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彼らが集団免疫と集団免疫圧力の違いを理解してくれさえすれば……

Dr. Geert Vanden Bossche 2023年12月6日投稿(substack),12月5日(VOICES FOR SCIENCE AND SOLIDARITY)
Ah, if only they understood the difference between herd immunity and herd immune pressure…..
の翻訳です。原文を参照の上ご利用ください。

多くの専門家や公衆衛生当局は、ウイルス感染に対する集団免疫と、ウイルス感染性に対する集団免疫圧力の違いを明確に理解していないようだ。真の集団免疫がないため、SARS-CoV-2(SC-2)はまだエンデミックにはなっていない、ということは極めて重要である。

学術界を含む科学界で、高率にCovid-19( C-19)ワクチン接種を行った集団は、「ハイブリッド」免疫によってSC-2に対する集団免疫を獲得し、ウイルスはエンデミック化したという考えが広まっていることには違和感を覚える。このハイブリッド免疫という概念は、C-19集団ワクチン接種が、どのようにしてオミクロン変異株の優勢化に貢献し、その結果、ワクチン・ブレークスルー感染の急増を引き起こしたかということに対する誤解の産物である。このワクチン・ブレークスルー感染は免疫再集中に始まる一連の事象を引き起こした。この事象は最初は広範な中和抗体を生み出した。(詳細は私の著書「回避不能な免疫逃避パンデミックThe inescapable immune escape pandemic’」を参考にされたい。mRNAワクチンはワクチン・ブレークスルー感染なしでもそのような広範性中和抗体を誘発し得る。)

不幸な事に、公衆衛生当局や、いわゆる「専門家」は免疫再集中が、どのようにして中和能力の不十分な(suboptimal)広範な交差反応性抗体をプライミングするかを理解していない。彼らは、観察されたウイルス排出の減少と(重症の)C-19疾患からの防御は、感染によってプライミングされた抗体とワクチン抗体の魔法のようなブレンド(いわゆる「ハイブリッド」免疫)のおかげだと誤って理由づけている。

一部の(多くの?)科学者、ワクチン専門家、そして、進化生物学者でさえ、より感染性の高い免疫逃避変異株の発生が継続しているのは、単にウイルスが集団免疫を克服しようとしているためであると信じていることも、同様に、驚くべきことである。この考え方は、集団免疫の定義そのものに矛盾する。集団免疫とは、殺菌免疫によって、集団レベルでウイルス伝播を抑制する能力のことである。集団免疫は、感染性ウイルスが存在しない状態で、中和抗体が、集団的に、完全な中和能力に達した場合にのみ獲得される。急性自己限定性ウイルス感染の典型的なパンデミックで免疫逃避変異株が自然発生しないのはこの理由による。殆どのウイルス負荷(ウイルス感染細胞)が、中和抗体が増加する前に排除されてしまうためである。

現在のC-19パンデミックは、集団は高率にワクチン接種され、免疫逃避変異株の継続的な猛攻撃に直面し、私が「免疫逃避パンデミック」と呼んでいる事態に至っている。新たな免疫逃避変異株の進化の状況は、ウイルスは自然消滅するとうそぶく輩の言うこととは反対のことを示している。変異株のスパイクタンパク質を用いた更新型ワクチンは、増加したウイルスの感染性を制御することはもちろん、緩和することに対してもますます無効となってきている。ウイルスの感染性は、もはや変異株由来のスパイク特異抗体では「中和」できないメカニズムによって決定されているからである。

ウイルス感染性に対する免疫選択圧力が、変異株非特異的なスパイクタンパク質のエピトープやスパイクタンパク質以外の領域へとますます標的を変えつつあるため、現在流行している免疫逃避変異株は、多様な、通常余り観察されない感染増強性変異を示している。(例えば、スパイクタンパク質とACE2受容体の接触や、RBD(受容体結合ドメイン)とACE2受容体の相互作用を増強するスパイク関連変異や、IgG4抗体によるオプソニン化を阻害するスパイク関連N型糖鎖変異。ウイルスタンパクの産生効率や細胞内でのウイルス複製を増加させるスパイク以外のウイルスタンパク質の変異など:https://www.forbes.com/sites/williamhaseltine/2023/10/26/jn1-the-odd-man-out-among-omicron-sublineages/?sh=74aa039b3e47&s=03 )。これは、現在、このようなあまり一般的でない遺伝的変化によって拡大しつつある、新たな変異株の主要な特徴となっている(例えば、BA.2.86 [ピローラ] やEG.5 [エリス] と、それぞれ、その子孫である JN.1 や HV.1)。

多くの科学者は、ワクチン・ブレークスルー感染を経験した接種者や、更新型(mRNA)追加接種を受けた者は、血液中に、このような新しい変異株に対するウイルス中和抗体を増加させることができると今もなお信じている。彼らは、彼らがin vitro 中和試験で観察しているものは「偽」中和抗体であり、ウイルスの免疫逃避を加速させるだけであることに気づいていないようだ。「偽」中和は、かつて中和抗体であった抗体が、流行中の変異株(C-19ワクチンによって誘導された防御的中和抗体からほぼ逃避する)にワクチン・ブレークスルー感染し、ブーストされた時に生じる。ブーストによってこのような抗体の抗体価が著しく上昇し、そのため、ウイルス-抗体複合体が親水化することにより、ウイルス感染を阻害する能力が獲得される。しかし、これらの抗体の結合親和性は低いため、特に、成熟してIgG4にアイソタイプスイッチした後は、これらの抗体はその感染抑制能力(すなわち、「偽」中和能力)を急速に失う。そのため、C-19ワクチン接種率の高い集団では、ウイルス感染性に、不十分な(suboptimal)免疫圧力が大規模におよぼされるようになる。この集団的免疫圧力が新規免疫逃避変異株の同時発生と同時流行を促し、現在の、C-19ワクチン高接種率集団における大規模なワクチン・ブレークスルー感染の繰り返しの原因となっている。ワクチン・ブレークスルー感染は、現状では、ほぼ、(極めて)軽い、もしくは、中程度の症状を引き起こすだけである。しかし、ワクチン・ブレークスルー感染は免疫再集中(immune refocusing)を促進するため、新たな、より感染性の高い変異株の発生を強く促進する。そのため、現在では、大きな、親水性/可溶性に乏しいウイルス-抗体凝集体が形成されるようになり、抗原提示細胞への取込みが促進され、細胞傷害性T細胞が強く活性化されるというシナリオが始まっている。

細胞傷害性T細胞が強く活性化されたことにより、ウイルスの排出は減少するが、その一方で、ウイルスの固有感染性が増強されていることと、軽症/無症状感染(これも細胞傷害性T細胞の活性化によってもたらされている)の発生率が高まっていることにより、ウイルス伝播は維持されている。このような状況下では集団免疫の達成は不可能である。それどころか、以下に記すように、ウイルス学的、免疫学的、臨床的見地から、このパンデミックは制御不可能な形で進化を続けているという切迫した証拠があるのだ。

かなり前のことになるが、私はこのC-19集団ワクチン接種事業がもたらす悲惨な結果についての警告を繰り返すことをやめた。私にすれば、結果はあまりに明らかであり、これ以上、私の時間とエネルギーを不快なメッセージを伝えることに費やす必要はないと考えたからである。しかしケンブリッジ大学のウイルス学の臨床講師であるクリス・スミス医師のようなメッセージに直面すれば、沈黙を守ることは不可能だと悟った。

科学界が示すあからさまな無知は不可解極まりない。一般の人々でさえこのパンデミックの複雑さを理解し始めているというのに、多くの医療専門家や学術界の世界的権威はいまだにSC-2は自然消滅すると信じているようだ。

ウイルスはエンデミック化した、そして、季節性(!)インフルエンザ同様、私たちはウイルスと共生していかなければならない、という極めて安易で、信じられないほど単純なストーリーを、彼らは本当に信じているのだろうか。

毎年接種を繰り返せば現在の疫学的状況が安定化する、と、彼らは本気で考えているのだろうか。

パンデミック発生当初に比較して、ウイルスの拡大が抑えられ、Covid-19による死亡率や入院率が著しく減少したことは、ウイルスが不十分な免疫圧力に打ち勝てなかったためである、と、彼らは本当に信じているのだろうか。

中国、オランダ、イギリス、アメリカやデンマークのようなワクチン接種率の高い国における白肺肺炎(white lung pneumonia)と呼ばれる肺炎にまつわるあらゆる雑音を考慮すると、矛盾が浮かび上がってくる。

消滅するはずのウイルスと、特に子どもたちに発生している白肺病の流行をどのように整合させるのだろうか。
(https://open.substack.com/pub/gvdb/p/white-lung-pneumonia-in-children?r=twxoq&utm_campaign=post&utm_medium=web)[日本語

臨床的特徴の変化、潜伏期間の短縮、病気の持続期間の変化に加えて、複数の極めて感染性の高い変異株が持続的に発生し、感染伝播が継続する状況は、ウイルスがエンデミック化しつつあるというストーリーに矛盾するのではないか。

加えて、C-19ワクチン接種者の免疫反応は、なぜ、どのようにして、変異株のスパイクタンパク質に高度に特異的な抗スパイク抗体から、広範に交差反応性の抗スパイク抗体へ、そして、ついには、スパイクタンパク質に対する結合親和性が低い、機能的に単価であるIgG4抗体へと変化したのだろうか。

しかも、どのようにしてC-19ワクチン接種者の免疫系が、今もなお、極めて感染性の高い免疫逃避変異株によるCovid-19疾患の重症化を防ぐだけでなく、無症状やごく軽症にまで疾患を弱めているのか、という疑問には回答がないままである。

さらに、C-19ワクチン接種率の高い国でCovid-19に関連しない疾患の発生が増加していることについてはどのように考えるのだろうか。

ウイルス学的データ、免疫学的データ、臨床データの点と点を結び、これらのデータの進化的動態を科学的に理解できるように組み立てることができる公的機関や公的な保健医療専門家はいないようである。

真相は、ウイルス凝集体の抗原提示細胞への取込みが増加したことによる、細胞傷害性T細胞の活性化の増強である。これによって、無症状でのウイルス伝播が促進されただけでなく、ヘルパーT細胞による支援がなくなり、病原性抑制性の非中和抗体の抗体価が測定可能なレベルで維持されなくなる可能性が高い。(https://braintrain.mykajabi.com/the-inescapable-immune-escape-pandemic[邦訳「回避不能な免疫逃避パンデミック」]を参照)。

非中和抗体の抗体価が集団的に減少し、不十分になると、極めて感染性が高いだけでなく、病原性の(つまり、極めて病原性の高い)SC-2変異株の自然選択が促進されると考えるのは合理的である。

我らが保健当局が絶望し、完全に途を見失っていることは疑いようがない。コンパスを持たずに航海しているにも関わらず、彼らは有能な独立した科学者に助けを求めようとはしない。そのかわり、彼らは(更新型C-19ワクチンによる)追加接種を推奨し続けるのだ。WHOを含め、幼い子どもたちへのC-19ワクチン接種を支持する機関さえ存在する。しかし、急性自己限定性ウイルス感染に対する小児ワクチン接種プログラムには、保菌動物があるウイルスに対するものや、非複製型のワクチンを用いたものは1つもない。保菌動物がある急性自己限定性ウイルス感染に対して大規模なワクチン接種プログラムを実施すれば、ウイルス免疫逃避を促進するだけに終わることを彼らは理解していないのだろうか。

もちろん、例外はある。全ての科学者が安直なストーリーを支持しているわけではない。しかし、声を上げないのであれば、彼らは社会の役には立たず、自らが本当は信じてはいないシステムから利益を受け続けるだけである。そのような人々のことを何と言うのか、それをここで言うことは差し控えておこう。


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