この「免疫逃避」パンデミックの結末は明るいものではない、と、私は一体何度言わなくてはならないのだろう。

Dr. Geert Vanden Bossche 2023年9月19日投稿
How many more times will I have to tell you that this ‘immune escape’ pandemic will not have a happy ending?
の翻訳です。原文を参照の上ご利用ください。

現在流行している変異株の奇妙さと感染性の高さから、疑問が投げかけられている。現在、急激な勢いで新たな変異株が次々と出現している(例えば、FL.1.5.1、BA.2.86、EG.5)。これらは系統学的な関係を共有しながらも、抗原的に以前のものとは大きく異なってきており、もはや単なる変異株ではなく、異なる血清型と考えるべきである。

変異探索家により同定され、分子疫学者により確認された変異は、もはや明確に定義されたスパイク関連ドメインには収束していない。ウイルス固有の感染力を増強する突然変異が現在盛んに起こっており、互いに競い合っているようである。このことは、ウイルスの進化動態を駆動しているものが、もはやウイルスの感染力に対する「集団」免疫選択圧力ではないことを示唆している。

ウイルスの感染力に対する免疫選択圧力がない状況で、非常に感染性の高い変異株が循環しているため、さらに高いレベルのウイルス固有の感染力を付与する自然発生突然変異を組み込んだ変異株が出現する可能性が、現在、より高くなっている。なぜなら、より感染力の高いウイルスほど、より多く複製するため、そのような、より高い感染力を持つ変異株が、既存の系統や感染性の低い子孫株よりも競争上優位に立つ可能性が高くなるからである。選択的免疫圧力による制約がない場合、感染力を着実に増加させた変異株はCOVID-19ワクチン接種者間での無症状での伝搬率を上げ、優位を争う可能性がある。

公衆衛生当局は、集団レベルの免疫適応のダイナミクスを十分に理解していないため、いくつかの理由から、現在の進化をそれほど脅威とは考えていない:

  • ワクチン接種者の抗体は、多少効果は低下するものの、新たに出現した変異体——非常に感染性が高いものであっても——を生体内で効果的に中和する能力があると誤って信じられている (https://www.trialsitenews.com/a/all-that-glitters-is-not-gold-d3e60bc1またはhttps://www.voiceforscienceandsolidarity.org/scientific-blog/all-that-glitters-is-not-gold和訳))。

  • 入院率および罹患率は徐々に増加しているが、入院のほとんどは主にSARS-CoV-2を伴うものであり、SARS-CoV-2が直接の原因ではない。

  • ワクチン接種、未接種を問わず、軽度から中等度のCOVID-19症例が、ますます稀になってきている。

  • ウイルスの感染伝搬率は増加しているが、オミクロンやその初期の変異株が最初に流行した時期よりは低くとどまっている。

より感染性の高いオミクロン由来の系統が広がった結果、スパイクタンパク質のN末端ドメイン内の高度に保存された抗原部位に対する、変異株非特異的非中和性抗S抗体(つまり「多反応性」非中和抗体;PNNAbs)の結合が減少していることを認識している人はほとんどいないようだ。この抗原部位は、上気道を監視する遊走性樹状細胞に付着した子孫ウィルス粒子のスパイクタンパク質の表面に露出している。この結合の低下により、遠隔臓器におけるウイルスのトランス感染の抑制が不完全となり、ウイルス感染宿主細胞の細胞間トランス融合につながる可能性がある。(https://www.trialsitenews.com/a/how-has-the-covid-19-mass-vaccination-campaign-made-the-natural-selection-and-rapid-propagation-of-a-highly-virulent-variant-highly-likely-44952cc7).

SARS-CoV-2感染細胞のトランス融合はウイルス病原性の高さの指標であり、臨床的には重症あるいは全身性のCOVID-19疾患として現れる。ウイルスのトランス感染力に対して、多反応性非中和抗体を介して不十分な免疫圧力をおよぼす集団の一部が特定の閾値を超えると、その部分集団に代表される集団全体が、集団としてこの形質に対して免疫選択圧力をかけるようになる。そうなれば、このような免疫選択圧力をおよぼしている集団(すなわち、高率にCOVID-19ワクチン接種を受けた集団)に感染した場合に、高い感染力と高いトランス感染力(すなわち、病原性の増強)の両方を示す新しい変異株の自然選択と拡大は避けられない。

オミクロンは中和抗体の感染抑制作用に抵抗し、SARS-CoV-2の感染力に対する集団レベルの免疫選択圧力をSARS-CoV-2のトランス感染力に対する集団レベルの免疫選択圧力へと方向転換させた。 私が "Highly Virulent Omicron descendants "の頭文字をとって "Hi-Vi-Cron(ヒビクロン)"と名付けた新規の(o型糖鎖化)変異株は、多反応性非中和抗体をウイルス感染力を増幅するために利用しながら、同時に、多反応性非中和抗体のトランス感染抑制効果に抵抗する能力を持つかもしれない(https://www.voiceforscienceandsolidarity.org/scientific-blog/predictions-gvb-on-evolution-c-19-pandemic (和訳))。このウイルス感染力の増大と病原性の増強は、免疫再集中による宿主の免疫反応の適応の促進ではなく、超急性の全身性COVID-19疾患につながる可能性が高い(著書”The Unescapable Immune Escape Pandemic”; drgeert.com邦訳「回避不能な免疫逃避パンデミック」で説明した)。

急性自己限定感染を引き起こすウイルス(例えばSARS-CoV-2)のパンデミック時に行われた集団ワクチン接種が、免疫学的にどのような結果をもたらすかを理解することは不可欠である。オミクロンの出現は、集団免疫を発達させる機会を失うという取り返しのつかない事態を引き起こし、それどころか、集団ワクチン接種は、世界人口をモルモットにした、前例のない、生命を脅かす「機能獲得」実験となった。オミクロンが夜盗のように現れたように、ヒビクロンもまた社会を驚かせるだろう。

複雑な生物学的動態を予測するには、その場しのぎのデータや過去の観察から推定するのではなく、これらの動態の基本的な原因や、今後発表されるデータや観察結果との整合性を科学的に厳密に分析する必要がある。現在進行中の免疫逃避パンデミックに関して言えば、主要な生物学的パターンは、集団ワクチン接種によって刷り込まれた集団レベルの免疫反応に合わせて形成され、再形成された、ウイルスの進化動態に支配されている。これらのウイルス進化動態は誤った方向に始まったため(免疫応答は理想的にはウイルスに適応すべきであり、その逆ではない!)、自然は現在、集団から、誤った免疫適応をすべて排除する必要に迫られている。しかし、このシナリオでは、ワクチン接種を受けた多くの人々(すなわち、この誤った免疫の刷り込みだけに依存するようになる形でワクチン接種を受けた人々)は、まったく無防備な状態になる。これでは、集団免疫が達成される前に、死亡率が著しく上昇しないわけがない。しかし、集団ワクチン接種によって間接的に生じた免疫抑制や免疫関連の病態による被接種者の過剰死亡率がさらに増加する方が先かもしれない (https://www.voiceforscienceandsolidarity.org/scientific-blog/immunological-correlates-of-vaccine-breakthrough-infections-caused-by-sars-cov-2-variants-in-highly-c-xx-vaccinated-populations)。

このシナリオは、COVID-19ワクチン接種率の高い集団が現在、(ウイルスの病原性に対して)およぼしている集団免疫圧力を、(主にワクチン未接種者がもたらす)最適で殺菌的な[(訳注)ウイルスを排除するような]集団免疫の状態に変えるために、自然が採用できる唯一の手段を示している。

入院率や死亡率の上昇は、COVID-19ワクチン接種率の高い国々の医療・葬儀システムを急速に疲弊させる可能性がある。従って、ワクチン未接種の健康な人は、いつでもどこでも、このようなシナリオが発生した場合に支援できるよう準備しておくことを強く勧める。

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