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海が私を嫌うのか、ビビりな私が悪いのか。

わたしと海というお題が上がっていたので、
海との美しい思い出を綴りたいと思ったが…。

どうにも苦々しい思い出しか浮かばない。

海好きなのに、縁がない。
そんな私の思い出をまとめてみた。

果たして海に好かれるのか、否か。


勝浦の海で「あいつ」に出会う

小学生の頃、家族で千葉県勝浦市の海へ行った。

足がつかない怖さと押し寄せる波。
海はプールとは違う。私はビビった。

が、順応性高き年齢のため
次第に海の怖さもなくなり、
波の動きにあわせてジャンプする遊びにハマった。

「そろそろ上がりなさい」という母の助言は無視し、
ひたすらぴょんぴょんとジャンプ。
すると、右ももに針で刺されたような強烈な痛みが走った。

そう、あいつです。
クラゲです。
酢の物によく入っている、コリっとした食感のやつ。
食べるとうまいが、刺されると痛い。

何時間も遊び惚けていた私に、
海が「そろそろやめときな」と釘ならぬ、クラゲで刺した。

海って怖いな
そんな記憶を植え付けた、痛い思い出。

クラゲに刺されたことありますか。

マリンスポーツに嫌われた?

クラゲに刺された子供は、なんだかんだで大人になり、
サイパンで、初のシュノーケリングに挑戦した。

しかし、どうやっても口に水が入る。
マウスピースを付けているのに、だ。
水が口に入るので、むせる。
水の中でむせるので、息ができない。
そして静かに一人でパニック!

救命胴衣を着けていたので、溺れることはないのだが、
息ができないという恐怖に、密やかにパニック!

結局、水に浮かんだままパクパクと口で息をして
水中眼鏡で海の中を覗いた。

魚はほとんどいなかった。
サイパンの海は冷たかった。

道の先に海が見えるとテンションが上がる

さらに数年後、
学習能力がないのか、無謀なのか、
カッコ良い!という理由だけで、サーフィンにトライした。

初心者向けの教室に入ったが、最初の難関が。

ウェットスーツが着られない。
ウェットがうっすらと濡れていたため、どうやっても腕が通らない。

更衣室にいた見知らぬ女性たちに
「えいや!」と
ウェットを引っ張ってもらい、何とか装着。

サーフィンをする体力はすでに失った。
もはや悪い予感しかしない。

予感は的中。
皆は次から次へとボードに立ち、波のりを楽しんでいたが、
私は立てない。

最後は先生に呼び出され、
浜でボードに寝そべる→立つという、イメトレを繰り返した。

「頭で考えるな、波を感じて立て!」
ブルース・リーの如く言われたが、浜で感じるのは虚しさだけ。

海に生身でぶつかるのは体力と気力がいる。
でも海が悪いってことじゃない。

ボードに立てたのは1回(2秒)のみ。奇跡でした。


エンジン付きならどうだ?

生身では勝ち目はない。
ならば、エンジンという文明の利器を使ってみよう。

よし、マリンジェットだ!
免許がないのでタンデムで。
風を切って水面を走る。かなり爽快。こりゃーいい。
ただ、スピードが出ると波にあたったときの衝撃が
体にダイレクトに伝わる。

全身に力を入れないと、振り落とされそうで怖い。

翌日、筋肉痛で動けなかった。

エンジン付きの乗り物に生身で乗ると、想像以上の負荷がかかる。
波の威力、舐めたらいかん!

ならば、もう少し大きな乗り物はどうだろう。
2級小型船舶免許を取りに行った。

いきなり免許?と思うだろうが、
何度かボートに乗る機会があり、
船上から眺める景色の美しさに心奪われ、いつか操船したいと企んでいた。

実技講習で苦労したのが、着岸。
波でゆらゆら船体が揺れる、
そもそもハンドルをどっちに切ればいいのかわからない。
講師のおじさんに「クルマと一緒だよ!」と切れ気味に言われた。
「わたし、クルマの免許ないのです」
「…、はい、練習!」
特訓のおかげで、免許取得。

しかし。
自分の操船するボートに誰が乗るんだ?
そもそも人の命を預かれるのか?
というビビり特有の疑問が渦巻き…

そして時は流れ…
現在、免許失効中。

海は全然悪くない。

海から街を見るって素敵よ

生身で海と向き合ってみた

そしてさらに年月が過ぎ、
中年となった私は、沖縄の座間味島へ行くことに。

座間味島はダイビングで有名だが、そこはスルー。
海水浴を楽しむことにした。

フェリーはいいね

一緒に旅した彼は、日本各地の島で暮らしたことのある
海に好かれている人だ。

そんな彼がシュノーケリングをしたいと言い出した。
マジか…。よみがえる、冷たいサイパンの海。

「シュノーケルは口から水が入るから怖い。だからやらない」

「マウスピースを歯でぐっと噛めば大丈夫だよ」

え、今なんと? 
噛めばいいと?

確かに、歯でマウスピースをしっかりと固定すれば、
隙間ができにくい=水が入らない。
冷静に考えればわかることじゃないか。
なぜ知らなかった私。

よし、ならば、生身で座間味の海に向き合おう。
マウスピースを歯でぐっと固定して、いざ海へ。

少し進んだ。
口から水も入ってこない。
お、意外といけるかも?
ああ、小さな魚が泳いでいる!
ちょっと心に余裕が生まれた。

が、しばらくすると
スーハ―、スーハ―という自分の呼吸が気になってきた。
自分から発している音なのに、意識した途端に不安になる。
口に水が入ったら、どうしよう。怖い!

怖さがでたら、アウト!
いつものパニックに襲われ、浜へ逆戻り。

またダメだったか…情けない…。

遠くで彼が叫んでいる
「ウミガメがいるよ!」
「おーい、ウミガメだよ。早くおいで!」

…ウミガメ、見たい。
…でも怖い。

「早くしないと、行っちゃうよ!」
と彼は何度も呼ぶ。

ウミガメがいることはわかっている。
見たい気持ちも十分にある。
でも、怖いんです。
なんかスーハ―が怖いんです。

「何やってんの、早く!」。

いいのか、自分。
ビビりなままでいいのか。
ウミガメを見ずに帰るのか。

いや、ダメだ。
これは行かねば!
マウスピースを噛みしめて、再び海へ。

スーハ―、スーハ―、が聞こえる。
徐々に足がつかなくなる。

前へ前へ。
スーハ―、スーハ―。

怖くない、怖くない。
いける、いける。

彼が水中を指さしている。
その先に、いた!

ウミガメが海中を歩いている。
のったりと歩く。

ああ、怖かったけど
ここまで来られて良かった!

ウミガメがスーッと
水面へと上がってきた。
私も合わせて水面へ上がる。

ウミガメが水面から顔を出し、
小さな鼻から息を吸う。
私もゆっくり呼吸をする。

ウミガメと目があった。

とても美しい瞬間だった。

ウミガメは再び水中へと潜り、
ゆらゆらと泳いでいった。


ウミガメのおかげで、海との距離が縮まった。

幼い頃から海に翻弄されてきた、と思っていたが

海は何ひとつ変わってなくて
私がひとりで怖い怖いとビビっていただけ。

怖さから少し離れてみたら、素敵なご褒美をくれる。

サーフィンのブルース・リー先生は
「海は怖い。それでいいんです。怖さを忘れないで楽しんで」
と言っていた。

海は怖い。でも、優しい。
1ミリも悪くないんだ。

夕暮れの海は落ち着くね


#わたしと海


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