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Road to Success... 2

CSMというロールの日本法人における立上げ
(と聞いて)Join してから3年経過しました。

振り返ると、これまでやってきたことの中で結構なリソースを割いてきた仕事は、いわゆるCSM(*)でなく別のところにあったのかもしれないな~と感じてます。
それでもやってきたことは「Customer Success」という軸が中心にあることは変わらないし、結構辛抱強くないとやっていけないようなものばかりでしたが、我ながらとてもいい経験をしてきたな~と実感しています。

*入社時の JD では High Touch にカテゴライズされたアカウントの CSM となっていて、自身のコミッション等に影響してくるのはこちらのカテゴリに属する顧客の指標ですが、訳あって実際は High Touch 以外のサブスクリプション契約のアカウント(企業規模はEnterpriseだけど Low Touchにセグメントされているところ)も含めやっており、Quaterly Business Review(QBR:WW の CS 組織のマネジメント層にレポートするミーティング)や日本の Forecast ではトラッキングの対象になるので、カバー範囲は結果的に広い(3桁まではいかないけど…くらいの数)です。

今回は、CSMではない違う部分の仕事で何をしてきたか?と、CSMというロールの部分でうまくいかなかったところ、うまくいったところもまとめてみました。
CSMとしてのロールの部分は、おそらく、サービスの初期の段階からサブスク、SaaS、Customer Success を最初から中心に据えて事業を立ち上げていったようなところでは問題になりそうもないですが、従来のビジネスの型ができていて、その成功体験がしっかり組織に定着しているようなところで、毛色の違う取り組みやチェンジマネジメントをしていくような役割の方々には共感いただけるかもしれません。。笑

※個人の見解としてみていただけたらうれしいです!
※結構長めです!


CSM ではない仕事とは?

こちらでも書いた通り、CSMというロールをSuccessさせるために必要な課題やタスクが諸々あったのですが、SaaSのバックグラウンドがあることや、入社当初の諸々の出来事がきっかけで、クラウドサービスのビジネス推進(?)という非公式・ローカルな役割がその中の一つにありました。
実際に、もともとの「CSM」というロールの推進よりもかなりのリソースを割いてやってきたので、社内でも自分がやっている仕事が CSM なのかクラウドビジネス推進なのか区別することもなく、「CSM」のロールとしてやっていると勘違いされていたかもしれないです。今でもどちらかというと、もともとの「CSM」というロールよりは、こちらの方がしっくりくるしアイデンティティを感じてたりします。

ビジネス推進というと、How to Sell の方に目が向きがちですが、How to Sellも含め、「Customer Journey の定義と Success のデリバリープロセスを考える」ことをミッションにやってきました。
「ビジネス推進」という軸では、まだまだ世の中の多くの理解は「売り方」や「売れること」にしか興味がない印象を受けるのですが、Customer Journey と Success のデリバリーは、How to Sell を突き詰めていくと結局無視できないです。

「Customer Journey の定義と Success のデリバリープロセスを考える」
今でこそこの一言にまとめることができますが、向かう方向を言語化できるようになるまでは色々とありました。外から色々学び、中で色々試したり考えたりする過程を経てミッションをブラッシュアップできたのかもしれないです。

やってきたことの諸々は次の章で説明しますが、なぜクラウドサービスのビジネス推進に関わってきたのか?と言えば、ずばり「サブスクリプション契約がとても少ない」からでした。。

当時、オンプレミスのサービスもサブスクリプション型に移行しつつありましたが、契約体形以外全くオンプレと変わりがないオンプレのサブスクリプションは、もはや「オンプレ(売り切り型)」の域を超えることがないものととらえられていました。
一方で、クラウドサービスの方はサブスクネイティブであり、CSM というロールは当初、こちらのサービスにあわせて立ち上がったという経緯があります。
CSMというロールの成り立ちから、クラウドのサブスクリプションの契約を伸ばさない限りそもそも CSM を採用する必要性がなく(既存のロールで十分まわしていける)、CSM の組織が日本のオフィスでスケールすることもなく、WW レベルで見ても Sales が(かなり)強い組織でもあるため Revenue に貢献できてナンボの世界でプレゼンスを示すこともできない。。

そんな課題感、使命感から関わってきたのが「クラウドビジネス推進」でした。

クラウドサービスのビジネス推進?という名の何か

「クラウドサービスのビジネス推進」という名のもと、やってきた諸々は以下の通りです。

● Product Management (PM)のチームとの連携
日本に PM 組織はなく、また、クラウドサービスは複数のマイクロサービスの集まりでもあるため、関わる PM はその分、そして複数の国にまたがっています。自分が Join する前は誰が PM かわからない・・・という状態でしたが、サービスと PM の関係がわかるディレクトリのような情報の共有から始め、Sales の支援、エスカレーション、PM による Internal 向けの製品トレーニングの企画運営、日本のお客様への訪問アレンジ etc... を通して関係性の構築をしてきました。

● ライセンスまわりのプロセス改善
契約に関わる部分だけでなく、機能のOn/Off(利用するOrgにおけるライセンスの有効化)に関わるところも複雑で、よくトラブルのもとになる部分でもありました。キッティングというほどではないですが、お客様の利用開始前に、ある程度製品とライセンス体系を理解している人の確認は必要なものでした。
そのため、利用開始まで、および、契約更新時の顧客体験の向上のためのオペレーション改善(複数部門を巻き込んだオペレーション)、PM へのエスカレーション、海外担当部門との連携、社内向けライセンスまわりのenablementなどを行ってきました。

● リリース関連
クラウドサービスはSaaS型での提供となるため、オンプレに比べてリリースの回数が多く、自動でバージョンアップが行われる(強制的に行われるとも言う・・・笑)のもあり、当初は、社内の人たちのバージョンアップのイベント自体の認知を高める必要がありました。
CSM という立場からも、特にメジャーリリースにおける機能やサービスの追加、変更に関わる情報提供は必要なため、社外の方々向けのイベントの企画運営、このイベント実施の定着化も行ってきました。
PM が開発のステータス等を共有する会議体への参加、必要に応じてローカルに共有することも…

● プラットフォーム関連
サービスにもよりますが、ミッションクリティカルな業務や処理が行われるようなプロダクトの場合、サービスの稼働状況やサービスレベルの保証、オペレーションや第三者による認証等はお客様も比較的しっかり見ますので、この辺の情報整理も重要です。非機能要件のチェックシート等の回答の作成はあまりPost Salesだと回ってこない仕事ではありますが、Pre Salesは当たり前のようにあります(公開しているドキュメントあるのに同じものを個別事項で回答しなきゃいけないとか面倒だなぁ・・って思うことも 笑)。この辺のお手伝いの他、サービスでコミットしているもの、稼働実績、メンテナンスの考え方やコミュニケーション etc... プラットフォームに関係する諸々の情報整理、社内外コミュニケーション、エスカレーションを行ってきました。
もちろん、大きなトラブルがあったときのフォローのコミュニケーションを考えるのもタスクの一つでした。。

● サービスのマイグレーション
サービスの仕様変更を伴う製品サービスのマイグレーション、データセンターの移行は、頻度は何年かに1回程度かもしれませんが、どのサービスでも発生しうるイベントの一つかと思います。
こちらは計画メンテナンス等とはまた違うイベントで、お客様へのインパクトも大きく、事前のコミュニケーションから事後のトラブル対応まで、非常にストレスフルなタスクでした。
今のところでは1度しか経験していませんが、できればあまりやりたくないですね・・・(とても勉強になりますけど 笑)

● オンラインコンテンツの翻訳
これは外資ならではのタスクですが、特に開発者研修や管理者研修のコンテンツが「日本語で存在すること」は日本のお客様のオンボーディングのためには欠かせないものです。
通常は、研修やエデュケーション担当がやる仕事なのですが、日本にはそのロールがないため部門の間に落ちていた仕事でした。
日本語話者の目を通さないと、例えば画面のどこのメニューの話をしているのか?がわからなくなるくらい言葉がずれていたり(訳し方としては正解であっても・・・)することもあり、海外メンバーにまかせておくとクオリティに問題が出ていたので関わることに。
色々見ていくと、そもそも製品の日本語がヘン・・・みたいなことにも出くわしたり、辞書DBのようなもの作らないとオペレーションが簡略化できない、そもそも翻訳にかかる予算をどこから捻出するか・・・?等の課題に出くわすと、組織やWWでの立ち位置等も何となく見えてきました。

他にも下記のようなことに関わってきました(詳細は割愛)。
● パッケージ型の導入サービス
● Reference関連
● 製品ロードマップ、機能のリクエスト、エスカレーション
● Salesサポート、パートナーとのコミュニケーション
● Renewal
● Customer Journey

CSM というロールでここまでやっている人はあまりいない(やっているとしたら、組織もビジネスも黎明期のフェーズで関わっている方かと思います)と思いますが、やってきたことを思い返すともはやCSMの枠を超えて「サービスマネージャー」や「PMM(Product Marketing Manager)」のような領域でもあるかなと感じています。

Partner との Retention Activity

まだとても小さな取り組みにすぎないような規模ではあるものの、個人的にガッツポーズしたいくらい達成感のある「CSM」としての仕事は、パートナーとの Retention Activity をプロセス化・定着化してきたことです。
外資系は特にパートナーチャネルでビジネスを展開していることが多く、Sales フェーズも含めパートナーとの協業をどのように進めていくか?は常に課題ですが、だいたいが「How to Sell」(スコープは導入まで)に終始しているところがほとんどかと思います。
CSM をしていてパートナーチャネルの顧客を抱えているとわかりますが、最終的にはパートナーでクローズしていても Lead の起源は別にあるとか、多数のステークホルダーの関与の度合い等 Opportunity の経緯は様々で、パートナーの関わり方も様々な顧客(ここではサービスを利用するエンドユーザーという定義)の Customer Success をマネージしていくことは簡単ではありません。そういったところまでチャネルセールスのような担当者がケアできない、そもそも誰がみていくのか?といった課題に出くわします。

更にサブスクネイティブではないが故の課題がこちらにもありました。
● まず、社内でも腹落ちしてくれていない「Retention Activity」の必要性の理解
● 必要性以前に「美味しいもの、役立つもの」だと認知してもらう必要がある
● そのためには収益につながるものだと見せることが近道だが、ちょっとやってすぐに大きな成果が見えるような施策ではない
● サブスクビジネスを鑑みると必要性は理解できるけど、カバーできそうな役割の人もいないし、どのくらい仕事が増えるのかわからない…

といったプッシュバックにどう返していくか?

日本でパートナーとの Customer Success が成功している例は非常に少ないと理解しているので、Retention Activity を定着化していくというミッションに挑むことはとても大きなチャレンジだと考えていました。

自分の場合、幸いにも Partner との Customer Success に興味関心を示してくれたパートナーセールスのマネージャーがいたため、進めていくことができそうなパートナーとのエンゲージは比較的すんなりできました。

抱えるサービスすべてを対象にするのではなく、まずは自分の得意分野のクラウドサービスから始めました。
パートナーにとってもクラウドサービスについては情報があまりないことから、情報提供をしつつ、エンドユーザーへの Retention Activity を進めていくことが互いにとって WinWin なところがあったかもしれません。
1年以上やってみたタイミングで効果の確認をしたところ、これまで見えてこなかった顧客の状況がわかるようになってよかったetc...、引き続き継続していきたいとフィードバックをいただけるようになりました。
更に、自分の熱が伝わったのか、パートナーのプリセールスの方からCustomer Success に関わっていきたい、できることがあれば協力したいと熱いメッセージを個別にいただいたり、、、

クラウドサービスのビジネス推進に比べたら割いているリソースはだいぶ少ないタスクではあったものの、CSMらしい仕事ができた事例の一つになったと思います。
小さいながらも一つ成功事例ができたことで、他のパートナーにも広げていこうという動きにもつながりました。

Partner Success という文脈の中に、パートナーの顧客の Customer Success の取り組みも、How to Sell 同様に位置づけられていくトレンドは今後広がっていくのかなと予測してます。
既に SIer として知られているような企業の中にも、Customer Success に真剣に取り組んでいこうと部署を立ち上げたり、専任を設けたりする動きも出てきていますしね。

実は、一緒にRetention Activity を進めていた上述のパートナーも、(この流れに乗ったのか定かではないですが)最近、Customer Success の専任チームを作った⁉ という話を聞き、Edge な流れに少なからず貢献することができたかもしれないです 笑

うまくいかなかったところ

色々な取り組みにより、入社した当時よりは、他部署のサブスクリプションビジネスへの理解も進み、Renewal や Retention Activity に関わるプロセスの定着化も、クラウドサービスの認知やサービスの向上も感じられるようになった反面、3年も経過したのに、CSMというロールの拡大まで及ばなかったのが残念な点ではあります。

拡大に至らなかったのは下記の要因があると理解しています。

● High Touch な Sales
CSM のようなロールの必要性を感じてくるのは、多くの組織で、Sales による High Touch な支援が行き届かなくなって、それが課題として表面化してくる局面かと思います。そのような点で考えると、まだ Sales だけで十分カバーできる数なのかもしれません。
自分も Sales がカバーしたいと抱えているもの、Sales がカバーできているものは確認程度の関与にとどめ、できていないところをカバーする形にしていたのもあり、アサインの数は多くても CSM というロール自体の負荷はそれほど高くありませんでした。そのため、CSM の人数を増やさないと…とならなかったのかと思います。

● Roles & Responsibilities、組織と立ち位置
High Touch な Sales とも関係しますが、日本の Sales は比較的売った後も関係性を築いていきたいというマインドの人が多く、この点においては海外のCS のマネジメントにもなかなか理解してもらえないほどでした(海外のSales と話すと、売った後に関与することは確実な Upsell や Cross Sell がない限りありえない・・って言われますが、この辺は日本の労働生産性が低いみたいなところとも関係するのでしょうか・・?)
そのため、CSM の JD で定義されていることを真面目にやると、多くのことが Sales と競合することになり、技術面のリソース、社内での声の大きさ etc... を考えると Sales 側で進める方がやりやすい面もあり、CSM というロールの普及につながらなかったと考えています。

ただ、多くの面で Sales が関与するモチベーションは、新たな Opportunity を得るための「顧客との接点」の創出あり、「ビジネス上の Success」に関与していくことに存在するわけではない、Opportunity につながらないと手薄になる、という課題もあります。
また、この部分に責任を持つ日本法人における「マネジメント」という立場の人はいない(というか、CSM はテクニカルサポートの一部とくくられてしまっている)ので、これらの要素も Roles & Responsibilities においては大いに影響していると感じてます。

● サブスクリプション契約のインパクト
High Touch な Sales で賄えてしまうのも、ビジネス上の Success が重要だというところ(そして、それを型化、モデル化して展開しやすくする・・・みたいなことを考えていく)が抜けてしまうのも、おそらくまだサブスクリプション契約のインパクトの実感がさほどない局面がゆえかもしれないとも感じています。
もともと Customer Success の組織がない企業が、Customer Success の機能を持たせるきっかけは、サブスクリプション契約のインパクトが事業に大いに影響する実感が感じられた時、例えば新規の売上の伸びが緩やかになってきた時や、新規の増加の割には全体の Revenue が伸び悩んでいることに課題を感じるような局面であることがほとんどかと思います。

そもそもサブスクリプション契約のインパクトが大きくなければ、、、

ということで、入社当時から課題感を持ってやってきたことは間違ってなかったのですが、自分の力だけでは及ばない部分もありました。
あと何年かすれば、顕在化してくるようなフェーズになるのかな・・・と考えています。

ようやく・・・

時に自分は何を成し遂げたかったのか?自問自答したり、CSM というロールの影響力のなさに落ち込む日々もありました。。。(遠い目)

紆余曲折、色々ありましたが、なんと今年の初めの日本オフィスの Kickoff では「カスタマーサクセス」を意識しようという言葉がようやく・・・全体向けのメッセージとして出てきました。
個人レベルでは共感してくれる方々もいる一方で、なかなかムーブメントにならない状態がもどかしかったのですが、言葉が出てくるようになっただけでも、入ったときよりは変わってきたのかもしれません。

サービスの主軸もクラウドに大きく舵を切り、ライセンスのモデルも大きく変わり、より Retention Activity が重要になるものへと変わってきましたので、それぞれのロールに求められるもの等も徐々に変わっていくのだろうな・・・と思います。



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CSM のロールを超えた役割もしながら、がむしゃらに3年ちょっとお世話になった現職を離れ、来月から新しい場でチャレンジをすることになりました。
これまでに経験ないくらいの数のお客様に対する Retention Activity がミッションになるのかな?と見ていますが、Customer Success の現場は聞いていることと実態が違うことや、聞いていることから見えないところも多々あることを経験してきたので、どんな試練が待ち受けているかわかりません・・・

自分がチェンジモンスターにならないように気をつけながら、チェンジマネジメントに引き続き関わっていこうと思います。
今後もとっても楽しみだ~!!(と、鼓舞しておく・・笑)



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