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銭湯日記♨️あたり湯さん(大森町)歌謡曲の流れる銭湯

大森町の商店街を西に向かって、抜けた先に東邦医大がある横っちょあたりにあるあたり湯さん。
看板デザインがちょっと見ない八角形をあしらった感じで、素敵だなあと思いながら暖簾をくぐると、懐かしい空気が漂うフロントが出迎えてくれます。

脱衣所に移動すると、これまた懐かしい空気感。お風呂場も何とも郷愁を感じる。これ、何故かと言うと、有線放送がまあまあな音量で流れているからなんです。

BGMを流しているお風呂屋さんは初めてではないけれど、ここまでズドンと歌謡曲セレクションのお店はまだ出会ったことがなくて、何だかキュンキュンきてしまいます。

以前、数年前にこのお店にはじめて伺った時、女湯にはお客さんが他に誰もいらっしゃらなくて、「おお!貸切湯」と興奮して浴槽を矢継ぎ早に変わってみたり、ややはしゃいでお湯を楽しんだあと、メインの大きな浴槽で全身を伸ばしお湯の温かさを感じながら伸びていたら、有線放送で松山千春さんの「恋」が流れ始めました。

物を知らないので、この「恋」という曲を私が初めて聴いたのは、会社の人たちと飲み会の後行ったカラオケで先輩が歌った時でした。

余談ですがその先輩は男性なのにやたら色気のある歌い方をする人で、「あのエロさはどこから来るんだ」と真面目に研究したことがあります。結論、歌い始めの単語の頭に小さい「ん」をつけると色っぽく聞こえるかも!と思いつき、意気揚々と帰宅して自宅のお風呂に入ってる時に試してみたところ、狭い浴室いっぱいに楽しげな水前寺清子のモノマネ(しかも似てない)が響きました。

閑話休題。
そんなふうにカラオケがお上手な先輩が聴かせてくれた歌なので、もちろん歌詞も沁み入り、「いい曲だなー」と私の中に記憶されました。サイトのパスワードや来週の予定や会議の内容など、大抵のことは忘れてしまう私ですが、こういう人生にどうでもいい小さいことはなぜか覚えていることが多いです。

6畳一間のアパートに同棲していた男女がずるずると関係を続けて、彼は彼女の優しさに甘え、彼女は彼の強さに期待してきたけど、この関係に終止符を打とうと行動するのはいつも女。畳にのの字を書きながら帰らぬ男を待ち、そんな自分に嫌気がさして、今まで何回も終わりにしようとしてきたけど、後ろ髪を引かれるのもいつも女。(個人の解釈です)

的な情景を思い浮かべながら入浴していたら、いつのまにか曲に合わせて歌っている自分に気付きましたが、女湯に自分しかいない解放感も手伝って、徐々に声を張って松山千春さんとデュエットを始め、気づいたら浴室内に朗々と響き渡る声で熱唱していました。天井が高いからいい感じにエコーが効いて、自分が歌ウマになった錯覚を覚えました。何これ、気持ちいい!!もちろん歌詞もうろ覚えなので、わからないところはふにゃふにゃ歌ってます。でもプロの歌手気取り。歌詞覚えてないけど。プロ失格。

2番のサビに入り、存在しないマイクを両手で握りしめ、歌い上げようとしたその瞬間。(念のため確認しておきますが、この時私は全裸です)

男湯から桶の音がしました。

………

誰かいるーーーー!!!

その後、無言ダッシュで身体を拭いて脱衣所に駆け込んだのは言うまでもありません。

恥ずかしさに縮こまりつつ身体をタオルで拭きながら、歌声喫茶があるんだから、かかってる曲に合わせてお客さんが自由に歌える歌声銭湯ががあってもいいのになあ、と考えていました。

コロナ禍を経た今、室内で多くの人数が話したりするのはタブーになってしまい、銭湯でも黙浴が奨励されています。でも、いつか世界がコロナから解放されたら、入浴しながらお客さんが自由に歌える歌声銭湯ができたらいいなあと妄想しています。

こないだ久しぶりにあたり湯さんに伺った時は、
「酒と泪と男と女」河島英五
「PRIDE」今井美樹
「負けないで」ZARD
「嫁に来ないか」新沼謙治
を堪能しました。幅広い年代にアピールするセットリストです。

やっぱり音楽を聴きながら入れるお風呂っていいな。

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