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データドリブンの意思決定をする前に、「意思決定プロセスの変革」を実感として持っていることが大切、という話。

実は、今年中にデータ活用関連の事業立ち上げを構想しておりまして、データサイエンスを網羅的に調査・学習しています。

学生時代に Python での画像解析の経験はあるものの、業務として携わった経験はないため、ビジネスにおけるデータサイエンスって何だろう、という漠然としたところから調べています。

今回は、Harvard Business Review の記事を電子書籍化した『1000兆円超の潜在価値を持つデータドリブン経営の本質』という書籍から得た学びと、実体験との結びつきに関するお話です。


データドリブンであるということ

「データドリブンな意思決定をする」とは、データに基づいて意思決定を下すことです。

これだけでは説明になっていないため、もう少しブレイクダウンして説明してみます。

まず、データに依拠する意思決定プロセスには2つのプロセスがあります。
データインフォームドとデータドリブンと呼ばれるものです。

2つの意思決定プロセスの違いを端的に表すとするならば、意思決定の主体が「ヒト」なのか、「データ」なのか、です。

データインフォームドの場合、意思決定に寄与する一つのパラメータとしてデータがあり、実際に意思決定を行う際にはデータに加えて、データだけでは説明しきれない専門知識や経験を以て意思決定を行います。

一方、データドリブンの場合はデータ分析の結果で意思決定を下すことであり、意思決定にヒトが介在する余地を挟みません。

データインフォームドと対比するのであれば、データドリブンとはデータだけでは説明しきれない変数が与える影響を許容した上で、データが示した結果に従う、トップダウンの意思決定プロセス、と言うことができると思います。

データドリブンであるためには実体験が必要不可欠

さて、先日『1000兆円超の潜在価値を持つデータドリブン経営の本質』という本を拝読しました。

その本には、データドリブン経営の本質について以下のことが書かれていました。

データドリブン経営の本質は全従業員の働き方や意思決定の方法を変えるという「全社改革である」。

『1000兆円超の潜在価値を持つデータドリブン経営の本質』

理屈としては先に述べた通りで、事業立ち上げに伴って色々調査した結果から、「データドリブン」に対するイメージは頭の中に構築されつつありました。

しかし、これからデータ活用関連事業を立ち上げ、日本社会のデータサイエンス業界にメスと入れようとしている私自身が、一個人としてデータドリブンな思考プロセスを理解できていなかった、という現実に直面しました。

データと結果(実績)は切り分けて考える

過去に本業で経験した仕事の話なのですが、5年ほどの長期の構想で最適な運用体制の構築と業務の内製化を支援するプロジェクトでした。

私は立ち上げ初年度の中盤から参画したのですが、参画後すぐに次フェーズに向けた課題整理と打ち手の実行に関するタスクフォースが立ち上がりました。

複数あるタスクフォースの中で私が参画したタスクフォースのミッションは、最適な運用体制を構築する上で運用の中での品質のブレを最小化するための基準を策定することでした。

基準策定に伴って、立ち上げから蓄積したナレッジ及び業務に関するデータを活用して品質に影響を与えるキーファクターを抽出するタスクがありました。

目指しているゴールは、「キーファクターを抽出して策定した基準で過去実績を評価した結果、過去と同程度の品質を担保できること」でした。

この「キーファクターを抽出して基準を策定する」ということが私個人としては非常にやっかいで、何がやっかいだったかというと、無意識のうちに「過去の実績を正とするための基準をつくる」方に意識が向いてしまう、という点です。

過去のデータを整理する段階では、データそのものとその結果としての実績がどうであったかは切り分けて考えるべきなのですが、思索しているうちにデータと実績が入り混じってしまう癖があることに気がつきました。

データ分析を通じて新しいなにかを創造する立場の人間であるならば、データ(ファクトと読み替えてもいいかもしれません)とその先の結果は切り分けて考える思考の癖を身につけておく必要があります。

データドリブンを組織全体に浸透させるということ

さて、前述の続きの話になりますが、私が基準策定のタスクフォースに参画する前に次フェーズの体制変更を検討するタスクフォースがありました。

実際の提案活動には参画していないため、チームで検討した体制ベースでの話になることを予めご了承いただければと思います。

チームで提案した体制は業務の性質に応じて体制を組みなおすといった主旨であり、新体制におけるチームの中には、策定した基準にしたがって業務を行うチームがありました。

これまで属人性が高かった業務を、基準にしたがって業務を行うルールに変えること、体制変更に伴って業務フローが変わること、が大きな変更になります。

私は、データ活用の本質はここにあると思っていて、どういうことかというと、データ分析そのものがデータ活用がしたいことではなく、データを分析した結果、従来とは変わったことを組織全体に習慣化させることである、ということです。

『1000兆円超の潜在価値を持つデータドリブン経営の本質』で述べられている「データドリブン経営とは、全社改革である」とは、こういうことを意味しているのだろうな、と思っています。

データドリブンであるということ:再考

一個人として、データドリブンを頭で考えることと、当事者として実体験すること、その変化を受け入れることとの間には大きな隔たりがあるということを、経験しました。

私は、本格的な事業展開の前に「データ活用を推進しようとしている事業体と、旧来プロセスに従った意思決定を行おうとしている個人としての矛盾」を経験できたため幸運でしたが、仮にこの経験がなかった場合、非常に危ない橋を渡るところだったなと思います。

「データドリブンである」ということは、「データに基づいて意思決定を下すこと」というのは冒頭に述べた通りです。

しかし、データドリブンの本質は、データドリブンな意思決定をしたその先の組織変革にも腰を据えて向き合う覚悟を持つ、ということであると個人的には思います。


▼今回紹介した本
タイトル:1000兆円超の潜在価値を持つデータドリブン経営の本質
著者:黒川 通彦 ,平山 智晴 ,櫻井 康彰
発行所:ダイヤモンド社

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