マッピングエクスペリエンス読書メモ
読んだのでメモ。
この本では「アラインメントダイアグラム」と呼ばれる個人の体験と組織の提供物、またそれを生み出すためのプロセスの接点を結びつけて可視化する手法について書かれている。
まず、これを作る目的は「部署や役割を越えた対話を引き出すこと」である。何かの課題に対する解決策を直接見つけ出すためのフレームワークではない。
アラインメントダイアグラムは特定の部署や役割の単位でなく、ユーザーストーリーベースで提供する機能やプロセスについて書き出していくため、広く全体のプロセスを俯瞰することができる。これが部署や役割を越えた対話を引き出すことを可能にする。
アラインメントダイアグラムには色々な種類があるが、どれも基本的に「価値中心デザイン」のアプローチを取っている。
価値中心デザインとは「個人と組織の間の理想的なインタラクションと、そのインタラクションによって個人と組織がそれぞれに手にする効用とを伝える物語を生み出すもの」と書かれている。「個人」と「組織」の接点を「インタラクション」で結びつけ可視化することがアラインメントダイアグラムの基本である。
イメージしやすいユースケースだと複数の部署なり組織(会社とか)なりが関わる複雑で面倒な事務手続き、例えばネットワーク回線のオプションがどうとかもろもろの名義変更がどうとかの体験を改善するために問題を可視化するのとかが思いつく。
いくつか大事そうなダイアグラムについて書き出す。
- サービスブループリント
本で紹介されている中では最も歴史の古いダイアグラム。個人の行動、組織のプロセス、インタラクションを別々に同じ一本の時系列にそって書く。
- カスタマージャーニーマップ
個人が組織のユーザーとして体験する事柄を時系列で図示したもの。ユーザーが製品の購入、利用、得意客になる。といった選択、決断に関わる時に使われる。
後に出てくるエクスペリエンスマップと似てる。大きな違いは「組織のユーザー」と組織のインタラクションを図示するものであるということ。
- メンタルモデルダイアグラム
人の言動、感情、動機を広く対話するために使われる。
- エクスペリエンスマップ
所定の分野や領域での個人の体験を時系列で図示したもの。カスタマージャーニーマップと違い、組織のことはまず考えずあくまでも「所定の分野や領域」に焦点を当てて図示する。その後に組織がどう関わることができるのかを考える。
個人の感想として、カスタマージャーニーマップは既存の提供物、プロセスの改善を目的に作成され、エクスペリエンスマップは0->1の新しい提供物、プロセスを生み出すことを目的に作成されるのではないかと思った。
個人の「体験」とはそもそも何かというと
- 体験は総体的なものである
体験はある時間中の言動、思考、感情を含む総体的なものである。
- 体験は個人的なものである
体験はあるサービスの客観的な性質ではなく、個人の主観的な認識である。
- 体験はコンテキストに依存する
ジェットコースターが好きな人でも満腹の時にジェットコースターに乗りたいとはあまり思わない。
これらを踏まえた上でエクスペリエンスマップとカスタマージャーニーマップは「焦点を絞る」ことが大事である。絞らないと無限に内容が発散する。
「何についてのダイアグラムか?」に一言で答えられることが重要である。
個人と組織の接点にはMoT(Moments of Truth)、すなわち決定的瞬間が存在する。これは個人と組織との特殊な接点で、個人に何らかの感情を湧き上がらせる。きわめて重要なインタラクションの発生源である。
一例として物販のMoTが挙げられている。以下の通りである。
- 刺激
消費者の目に製品が触れられたとき
- 第一のMoT
消費者がその製品を購入したとき
- 第二のMoT
消費者がその製品を初めて使ったとき
加えて、GoogleはZMoTというものを定義している。ZはZeroの頭文字で、刺激と第一のMoTの間に存在する。具体的には製品を購入する前に口コミなどの情報を収集しているときである。
MoTの他に、個人の視点に立って価値を探すのに良いのがJTBD(Jobs to be Done)である。過去に書いた記事で説明しているので詳細は省く。
エクスペリエンスマップと関連して上記のJTBDを把握するためのジョブマップというものもある。これは一つの片付けるべきジョブを以下のステップに従って書き出したものである。
- 定義
目標を定め、その仕事をやり遂げるためのアプローチを立案、計画する段階
- 探索
作業を始める前に、情報や道具や材料など必要な資源を探し出して手に入れ、集める段階
- 準備
作業環境を整え、情報や道具や材料などの資源を整理調整する段階
- 確認
環境と資源の準備が整ったことを確認する段階
- 実行
計画通りに作業を進める段階(ここが最も重要とのこと)
- 監視
作業を進めつつ、その成否を評価する段階
- 修正
修正や変更を加えた上で作業を反復する段階
- 完了
全てのアクションを完了し、仕上げをする段階
ただ、枠組みは柔軟に修正してもよいとのこと。これらのステップのうち、どれかを解決するためのアイデアを考えることが新しい課題解決に繋がるとのこと。例えば、ナイキはジョギングの時間、距離などをiPodに送信するセンサーを組み込んだランニングシューズを提供し、ユーザーが「監視」の段階を解決することを支援している。
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