし
流れ星誰の願いも聞かないで
食卓に人参多めの復讐を
銀杏を避ける少女の綱渡り
草雲雀沈む夕日によよと泣く
雪まみれ虚ろな目には希死の影
凍える手ひとり温めひとり死ぬ
話すことないなセーターほつれてる
沈黙が答えだ雪はまだ降るな
青写真描けぬ日々の最の果て
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